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X ーthe another storyー

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第三十四話 外宴その十六

「星史郎さんは」
「善人、いい人になるな」
「そうね」
 封真のその言葉に頷いた。
「紛れもなく」
「そうだな」
「またそう言われますが僕は悪人ですよ」
 薄い微笑みを浮かべてだ、星史郎は颯姫に言葉を返した。
「自分で思うには」
「貴方がそう思っていても」
「実際にはですか」
「違うんじゃないですか」
「そうですか」
「主観と客観は違う場合があって」
 そうしてというのだ。
「そしてそのことは」
「僕についてもですか」
「そうじゃないかしら」
 こう言うのだった。
「そう思えてきたわ」
「そうですか」
「私はそう思えてきているから」
 星史郎が善人とだ。
「地の龍は皆ね」
「いい人ですか」
「そうよ」
「果たしてどうか」
「俺は感じません」
 封真が星史郎にここでこう言った。
「星史郎さんから禍々しいものは」
「そうですか」
「むしろすっきりとした」
 そうしたというのだ。
「清らかなものを感じます」
「私もよ」
 庚もだった、ワインを手に星史郎に顔を向けて話した。
「貴方にはドス黒い淀んだ様な」
「悪いものはですか」
「俗に悪と言われる様なね」 
 そうしたというのだ。
「嫌な悪は感じないわ、悪いもの自体もね」 
「感じないのですね」
「そうよ」
 全くという言葉だった。
「封真と同じよ」
「だから何かあれば」
 封真は一歩彼の方に踏み出して言った。
「駆け付けます」
「そうして助けてくれますか」
「仲間であって」
「僕がいい人なので」
「そうさせてもらいます」
「・・・・・・似ていますね」
 封真の今の言葉を聞いてだ、星史郎は優しいが寂し気な笑顔になって言った。
「封真君も他の皆さんも」
「似ている?」
「そう思いました」
 こう言うのだった。
「お二人に」
「お二人、まさか」
「おっと、口が滑りました」
 今度は僅かだが苦笑いになって述べた。
「気にしないで下さい」
「ではこれ以上は」
「発言を控えます」 
 そうするというのだった。
「この場では」
「そうですか」
「食事とお酒に専念します」
 こう言うのだった。
「この場では」
「わかりました」
「では次はアイスクリームを食べますか」
「クーラーボックスの中にあるわ」 
 庚が笑って言ってきた。
「だからね」
「そちらを開けて」
「そしてね」
「いただきます」
「そうしてね」
「アイスクリームも好きでして」
 星史郎は笑って話した。
「いただきたくなりました」
「私もよ。では皆食べたい人はね」
 庚は仲間達に話した。
「それぞれね」
「ああ、俺もいただくな」
 草薙も言ってきた。
「アイスも貰うな」
「俺もです」
 封真もだった。
「いただきます」
「僕もです」
「私もよ」
「僕もよかったら」
 遊人に颯姫、哪吒も続いた。
「いただきます」
「そうさせてもらうわ」
「アイス美味しいですよね」
「皆でいただきましょう。お肉もお酒もで」
 そしてというのだ。
「甘いものもそうしているから」
「アイスもいただきましょう」
「そうしましょう」
 封真に応えた、そうしてだった。
 七人で実際に食べた、それが実に美味かった。


第三十四話   完


                   2023・7・1 
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