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仮面ライダーBLACK RX〜ネオゴルゴムの陰謀〜

作者:紡ぐ風
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第二十二話『平和を賭けた激戦』

 光太郎は悩んだ。ダロムを始め、海の怪人達は傷ついている。そんな中でも打倒ネオゴルゴムに助力するというのは、今までのゴルゴムの手口を考えれば罠の可能性は十分にありえる。しかし、ゴルゴムのプライドの高さもまた事実。そんなゴルゴムの怪人達が頭を下げるほど、ネオゴルゴムのゴルゴムと似て非なる行動に憤りを感じていることも理解できた。結局、光太郎が答えを出せたのは翌日になってからのことだった。
 「方針は決まったよ、みんな。どんな形であれ、協力者は多いほうがいい。一時的に、ダロム達と手を組むことにする。」
 「本気か、兄貴!」
 光太郎の結論に霞のジョーは不満を述べる。
 「勿論、全面的に信じて共闘するわけではない。いくつかの条件を守ってもらう。それができないなら人々に危害を与える怪人として倒すことも約束させる。」
 「奴らがそれで約束を守るのか?」
 「彼らが満足に戦えない体になっているのは、同じゴルゴムの改造人間である俺には解る。それでも約束を守らないようなら、どの道放置するわけにはいかない。倒すタイミングが早くなったと思って諦めるしかない。」
 「兄貴、気をつけてくれよ。」
 光太郎の覚悟の決まった言葉に、霞のジョーは頷くことしかできなかった。
 「ありがとう。ダロム達の処に行ってくる。」
 光太郎はダロム達のいる海底洞窟へ向かった。

 「来てくれたか、仮面ライダー!」
 光太郎はバイオライダーへ変身し洞窟へ入ると、怪人達が迎えてくる。
 「待っていたぞ、南光太郎。」
 バイオライダーの来訪を聞き、ダロムもバイオライダーの前に現れる。
 「ダロム、それからみんな、協力の話は受け入れる。ただ、その代わりに俺からの条件も聞いてくれ。」
 「我らにできることなら、受け容れよう。」
 「先ずは、何があっても人命を優先するんだ。議事堂内には多くの人が人質となって囚われてる。議員達の安全な避難を保証してくれ。」
 「戦闘となる以上、確約は出来ぬが、最善は尽くそう。」
 「それから、命が惜しくなってネオゴルゴムに味方するようなことは絶対にするな。この2つを守れないなら、俺はお前達をネオゴルゴムの1員と判断して倒すことになる。」
 「無論、そのようなことをする者はここにはいない。これだけは断言できる。」
 バイオライダーとダロムは協力の条件に互いに納得する。
 「よし、今回の件が終わるまで、共に頑張ろう!」
 バイオライダーの言葉で怪人達は歓声をあげる。
 「お前達、そう喜んではいられない。ソフィルの事だ、小癪な策を講じてくるに違いない。南光太郎、外はどのようになっている?」
 ダロムは冷静に状況の把握に勤しむ。
 「ソフィルは議員達の解放の条件に俺の命を要求している。」
 「奴にしては珍しい。奴はもっと裏でコソコソと動くような男だ。良からぬことを企んでいるのだろう。」
 光太郎の話を聞き、ダロムはソフィルの裏を探ろうとする。
 「ダロム様、帰ってきたウニ怪人から話があるそうです。」
 その時、怪人の一体がウニ怪人を連れてくる。
 「ダロム様、コウモリ怪人達の話を盗み聞きすることができました。どうやら奴ら、俺達海の怪人の動向を探っているみたいです。」
 ウニ怪人は貴重な情報をダロムに話す。
 「我らの動向?南光太郎、この情報は使えるぞ。」
 ダロムは何か閃く。
 「どういうことだ?」
 「奴らは我らを探している。それなら我らが南光太郎を捕らえたと言いながら現れればどうだ?奴らは我らを仲間と誤認するだろう。ソフィルはそういう点では単純だ。」
 「なるほど。あえて捕まったふりをして内部に潜入するのか。」
 「そうだ。それならお前の求める人質の避難も容易に行えるはずだ。」
 ダロムは作戦を話し、光太郎と怪人達は納得し、行動に移った。

 「ソフィルよ、あれからどうだ?」
 時を同じくして、議事堂内ではクリムゾンエクリプスが現れ、ソフィルに状況を聞く。
 「コウモリ怪人が海の怪人の一体が南光太郎と接触した、と報告してきました。おそらく、そろそろ何かしらのアクションを起こすでしょう。」
 「そうか。それで、旧時代の世紀王が現れたとして、人間共は素直に解放するのか?」
 「ええ、今は。どの道仮面ライダーを倒せば障害は消える。そこで殺しても遅くはない。寧ろ、ライダーが倒された絶望感に浸りながら殺される方が人間共も辛かろう。」
 クリムゾンエクリプスの質問にソフィルはニヤつくように答える。
 「そうか。吉報を待っているぞ。くれぐれも、旧時代の世紀王に敗れるなどという失態は犯すな。」
 クリムゾンエクリプスはそう言い残し、議事堂内から立ち去る。
 「さて、海の怪人共はどう出るか。コウモリ怪人、南光太郎が現れたら素直に此方へ通せ。」
 ソフィルはコウモリ怪人に指示を出し、その時が来るのを待つのだった。

 それから少しして、光太郎達は議事堂へ向かって歩みを進めていた。
 「どうした、ダロム?」
 何かを考えているダロムに光太郎は声を掛ける。
 「怪人達を従え、地上を歩く世紀王。こんな形で実現するとは、生きていれば何が起きるか解らぬな。」
 ダロムは素直な感情を述べる。
 「俺は世紀王であることを捨てた、人々の平和を守る仮面ライダーだ。」
 「それでも、我らにとっては世紀王であることに変わりはない。なに、この悲願が叶ったことを喜ばせてくれ。」
 ダロムの言葉に、光太郎は黙る。そして、
 「到着した。作戦通りに行くぞ。」
 光太郎の合図で、人質奪還作戦が開始される。
 「コウモリ怪人、南光太郎は我々が捕らえた!」
 議事堂の扉を強引に開け、ダロムは両腕を後ろで拘束した光太郎をコウモリ怪人に突きつける。
 「そうか。こっちへ来い!」
 コウモリ怪人は光太郎達を本会議場へ案内する。
 「やはり生きていたか、ダロム!」
 本会議場へ入ってきたダロム達を見たソフィルは声を上げる。
 「暫く合わぬうちに大怪人を名乗るようになるとは、随分と偉くなったものだな、ソフィル。」
 そんなソフィルを見ながら、ダロムは皮肉交じりに言う。
 「お前達が不在の間、ゴルゴムの名をこの時代まで守り抜いたんだ。名乗る価値はあるだろう。それで、そんな手土産を持ってきて、何が狙いだ?」
 「小奴の事は差し出してやる。ここにいる怪人達をネオゴルゴムに呼び戻す気はないか?」
 ダロムは光太郎と共にソフィルに近づく。
 「いいだろう、受け容れてやる。それから、南光太郎が来たことだ。人質共は返してやる。」
 ソフィルは議員達から離れる。その瞬間、
 「クラゲ怪人、イソギンチャク怪人、今だ!」
 ダロムの号令で二体の怪人が議員達を包み込むと、その場から出ていった。
 「ダロム、そんな奴の軍門に下るとは、地に堕ちたな。」
 ソフィルは右腕を振りかぶり、ダロムに叩きつける。しかし、ダロムはなんとかそれを受け止める。
 「ゴルゴムの名を守り抜いた?貴様はそこまで愚かだったか?海の中から貴様らの行動は見させてもらっていたが、ゴルゴムの理想とは程遠いごっこ遊びだったではないか!故に我らゴルゴムの意志は一つ!ゴルゴムの名を汚すネオゴルゴムの打倒だ!ゆくぞ、南光太郎!」
 「ああ!変…身!」
 光太郎の変身の掛け声とともに体組織を変化させる変身ベルト、サンライザーが出現し、キングストーンと太陽、2つのハイブリットエネルギーが全身を駆け巡り、南光太郎は、仮面ライダーBLACK RXへと変身するのだ。
 「俺は太陽の子!仮面ライダーBLACK!RX!」
 「チッ!やっぱり海の怪人共は邪魔だったか!コウモリ怪人、こいつらを生きて帰すな!」
 ソフィルの指示を受け、コウモリ怪人達は海の怪人に襲いかかる。
 「これでもくらえ!」
 テッポウエビ怪人は右腕から空気砲を放つが、コウモリ怪人は軽々と躱す。
 「そんなヒョロヒョロ玉、当たるか!」
 コウモリ怪人はそのままテッポウエビ怪人の右腕を足で掴むと、握り潰して破壊する。
 「大丈夫か!」
 それを見たシオマネキ怪人は巨大な左のハサミでコウモリ怪人を叩き、撃破する。
 「まだパンチは出せる。それがあれば、なんとか!」
 テッポウエビ怪人は高速の右ストレートをコウモリ怪人に放ち撃破するが、後ろから来るもう一体のコウモリ怪人からの奇襲攻撃を受け、撃破されてしまう。
 「こいつ、よくも!」
 タツノオトシゴ怪人は怒りながら突進して体当たりをするが、コウモリ怪人にはびくともせず、返り討ちに会い、撃破される。
 「やはり弱った体では限界があったか。」
 ソフィルは最初から怪人達の状態を見抜いており、怪人達の攻撃を意にも介さず右腕の槍で貫き、倒してゆく。
 「コウモリ怪人、ゴルゴムの誇りはどこへ行った!」
 ダロムは迫りくるコウモリ怪人達を破壊光線で倒してゆく。
 「お前達が率いていた頃より、今の方がゴルゴムらしいだろ!」
 コウモリ怪人達はダロムに噛み付く。
 「大丈夫か、ダロム!」
 RXは強力なパンチでコウモリ怪人を倒す。
 「なんとか、な。」
 ダロムはよろめきながらも体勢を立て直す。すると、議員達を逃がしたクラゲ怪人達が戻ってくる。
 「ダロム様、コウモリ怪人達はなんとか倒せましが、そろそろ限界です。なので、話していた例の手段を、お願いします!」
 クラゲ怪人はダロムにある提案をする。
 「お前達…解った。行くぞ!」
 ダロムは右手を前に突き出すと、怪人達は高熱を発し始める。
 「ダロム、なんのつもりだ!」
 RXは驚く。
 「南光太郎!今から我らの全エネルギーをお前に与える!我らにはもう、これ以上戦える力は残っていない。その時が来たら、お前に全てを託すと決めていた。」
 ダロムはRXに怪人達の生体エネルギーを送り込む。
 「ダロム、そんなことをすれば、怪人達は!」
 「解っている!だが、これは我らゴルゴムの誇りを賭けた戦いでもある。お前が生きていれば、我らが生きていたことにも意味は生まれる。だから、我らの力を受け取り、必ずネオゴルゴムを壊滅させるのだ!」
 ダロムは自身のエネルギーをもRXに送り込む。
 「最後に、昔見た夢を叶えてくれたこと、感謝する。」
 ダロムはそう言い残し、海の怪人達共々蒸発する。
 「なんだ、来たと思ったが、ただの無駄死にだったか。まあ、おかげで殺す手間が省けたってものだ。」
 ソフィルはダロム達の覚悟を笑う。
 「無駄死にだと?」
 RXの拳は震える。
 「あれを無駄死にって言わず、なんて言うのだ?」
 「ゴルゴムは死んだ怪人達を笑うことは決してしなかった。ソフィル、怪人達の命を賭けた行動を笑うお前、絶対に許さん!」
 RXは力強いキックを放ち、ソフィルは右腕で防ごうとするが、槍状の殻は容易く砕け散る。
 「何だ、この力は!」
 RXの想像以上の力にソフィルは困惑する。
 「お前が見下した、怪人達が命を賭けて俺に託した力だ!いくぞ!」
 RXはジャンプし、宙で回転し、
 「RXキック!」
 ソフィルの頭部めがけて必殺のキックを放つが、直撃すると貝殻が砕け散るだけで、致命傷になることはなかった。
 「馬鹿め!そこは頭ではない!この腹部こそが、本当の頭だ!」
 ソフィルは腹部を指しながら言う。
 「そこがお前の弱点か!」
 RXはバイオライダーに瞬時に変身する。
 「バイオブレード!」
 バイオライダーはソフィルの腹部めがけ、必殺の斬撃であるスパークカッターを放つ。
 「くっ…だが忘れるな!クリムゾンエクリプスがいれば、ネオゴルゴムは不滅だ!」
 ソフィルは最後までクリムゾンエクリプスを讃えながら爆発し、蒸発した。
 「皆さん、無事でしたか!」
 RXは議事堂を出ると怪人達が逃した議員達に近づく。
 「助けてくださり、ありがとうございます。彼らは?」
 首相は怪人達のことを尋ねる。
 「彼らは、俺を庇って…」
 「そうでしたか。最後まで礼を言えず悔やまれます。」
 「大丈夫です。みんな、誇りを貫いていました。」
 「そうですか。兎に角、本当にありがとうございました。」
 首相は議員達を代表してRXと握手を交わすのだった。
 続く

 次回予告
 ついに始まるクリムゾンエクリプスとの最終決戦!その過程で明かされるクリムゾンエクリプスの秘密とは?そして、ピンチに陥るRXに、キングストーンの奇跡が起きる。『2人の世紀王』ぶっちぎるぜ! 
 

 
後書き
 怪人図鑑
 大怪人ソフィル
 身長:184cm
 体重:82kg
 能力:右腕の貝殻の槍、左腕の触手、腹部にある頭部、高圧水流、策略
 神官ソフィルが水の石を吸収したことで進化した姿であるカメロケラスの性質を持つ大怪人。カメロケラスの特徴的な殻を右腕に槍として備え、神官時代にはできなかった近接戦闘もこなせるようになった。また、人間の頭部に当たる部分はただの殻になっており、腹部に当たる部分に頭部があるため、弱点を判別しにくくなっている。 
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