ウルトラセブン 悪夢の7楽譜
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
付録:『超兵器の証明』を掘り下げる
本作をご愛読いただき、ありがとうございます。本作にR15指定をかける要因の九割を担っている『超兵器の証明』は、話の展開の都合で本編内で語りきれなかった内容、ギミックが幾つかあります。本項では、そんな作品内のギミックの掘り下げを行いたいと思います。
まずはじめに、バルクティアンの発言は事実であったのか、についてですが、これに関しては明確な答えを出す気はありません。というのも、バルクティアンの発言が事実である場合と、そうでない場合では話の意味ががらっと変わってしまいますが、この前提が変わるだけで別の話として捉えられるようにこの話は構成しています。例を挙げるなら、『バルクティアンは侵略されたゼクティアン星人の子供ではあるが、バルタン星人に育てられたエリート』に変えるだけで話が大分変わってくると思います。実際、劇中でもマユカがその可能性を示唆していますが、あのセリフはこういう可能性もある、というストーリー構成の名残みたいなものです。また、これに付随するのが本当に超兵器R1号は無いのか、というものですが、これに関しても、本当に存在しない、本当は所持しているがすっとぼてけいるだけ、実はそれ以上の兵器を所持している、などの条件に変えることによって白倉支部長側のセリフの意味が変わるようにギミックを練りました。したがって、バルクティアンと白倉支部長の条件を変えることで同じ話でも違う話に感じられるように作ったのが、超兵器の証明という話なのです。
続いて掘り下げたい内容はバルクティアンの鳴き声がなぜバルタン星人のものなのか、ですが、こちらに関しては少々生々しい話となりますのでご注意ください。さて、本題に入りますが、侵略者がその土地を植民地化した場合、まず行われることが『その土地固有の言語を奪い、自身の言語の強要』になります。これは、この地球でも度々行われてきた歴史を参考にしています。現に、35年ほど昔はイギリス領であった上海は今でも中国語より欧州英語のほうが使われていたり、中国による自治区化された少数民族の言語は現在は剥奪されていく、などのように侵略者によって侵略された場合は、独自の言語は失われる傾向にあります。この理由に関しては、やはり独自の言語は侵略者には理解できない暗号としか捉えられないので、暗号文を用いて反逆されることを防ぐといった意味合いが強いと思います。実際、日本では様々な方言がありますが、これは幕府等に反逆の意思を悟られないように暗号化して会話していたものが言語として定着した結果だとする言語学者がいるほどなので、そういった部分を参考に作りました。ただ、劇中に登場したバルクティアンは、既にゼクティアン語が失われたあとで生まれたため、完全にバルタン語しか話せないという設定にしていますが。
最後に、この話のモチーフ等についてですが、『悪魔の証明』、『核保有』、『民族弾圧』を話しのモチーフにして作りました。まず核保有と悪魔の証明についてですが、ウルトラセブン本編26話の“超兵器R1号”でアンヌ隊員の発した「1惑星を実験台にして、侵略してくるならR1号で攻撃する。(意訳)」という部分に関してですが、これってものの見事に現実世界の核保有の目的と合致します。なので、そこからヒントを得て、核武装によって平和を保つ、侵略行為を行う国家に戦略核の投下を行う、といった部分に結び付けて物語の骨組みが出来上がりました。悲しいかな、現在平和を築けているのは愛だとか法だとかより戦略核を撃たれないように自分達も使わないようにしよう、という言ってしまえば兵器によって守られているのが現実ですので。そこから派生して考えたのが、防衛や制裁のために戦略核を求めるように超兵器R1号の威力を知った宇宙人がそれを求めてやってくる可能性もあるのではないかという発想でした。その発想を更に広げ、半世紀以上も昔に一瞬だけ作られて、ごく数人しかその存在を知らない現代では超兵器R1号の話をしても誰も知らないし分からない。それでも求めてくる側は無いことを証明しろと言ってくるだろう、そこで構成部分に悪魔の証明が絡んでくる形になりました。そうなってくると、何故宇宙人はそこまでR1号を求めるのか、という部分になり考えた結果が、すでに侵略者に侵略され、前線基地にされてしまった故郷を破壊する、現実世界で言えば制裁のための核投下に近い構図を思い描き、その肉付けとして侵略された惑星の住民が侵略者によって民族としての数が維持できなくされてしまった、という構造になり、本作品が誕生しました。
ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。
ページ上へ戻る