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木彫りで

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第二章

「思ってな」
「言われますか」
「左様じゃ」 
 こう家康に言うのだった。
「わしはな」
「それは一度です」
 それならとだ、家康は秀吉に応えて述べた。
「平八郎自身にです」
「聞くとよいか」
「こうした話はです」
「本人にじゃな」
「聞かれることがです」
 まさにというのだ。
「よいかと」
「確かにな」
 秀吉も家康のその言葉に頷いた。
「ではな」
「平八郎をですな」
「ここに呼んでな」
 そうしてと述べた。
「本人から話を聞こう」
「さすれば」
 家康も頷いて応えた、こうしてだった。
 秀吉は忠勝を呼んだ、そのうえで彼に直接聞いた。
「お主は何故木彫りを彫るのじゃ」
「実に落ち着くので」
 忠勝は秀吉に一礼してから畏まりつつ笑顔で答えた。
「ですから」
「それでか」
「はい、暇があれば。そして落ち着きたい時はです」
「彫るか」
「そうしています、多少の大きさの木とです」
 それにというのだ。
「小刀があれば。小柄でもです」
「小柄なぞ何時でも持っておるな」
「侍ならば」
「そうであるな」
「もうそれで簡単に何処でも出来るので」
「しておるか」
「はい、幼い頃に親戚に教えてもらい」
 そうしてというのだ。
「そのうえで、です」
「はじめたのじゃな」
「これがはじめてみますと実に心地よく」
「落ち着くからか」
「好きになりまして」 
 それでというのだ。
「今もしております」
「そうであるか」
「それで彫ったものを飾っておりますが」
 そうもしているというのだ。
「今ではかなりの数になっておりまする」
「それは何よりじゃな、しかし刃物を扱うのならな」 
 ここえ秀吉はこうも言った。
「それならじゃ」
「何でしょうか」
「手元が滑ってな」
 そうしたことがありというのだ。
「よく手を怪我するであろう」
「いえ、ありませぬ」 
 忠勝は秀吉に笑って答えた。
「それがしは」
「ないのか」
「彫っていても戦の場でもです」
 そのどちらでもというのだ。
「幼い頃より傷を受けたことはです」
「ないか」
「一度も」
 まさにというのだ。 
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