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仮面ライダー電王 約束の場所

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第六章

「ほら、前から来る人」
「前から?」
「あのバイオリンケース持った人よ」
「あの人って」
「風間大介じゃない。あのメイクアップアーチストの」
「ああ、あの」
 実は知らない。しかしそこは得意の口上で誤魔化す。
「何か天才なんだって?」
「そうよ、凄いんだから」
「まさかここで見るなんて」
「ふうん。僕の見たところあの人はそれだけじゃないね」
「それだけじゃないって?」
「そうだよ。どうやら」
 ここで二人は対峙した。風間が良太郎の前に出て来たのだ。風間の方が良太郎を見ていた。
「さて、勝負といくか」
「あれ、勝負って?」
「メイクアップだ。いいか」
 言いながらバイオリンケースを置きながら蹴る。そしてそれを開けるとすぐにゴンに告げる。
「ゴン」
「うん」
 早速道具のうちの幾つかが彼の手に渡る。そして。
「風間流メイクアップ・・・・・・見せてやる」
「おやおや、じゃあ僕も」
 良太郎も何処からかメイクアップの道具を出してきていた。一体何処から出してきたかわからないがそれでも出してきたのだった。
「野上流メイクアップを」
「野上?」
「そう、野上良太郎」
 無責任に良太郎の名前を出す。いつものように。
「それが僕の名前なんだよ」
「わかった、憶えておこう」
 両手をクロスさせそれぞれの指の間に道具を入れた構えで良太郎の言葉に応える。
「では。どちらの技術が優れているか」
「勝負だね」
 その言葉と共に二つの影が動いた。影の動きが止まった直後に良太郎が連れていた女の子達の顔は。それぞれ見事にメイクアップされ別人の様になっていた。
「互角か」
「そうみたいだね」
 二人は背中合わせになっていた。その姿勢で背中越しに言葉を交あわさせる。メイクアップした女の子の数もその技術もまた互角だった。完全に。
「まさか俺と互角とはな」
「いやいや、僕も驚いたよ」
 真剣な面持ちの風間に対して良太郎は余裕綽々の態度だった。
「女の子の扱いには自信があったんだけれどね」
「それにどうやら」
「どうやら?」
「タイプは違うが御前もそうみたいだな」
「さて、何のことやら」
 その問いには惚けてみせる。あえて。
「まあ僕はこれで。勝負は終わったし」
「何処に行く?」
「これで色々と忙しいもので」
 眼鏡に右手の人差し指を当てて言う。
「それじゃあまた」
「あっ待ってよ良ちゃん」
「まだ聞きたいことあるんでしょ」
 彼を女の子達が追う。風間とゴンはそんな彼を見ていた。ここでゴンが風間に声をかけてきた。
「ねえ大介」
「何だゴン」
「あれって何なのかな」
 それを風間に問うのだった。
「大介は何だと思ってるの?」
「只者じゃないな」
 それははっきりと感じていた。
「多分。あいつも」
「あいつも?」
「いや、何でもない」
 そこから先はあえて言わなかった。
「ただな。また見ることになるかもな」
「目立つ人だしね。じゃあ大介」
「ああ」
 次にゴンが何を言うのか風間はもうわかっていた。そのうえで彼女に応える。
「遅れたし皆待ってるから」
「わかってる。行くか」
「うん、急いでね」
 こうして彼は次の仕事先へ向かった。これが風間と良太郎、そしてウラタロスの出会いだった。
 矢車と影山は探偵になっていた。かつての頃の様なやさぐれた格好ではなくネクタイとまではいかないまでも有り触れた上着とズボンで街を歩いている。歩きながら影山が矢車に声をかけた。
 
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