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夢幻水滸伝

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第三百十二話 全軍を用いての決戦その九

「わしとしてはな」
「そうですか」
「戦は政治的な目的を達成するもんでな」 
 メルヴィルは戦についても話した。
「別に殲滅せんでもええ場合もある」
「今回の様に」
「敵軍に一撃を与えることが目的なら別やが」
 それでもというのだ。
「そやけどな」
「それでもですね」
「それが目的やないなら」
 その場合はというのだ。
「まして敵軍が戦の後で自分達の軍に入るなら」
「殲滅しない方がいいですね」
「そや」
 まさにというのだ。
「そやからな」
「ここはですね」
「そうしよな」
「それでは」
 グリフォンも頷いた、そしてだった。
 メルヴィルはボームが二万の軍と共にゲーリに向かった話を流した、その際既に街が陥落したとの噂を流すことも忘れなかった。
 これでだ、五大湖側の軍勢はメルヴィルの読み通り動揺した。
「敵軍の一部がゲーリに向かった?」
「しかもボーム様が率いられているのか」
「星の方まで一緒か」
「そうなるとまずいぞ」
「街にこれといった守りはないんだぞ」
「航空戦力もないんだ」
 将兵達は包囲された中で話した。
「もう陥落したっていうぞ」
「それは本当か?」
「それはまずいぞ」
「どうすればいいんだ」
「この包囲を破ってシカゴまで撤退するのか」
「術や道具を使っても難しいぞ」
「そうするのは」
「どうすればいいんだ」 
 将兵達に動揺が走った、それがブレーキにもなり。
 攻勢が止まり五大湖側の軍は完全に袋の鼠になった、そこでメルヴィルは彼等に対して告げたのだった。
「降伏勧告ですか」
「完全に包囲してゲーリも攻めるとなると」
 ルイスにギンズバーグが話した。
「もうです」
「私達にはですね」
「打つ手がありません」
「そうですね」
「このまま戦っても」
 ギンズバーグはさらに話した。
「完全に包囲されましたし」
「制空権も制湖権もないのでは」
「どうにもならないかと」
 こう言うのだった。
「最早」
「それがギンズバーグ君の考えですね」
「そうです」
 その通りという返事だった。
「無念ですが」
「もう勝敗は決した」
「そうかと」
「あたしもそう思います」
 ルイーザは自分から言った。
「幾らアンデットを出しても」
「この劣勢は覆せへんと」
「そう思います、ゲーリはまだ落ちてへんですが」 
 先程自ら移動の術でゲーリに赴いて確認したことだ。
「攻められますと」
「陥落は間違いないですか」
「ボームさんが二万の軍を率いて向かっています」
 そうしているというのだ。
「星の人に二万の軍勢で攻められますと」
「しかもボームさんは天の星であられ」
「戦向きの人やないですが」
 性格的にも職業的にもだ、戦を好まず科学者である彼はやはり戦に向いている者ではないのだ。このことはルイーザ達もわかっている。 
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