X ーthe another storyー
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第三十二話 死神その七
「確かにです」
「希望を見ておるか」
「そうなってきています、ですからわらわは」
「わらわを止めるか」
「わらわの全力で以て」
「そうしてみよ、しかしな」
それでもとだ、その者は丁に怒りの声を込めて述べた。
「わらわも望みがある」
「だからですか」
「何としても人を滅ぼす」
「ではこれからも」
「動く、諦めてなるものか」
絶対に、そこには鬼気迫るとまで言っていい執念があった。その執念のまま丁に対して言っていくのだった。
「あの者は死なせられなかったが」
「またですか」
「仕掛ける、よいな」
「・・・・・・諦められませんか」
「決してな、だがわらわはそなただけは滅ぼさぬ」
丁自身にはこう言うのだった。
「何故ならな」
「同じだからですね」
「する筈がない、そなたが滅べばわらわも滅びる」
そうなるからだというのだ。
「決してな」
「わらわだけはですか」
「滅ぼさぬ、共にこれからもいようぞ」
「他に誰もいなくなってどうするのでしょうか」
丁は笑って言うその者に問うた。
「一体」
「そなたの力があればどの様なことも出来るではないか」
「わらわだけでも生きることが」
「身体は使えずとも力があるな」
「夢見の。そして動かずとも操り動かせる」
「ならばじゃ」
「わらわだけでもですか」
「問題ない、わらわはわらわ達以外の全てを憎んでおるからな」
だからだというのだ。
「必ずじゃ」
「この世界を。人の世を」
「そうしようぞ。ではまたじゃ」
「動かれますか」
「そうする。しかし少し疲れた」
また忌々し気に言った。
「だからな」
「今はですか」
「休む、また会おうぞ」
こう言ってだった。
その者は深き眠りに入った、その眠りは何よりも黒く深く丁も見ることが出来なかった。そうしてだった。
丁もまた眠った、深い憂いの中でそうしたがそれを見せることはなかった。その夜庚は夢の中で牙暁と話していた。
「戦いにならずにね」
「済んだね」
「ええ、今回はね」
「それは何よりだね」
「貴女の夢見だと」
「あの人の傍にいる少年がだよ」
「死ぬ筈だったわね」
「あそこで心を失くした彼に殺されるか」
「そうでなくてもね」
「彼が下がる二人の援護をして」
そうしてというのだ。
「その中で流れ矢の様な攻撃に当たってね」
「命を落としていたわね」
「そうなっていた筈だよ」
「そうだったわね」
「けれど」
それがというのだ。
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