船の名前
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第四章
「それならいいね」
「そうですね、では」
「この船の名前はメイフラワーだ」
ジョーンズは今度は船を見て言った。
「希望、新大陸という希望の地にだ」
「希望を持ってですね」
「そのうえで行くから」
それ故にというのだ。
「その名前だ、では今からだ」
「希望の船に乗り込んでですね」
「希望の地に行こう」
「そうしますね」
「そう、そして」
ジョーンズはさらに言った。
「希望の地で皆暮らすんだ」
「これからは」
「そうするんだ、皆乗ってくれ」
船長としてそこにいる全員に告げた。
「これから希望を胸に行こう」
「希望か、忘れていたな」
「そうね」
妻は夫の言葉に頷いた。
「これまで逃げることばかり考えていたけれど」
「迫害から」
「けれどね」
「そう考えてもいいな」
「私達は希望を持ってね」
「希望の地に行くんだ」
「そうよね、そして希望の地でね」
そこでというのだ。
「これからはだよ」
「幸せに暮らすのね」
「自由があって」
「そして迫害もない」
「最初は何もなくとも」
それでもというのだ。
「そこから全てを築いて暮らせばいい」
「そうよね、それじゃあ」
「行こうか、希望の地に」
「そうしましょう、これから」
妻は今は笑顔だった、そうしてだった。
夫と共に子供達を連れて希望の船に乗り込んだ、船は暫くして出湊し大海原に乗り出していった。そのうえで。
大西洋を渡り新大陸に辿り着いた、人々はその地に降り立ってだった。
「ここで暮らそう」
「ここを我々の場所にしよう」
「信仰を守ろう」
「そのうえで生きていこう」
口々に言って早速だった。
家や畑を築き暮らしはじめた、この地をニューイングランドと名付けたうえで。
アメリカという国が生まれる前の話である、この国に来た人は多いが最初に来た人々の心には何があったか。
実に様々な感情があった、だがそこには確かに希望があった。その希望を胸に海を渡ってであった。
新大陸に来て暮らしはじめた、そうしてアメリカという国が生まれた。この国は希望が生んだ国と言えるであるうか。その歴史を見ると。
船の名前 完
2022・11・12
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