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死んだと聞いても何も

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第二章

「あんな連中だからな」
「ああなったら終わりだな」
「人間としてな」
 親子でそんな話をした、それから暫く経ってだった。
 文太は洋介そして妻の百合子に話した。
「あの二人死んだぞ」
「ああ、そうか」
「遂にそうなったのね」
「死後半年位経ってな」
 そうしてというのだ。
「見付かった、家の中でそれぞれ骨になっていたらしい」
「腐ってそしてなのね」
 妻は夫の話を聞いて言った。
「やっと見付かったのね」
「本家さんが一年に一度の状況確認に行ったらな」
「その時になのね」
「わかったんだ、それでな」
「もう全部処理されるのね」
「色々な、あの家は取り壊されてな」 
 そうなってというのだ。
「一旦空き地になるそうだ」
「そうなるのね」
「ああ、それで二人とも無縁仏で葬られるそうだ」
 文太はこのことも話した。
「だからもうな」
「終わりね」
「これでな」
「そうなのね」
「兎に角あの二人はもう死んだ」
 家族に素っ気なく言った。
「そういうことでな」
「わかったわ」
「俺もだよ、一応ふわりにも言っておくか」 
 洋介は父に素っ気なく応えてからだった。
 そのうえでふわりのところに行ってケージの外でボールを転がして遊んでいる彼女に対して話した。
「お前の前のママとパパ死んだよ」
「ワン?」
「そういうことだからな」
「ワンワン」
 ふわりも何とも思わない様だった、そしてだった。
 後始末が全て済んでだった、ふわりの前の飼い主達の家は取り壊され空き地になった。二人は無縁仏として葬られ葬式も何も行われなかった。
 誰も何も思わず顧みられることもなかった、後で二人の娘達に死んだことが言われたが無反応だった。誰も二人の死に何も思わなかった。


死んだと聞いても何も   完


                 2023・6・24 
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