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インフィニット・ストラトス~黒き守護者~

作者:eibro
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フルバースト!

 そして数日が経ち、俺たちは第三アリーナのAピットにいた。

「遅いな。一夏のIS」
「ああ。そうだな」

 このままだと、俺が最初に戦いそうだな。
 そう思っているところに、

「お、織斑くん織斑くん織斑くんっ!」

 山田先生が慌ててやって来た。そして何もないところで躓き、転びそうになったところで俺がキャッチした。

「山田先生。とりあえず深呼吸して落ち着いてください」
「は、はいっ。す~~~は~~~、す~~~は~~~……」

 そしてなんとか落ち着いたところにあることを口にした。

「そ、そ、それでですねっ! 来ました! 織斑くんの専用IS!」

 あ、やっとか。

「―――織斑、すぐに準備しろ。アリーナを使用できる時間は限られているからな」
「は、はい」

 ISが運ばれ次第、すぐに一夏は乗り込む。

「ISのハイパーセンサーは問題なく動いているな。一夏、気分は悪くないか?」
「大丈夫、千冬姉。いける」
「そうか」

 はいそこの姉弟、いちゃいちゃしない!
 そして一夏はピット・ゲートに向かい、カタパルトに脚を接続する。

「箒、祐人。行ってくる」
「ああ。勝ってこい!」
「まぁ、後はお前次第だ」

 一夏がフィールドに出ると同時に俺は試合を見ずに更衣室に向かう。

「おい風宮。お前はどこに行くんだ?」
「更衣室。俺は専用機を持っているし今回のは決闘。相手の武装を知っていたらフェアじゃないだろ?」
「じゃ、じゃあ何故お前が先に出なかった!? 一次移行を終えていない一夏の方が不利だろう!!」
「まぁ、不利かどうかなら不利だろう。……だけどな、オルコットの眼を見てみろ。あれはどう見ても手加減する気だ。そんな人間にボロ負けすると言うのなら―――これから先、あの男は死ぬ」

 それだけ言って、俺は更衣室に歩を進めた。

(少しばかり言いすぎたか?)

 更衣室に着き、ふとそんな不安が過ぎる。だが、これは事実でもあるのだ。
 そんなことを考えていると、誰かが接近するのを感じた。

『かざみん、いる~?』

 この声は、布仏本音か。

「ああ。ちょっと待ってろ」

 俺は更衣室のドアを開くと、そこにはいつもの面々ではなく、本音だけがいた。
 彼女は何かと俺に引っ付き、こうして会いに来る。

「どうしたんだ? 今は何をしているか言わなくてもわかるだろ?」
「ちょっとかざみんとお話したかったの~」
「OHANASHI?」
「ち、違うよ?! そっちじゃないよ!?」
「どうだか。最近の女は自分たちが強いと勘違いしているからな。どいつもこいつも取るに足らない雑魚だというのにな」

 俺の言葉にどう思ったのか、今すぐ泣きそうな顔をしていた。

「すぐ泣くなよ。うっとおしい」
「………グスンッ」

 ……ウゼェ。
 俺は一通り体操を終え、出番が来るまで待っていた。

「ねぇ、かざみん。かざみんはどこかに所属しているの?」
「……いや。どこにも所属してないな。むしろどこかに所属なんてしたことない」

 俺の言葉にどこか違和感を持ったのか、ほんの少しとはいえ顔を歪ませた。





 ■■■





 時間は少し進み、今は第三アリーナのフィールド。
 一夏が負けたと聞いたが、そんなことは別にどうでもよかった。

(最後に一撃入れようとして―――負けるってなんだよ………)

 どうやらそこでシールドエネルギーが切れたらしい。なんともまぁ馬鹿げた話だ。
 今は周りが俺が専用機を持っていることに驚いていることにもどうでもよかった。
 そしてオルコットは―――何か考え事をしていた。

「おいド三流」

 最大限の侮辱を込めて呼んでみた。

「なっ!? だ、代表候補生であるこのわたくしに―――」
「いやいや。戦闘中に呆然としているカスには十分だ」

 そう。既に戦闘は始まっている。だが、

「さっきから何を考えているの? ま、どうせくだらないことだろうけど」
「く、くだらないですってぇ!!?」

 激昂するオルコット。肌が白い故に顔が赤くなるのがわかりやすい。

「いいでしょう。そこまでの侮辱するというのなら、もう手か―――」

 ―――ドゴッ!!

 俺はディアンルグの右手でオルコットの顔面を殴り、そのままの衝撃でオルコットは吹き飛ばされた。

「お前さ、頭大丈夫? 雑魚風情が何俺に手加減しようなんて考えているんだ?」
「ざ、雑魚って―――」
「雑魚だよ。ISが出てから調子に乗っている女ってさ、ろくな奴がいないんだよね」

 ―――各部射撃武器、エネルギー装填

「そしてそのろくな奴の中に、当然お前も含まれてる」

 ―――ビームライフル《迅光》二丁 エネルギービット《キロプテル》8基 荷電粒子砲《迅雷》 エネルギー装填完了

「だから―――絶望の淵へと落ちな」

 ディアンルグの菱形のアンロック・ユニットからビットが射出され、瞬時にオルコットに狙いを取る。
 同時に両手にビームライフル(一丁ずつ)が現れ、腰部から2基の荷電粒子砲が展開された。

 ―――ターゲット、脚部、アンロック・ユニット、ミサイル発射口、マルチロック完了

「フルバースト!!」

 合計16基から発射される光をオルコットはまともに食らい、辺り一面から煙が吹き荒れた。

「………3割で、これか」

 俺は思わず、そんな感想を漏らす。
 晴れた煙の中には、倒れているオルコットがそこにいた。生体反応は、ありか。

『ブルー・ティアーズ、シールドempty 勝者―――風宮祐人』

 競技用してはかなりの威力だったなと思いながらため息を吐く。

「……ムカつくのはわかるが、やりすぎだ」

 オルコットを一夏に任せ、俺は織斑先生から説教を食らっていた。

「……あれでも、かなり手加減したんですけどね」
「ほう。まともに当てているようだったが?」
「敢えて言いましょう。己の傲慢さが招いた自業自得だと思います」
「それは否定せんが、やっぱりやりすぎだ」
「仕方ないでしょう。たかが軍事施設で訓練しかしていないヒヨッコごときに遅れを取る気はないので」

 俺の発言に織斑先生は頭を抱えた。

「代表候補生をヒヨッコとはな。だが山田先生は元代表候補生だぞ。それはどう評価する?」
「かなり高レベルの位ですね。オルコットとは比べ物になりません。山田先生に失礼です」

 そこまで言うかと言いたげだった。
 現にそうだ。今の俺のISレベルだと機体性能に助けられているという言葉が正しいだろうが、それでも相手の強さぐらいはわかる。格ぐらいはすぐに見抜ける。

(明日からは、ISでの特訓だな……)

 勉強は篠ノ之に任せよう。同室だし、なんとかしてくれるだろう。
 織斑先生との話を終え、俺は篠ノ之に自分が作成した参考書を渡した。 
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