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そんな漫画読ませるな

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第二章

「むしろ癒し系だろ」
「そうだけれどね」
 妻もそれは否定しなかった。
「けれどね」
「それでもか」
「確認の為にね」
「聞いてみるか」
「そうしましょう」
 夫婦で話してだった。
 秀幸は清一郎に携帯で確認を取った、彼は面長で整った優しい感じの顔で黒髪をショートにしている、背は一八〇近くありすらりとしている。高校では漫画研究会に所属していてそちらの知識はかなりのものだ。
 それでだ、彼に自分達の娘である亜由美のことを聞いたのだった。
「お前に心当たりないか?」
「うちで?それで僕に?」
「ああ、亜由美が夜トイレに一人で行けなくなって暗がりもな」
「怖がってなんだ」
「またそうなったことについては」
「亜由美ちゃんには漫画見せたよ」
 清一郎は何でもないという顔で答えた。
「僕が持ってるね」
「漫画か」
「色々ね、マッシュルとか勇者が死んだとか」
「今人気の漫画か」
「あと電子で買ったうしろの百太郎とか」
「おい待て」
 秀幸は甥が何気なく言った電子の漫画について即座に突っ込みを入れた。
「うしろの百太郎だと?」
「面白いね、あの漫画」
「あんな漫画子供に読ませるな」
 甥に怒った顔と声で言った。
「怖過ぎるだろうが」
「怖いのがいいんじゃない、ホラー漫画だし」
「ホラーでも怖過ぎるだろ、つのだじろう先生の作品は」
「怖いからいいのに」
「あの人の漫画子供が読んだら夜そうなるだろ」
 こう言うのだった。
「原因はそれか、もう読ませるな」
「叔父さんがそう言うなら」
「原因はわかった、それじゃあな」
「二度となんだ」
「あの人の漫画読ませるなよ」
「楳図かずお先生とか日野日出志先生とか好美のぼる先生もかな」
「全部駄目だからな」 
 こう言って甥との電話のやり取りを終えた、そのうえで妻にその原因を話すと彼女も納得した顔になった。
「あの人の漫画だとね」
「そうなるな」
「ええ、それじゃあね」
 妻はこう言った。
「怖い作品には楽しい作品よ」
「それを読ませるか」
「怖い作品を忘れさせましょう」
 うしろの百太郎、それをというのだ。
「そうしましょう」
「そうだな、それじゃあな」
「ええ、漫画だけじゃなくてアニメも童話もね」 
 読ませて観せてとだ、こう言ってだった。 
 由利香は二人の娘である亜由美自分そっくりの彼女にそうした、すると。
 夜一人でトイレに行って暗がりも怖がらなくなった、夫婦はこのことにほっとした。そして清一郎にはも彼女が子供の間はそうした漫画を読ませない様あらためて釘を刺したのだった。


そんな漫画読ませるな   完


                   2023・5・21 
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