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嫌いな相手でもそうなると

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第一章

                嫌いな相手でもそうなると
 その話を聞いてだ、斎藤満色白で面長で小さく細い目と黒く短い髪の毛を持つ中肉中背の三十代のサラリーマンの彼はこう言った。
「あいつ死んだんだ」
「はい、酒に煙草で」
 学生時代斎藤の一年下の後輩でよくしてもらっていた甲斐浩二が応えた、長身で太っていて目はあどけなく面長で黒髪はそろそろ薄くなりだしている。
「他にも色々と」
「不摂生で」
「三十になって身体のあちこち壊して」
 そうしてとだ、甲斐は斎藤に電話で話した。
「今日お通夜で明日お葬式です」
「じゃあ行くか」
 斎藤はお通夜と聞いて甲斐に言った。
「そうするか」
「行きます?斎藤さん」
 甲斐は斎藤の今の言葉を問い返した。
「あいつのお通夜とか」
「嫌いだからだよな」
「先輩もあいつ嫌いですよね」」
 電話の向こうの彼に尋ねた。
「やっぱり」
「あいつ中学から急にグレたな」
「それから碌なことしませんでしたね」
「ああ」
 斎藤も否定しなかった。
「俺は学年違うけれどな」
「俺同級生だったんで」
「見たんだな」
「イキリで威張ってて図々しくて底意地悪くて自己中で」
 そうした輩でというのだ。
「無責任で態度も悪くて」
「いいところなかったですか」
「なかったですね」
 甲斐はきっぱりと答えた。
「同級生は皆実は嫌ってました」
「表向きはどうでもか」
「威勢のいいこと言っても中身なかったですし」
「それで県内でも有名な底辺高校行ったな」
「それからも毎日真夜中まで家の中で馬鹿騒ぎして」
 そうした行いでというのだ。
「空き缶他の人の家のところに捨てたり」
「本当に碌なことしなかったな」
「それで後輩の一人は」
 甲斐から見てというのだ。
「死ねばいいとかです」
「言ってたんだな」
「それで今回不摂生が祟って」
 その結果というのだ。
「そうなりました」
「そうか」
「ええ、けれどお通夜かお葬式はですか」
「出ないか?俺もあいつ嫌いだけどな」
 斎藤は甲斐に話した。
「俺も色々聞いてたしな」
「本当にあいつ嫌われてましたね」
「幾ら嫌われていてもな」
 そうであってもというのだ。
「やっぱりな」
「お通夜かお葬式に行くことは」
「顔見知りで行けるならな」
 それならというのだ。
「行くのがな」
「礼儀ですか」
「礼儀も何もない奴でもな」
 お通夜や葬式に行く相手がというのだ。
「あいつにレベル合わせていいか?」
「あんな奴にですか」
「そう考えたらわかるだろ」
「はい」
 甲斐もそれはと答えた。
「俺も」
「だったらな」
「それならですか」
「ああ、ここはな」
 是非にというのだった。
「最後でもあるしな」
「死んだからには」
「行こうな」
「先輩がそう言うなら、俺も働いていて」
「サラリーマンだったな、今」
「地元の企業で働いてます」
「俺も同じだよ、地元だったら余計にな」
 それこそというのだ。 
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