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インフィニット・ストラトス~黒き守護者~

作者:eibro
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意味がわからない。

 ISの調整や整備の仕方を学びながらいざ実践してみると、どうやら俺は以前にISの整備をしていたらしいことに気付かされる。というか、体が覚えていた。

(今まで潰すことしか考えていなかったから、懐かしいと同時に新鮮に感じる………)

 整備室に居ながら作業をこなしていく。
 ちなみにだが、千冬さんと真耶さんに頼んで特別に整備室を使わせてもらっている。もちろん、

(……女装か。案外、諜報任務に使えるかもな)

 最近、女装でランニングや運動を行っているので徐々に女装に抵抗がなくなってきたのが悩みだ。ただ、水着とISスーツは着ない。
 さらにだが、試合が終わってから自分が持っている荷物の中に小さめの鞄にISスーツが入っていたのを思い出して中を探ると、案の定出てきた。
 それを二人に報告と同時に今まで使っていたISスーツを予備としてもらい、持っていたISスーツと同じのに変えた。素材が一緒だったのが助かった。

(そういえば、二人を「先生」と呼ばないといけないんだっけ?)

 そんなことを思いながら整備し終わったディアンルグ待機状態に戻して再び女装し、今日から入寮することになった自室へと移動した。





 ■■■





 そして翌日。IS学園の入学式を終え、俺は割り振られた自分の席に座る。

(郷に入りては郷に従えという方針で、フレンドリーに対応しよう)

 殺気はできるだけ出さず、そしていつでも戦闘状態に移行できるように特訓しないとな。
 そんなことを考えながら目を閉じていると、

「―――全員揃ってますねー。それじゃあSHR(ショートホームルーム)はじめますよー」

 真耶さん―――もとい山田先生が現れた。

「みなさん初めまして。1年1組の副担任の山田真耶と言います。一年間よろしくお願いしますね」

 そして簡単に設備の説明が行われるが、残念ながら俺にはそんな余裕はない。俺は今、別のことに意識を割いているからだ。
 ちなみにだが、山田先生の服装は『子供が無理して大人の服を着ました』という印象を持ってしまうが、俺が逆に彼女が本気を出せばどれくらい強いかを知っている。だからそれ故に警戒してしまう。

「じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。えっと、出席番号順で」

 だが、今の状態はあまり警戒しないでいいだろう。彼女は天然ドジというもので、今のは素だ。だが、

(生徒にパスというのはどうだろうか……?)

 まぁ、それが彼女の特性でもあるのだろう。
 俺も含め段々と自己紹介が進んで行き、俺ともう一人は飛ばされ、先にもう一人が自己紹介をすることになった―――のだが、

「織斑くん。織斑一夏くんっ」
「は、はいっ!?」

 どうやら緊張しすぎて呼ばれていることに気付いていなかったみたいだ。

「あっ、あの、お、大声出しちゃってごめんなさい。お、怒ってる? 怒ってるかな? ゴメンね、ゴメンね! でもね、あのね、自己紹介、今は織斑くんの番なんだよね。だかね、ご、ゴメンね? 自己紹介してくれるかな? だ、ダメかな?」

 ダメだ。早くこの人ISに乗せないと……。

「いや、あの、そんなに謝らなくても……っていうか自己紹介しますから、先生落ち着いてください」
「ほ、本当? 本当ですか? 本当ですね? や、約束ですよ。絶対ですよ!」

 段々と教師としての威厳を失いつつある山田先生を最後まで教師として見ようと心に決めた。これは別に告白ではない。
 そして織斑一夏はこちらを向き、いざ挨拶しようと意気込んだのはいいが怯んでいたが、

「えー……えっと、織斑一夏です。よろしくお願いします」

 頭を下げてから上げるとまた顔を歪ませた。
 それもそのはず、周りの女生徒から『もっと色々喋ってよ』とか『これで終わりじゃないよね?』とかの視線や空気が流れているからだ。さらに『もっと聞きたいなあ!』という視線も送っているのは彼がイケメンの部類に入るからだろう。……その視線は全員ではないが。
 そう。中には侮蔑の視線も送っている。それはあくまでも極数人で、その代表格と言える人間は金髪碧眼だった。

(………あれ? どこかで見たことがあるような……?)

 結局のところ、情報収集したのは最初だけであとはISについて知識を蓄え、整備を習い実践すると同時に日頃の鍛練を行っていたのでそっちに関しての情報収集は疎かにしていた。

(………ヤバいな)

 周りがコケているのもお構いなしに俺は考えようとしたが、

(まぁいいか……)

 俺が覚えていないということは、そんなに気にならない相手だったんだろう。
 そう結論づけると同時に俺は咄嗟に耳を塞いだ。その理由は、

「キャ――――! 千冬様、本物の千冬様よ!」
「ずっとファンでした!」
「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです! 北九州から!」
「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」
「私、お姉様のためなら死ねます!」

 何だこいつら。新手の刺客か? どうしてこんなにやかましくできるんだ?

「……毎年、よくもこれだけの馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か? 私のクラスにだけ馬鹿者を集中させてるのか?」

 その言葉に同意したい。

「きゃああああっ! お姉様! もっと叱って! 罵って!」
「でも時には優しくして!」
「そしてつけあがらないように躾して~!」

 一瞬、全員奈落の底に落としてやりたいと思ったがすぐに心を落ち着かせる。
 
「で? 挨拶も満足にできんのか、お前は」

 そりゃ、この環境の中で満足な挨拶ができれば苦労はしないと思う。

「いや、千冬姉、俺は―――」

 千冬さん―――織斑先生は出席簿で彼の頭を叩く。

「織斑先生と呼べ」
「……はい、織斑先生」

 そのやり取りに反応したのか、周りの女生徒が反応する。

「え……? 織斑くんって、あの千冬様の弟……?」
「それじゃあ、世界で“唯一”男でISを使えるっていうのも、それが関係して……」
「ああっ、いいなぁっ。代わってほしいなぁっ」

 名前からして予想が付くだろうに。
 だがここで思い出してもらいたい。今どの女か知らないが、織斑一夏を『世界で唯一ISを使える男』認識している。そしてそれには訳がある。

「さあ、SHRは終わりだ―――と言いたいところだが、実は諸君らに伝えるべきことがある。以前の男性だけのIS適性試験で新たに別の男性操縦者が発見された」

 途端に周りが驚愕するので俺も乗る。

「静かにしろ。ちなみにだが、その男は今もなお、この教室で席に着いている」

 まるであらかじめ確認していたかのように辺りを見回すが、なぜか誰も俺を見つけなかった。

「……もういいだろ。風宮、自己紹介しろ」
「もういいだろって、これはあなたと山田先生が指示したんでしょうが」

 言いながら俺は立ち上がり、服を脱いで男モノに変える。

「改めまして、風宮祐人です。趣味などは特にありませんが、特技は逃げ足です。ただ事故でISを動かし、ここに入学することになりました。よろしくお願いします。そして付け足しますが、女装は趣味ではありませんので、あしからず」

 すると、前にいる男が同情の視線を向けてきた。

「ではSHRを終わる。諸君らにはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。その後実習だが、基本動作は半月で体に染み込ませろ。いいか、いいなら返事しろ。よくなくても返事をしろ、私の言葉には返事をしろ」

 鬼教官ぶりを発揮させられるが、俺は、

(……整備室を使用するのに女装って、どうなの?)

 なぜかそのところが疑問になっていた。 
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