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スケ番はまだいるのか

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第二章

「スケ番っていうんだよな、そうした人達」
「そうだよ」
 母の喜美子麻里子そっくりの顔でやや皺があり黒髪を伸ばしている彼女が応えた。夕食はコロッケにほうれん草のおひたしにモヤシのスープである。
「昔はね」
「今はいないよな」
「引退したけれどいるよ」
 これが母の返事だった。
「それもあんたの目の前にね」
「えっ、マジかよ」
 麻里子は母の今野言葉に驚いて言葉を返した。
「母ちゃんスケ番かよ」
「そうだよ、高校の時だけれどね」
「あの学校の出身ってのは知ってたけどな」
「何言ってるんだ、母ちゃんあの学校の女子の副番だったんだ」
 父の卓也も言ってきた、今は髪の毛は前からなくなっている、面長で小さな目を持つ中背の痩せているが腹が出た男だ。
「父ちゃんも三年の時は外番だったんだ」
「外番?」
「よその学校の奴との喧嘩仕切る仕事だよ」
 こう娘に話した。
「あの頃は超長ランにボンタンだったんだ」
「髪の毛は金髪にしてパーマでね」
「そうだったよな」
 妻にも笑って応えた。
「あの時は」
「あたしは長いセーラー服のスカートで上は短くて」
「アフロにしてたよな」
「そうだったな」
「何だよ、二人共そうだったのかよ」
 麻里子は父もと聞いて驚いて言った。
「あたしが見たアルバムには載ってなかったけどな」
「それでもそうだったんだよ、あの頃は」
「そうなんだな」
「そうさ、だからスケ番はね」
「うちにいるんだな」
「そうだよ、いるっていったらね」
 娘に笑って話した。
「そうだよ」
「成程な、じゃああたしがこんなのもわかったよ」
「父ちゃんと母ちゃんの子供だからね」
「そうだよな」 
 母の言葉に笑って応えた、そうしてコロッケにソースをかけて食べた、それで食べるご飯は実に美味かった。
 それで後日また学校の仕事をしている時にその頃のアルバムを調べると両親が同じ学年にいた、外見は違うものがあったが名前と面影でわかった。 
 それでだ、麻里子は今回も一緒にいるクラスメイトに笑って話した。
「アルバムに父ちゃんと母ちゃんいたよ」
「へえ、そうかよ」
「ああ、凄い恰好だったよ」
「昭和のかよ」
「そうだよ、それで今はあたしがいるんだな」
「親御さんの頃からの不良でか」
「そうだな、そんなこともあるんだな」 
 クラスメイトに笑ったまま言った、そして高校生活を過ごした。スケ番ではないしもうその時代ではないが両親のことを感じながらそうしていったのだった。


スケ番はまだいるのか   完


                   2023・6・21 
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