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立派な父と最高の母

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第一章

                立派な父と最高の母
 小学五年生の猿渡志郎の両親についてだ、彼のクラスメイト達が他ならぬ彼自身に対して言ってきた。
「お前のお父さんとお母さん元ヤンだって?」
「何か聞いたけれどな」
「昔すげえワルだったっていうけれどな」
「本当か?」
「えっ、そうなんだ」
 志郎は友人達の言葉にあどけいない大きな目の顔を驚かせて応えた。背はクラスでは真ん中位で少し瘦せている。黒髪はショートである。
「お父さんとお母さん」
「うちの母ちゃん言ってたんだよ」
 クラスメイトの一人が言ってきた。
「中学高校の時はな」
「ヤンキーだったんだ」
「近所でも有名なワルでな」
 それでというのだ。
「滅茶苦茶怖かったってな」
「別に怖くないよ」
 志郎は家での両親を思い出して答えた。
「お父さんもお母さんもモールで喫茶店やってて」
「普通の人か?」
「僕にいつもね」 
 それこそというのだ。
「優しいしね」
「ヤンキーじゃないか」
「入れ墨とかもないし」 
 二人の身体にはというのだ。
「本当にね」
「元ヤンじゃねえんだな」
「そうだよ」
 こう言うのだった、だが。
 言われて気になったのでだった。
 学校が終わって家に帰った両親にこのことを尋ねると。
 薄子そっくりの穏やかな顔で黒髪をショートにしている一七五位の背の痩せた顔の父の洋介も茶色の髪をロングにしていて切れ長の二重の奇麗な目と赤い大きな唇と形のいい眉に整った長身のスタイルの母の晴香もだった。
 それはという顔でだ、こう答えた。
「実はそうなんだよ」
「お父さんとお母さん昔はそうだったのよ」
 こう言うのだった。
「中学と高校の頃はね」
「ヤンキーだったんだよ」
「その頃の写真よ」
 母から言ってだった。
 息子にその頃のアルバムを見せた、すると息子はこう言った。
「全然違うよ」
「そうだよな」
「今のお父さんとお母さんとはね」
「髪の毛金髪でセットして」
 二人共そうしていた。
「濃いお化粧してそうした服を着て」
「そうだったんだよ」
「この頃のお父さんとお母さんはね」
「今じゃ信じられないよな」
「そうでしょ」
「うん」
 息子もそれはと答えた。
「学校で言われて」
「嘘だと思ったな」
「そうだったわね」
「とても」
 それこそというのだ。 
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