お母さんは太る

　　　　　　　　　　　　　　　　お母さんは太る
　母の石山香奈を見てだ、家の下の娘で中学三年の亜美黒髪をロングにしていて切れ長の目と整った顎を持つ均整の取れたスタイルで色白の彼女が言った。背は一五八程だ。
「お母さん太ったわね」
「いや、そうしたことは言わないでよ」
「いや、実際にね」　
　はっきりした目で茶色のふわふわした短めの髪の毛で丸顔で小柄な一五二位の背で胸のある母に言うのだった。
「去年に比べたら」
「太ったのね」
「やっぱりね」
　亜美はこうも言った。
「女の人ってね」
「痩せてる方がいいっていうのね」
「そうよ、お母さん痩せたらもっと奇麗になるのに」
「そうかしら」
「お母さん若い頃凄い奇麗だったわよ」　
　アルバムで見た彼女のことを言った。
「そうなったら？」
「あのね、そう言うけれどね」
　亜美に高校二年の姉の由希子が言ってきた、外見は母そっくりだが胸は大きいが身体つきはすらりとしたものだ。見れば彼女も胸はある。背は母位だ。
「皆歳取ったらね」
「太るの」
「そう聞いてるけれど」
「けれど太り過ぎはよくないでしょ」
「お母さんそこまで太ってないでしょ」
　姉は妹に言った。
「本当にね」
「だからなの」
「そう、別にね」
　これといってという口調で言うのだった。
「言うことないわよ」
「そうかしら」
「むしろ適度に太ってる位がね」
　妹にさらに言った。
「いいっていうわ」
「そんなものかしら」
「ある程度太ってないと体力もないし」
「無駄にお肉付いて動きにくくない？」
「そうでもないみたいよ」
「そうかしら」
　亜美は腕を組んで難しい顔になって言った、だが香奈の他のことは何も思うことがなく少し肉が付いた位の太り方だったのでこれ以上言うことはないと思い実際に言わなかった。そして高校に入学し大学にも入ってだった。
　就職して結婚して子供が出来たが。
　子供が出来て十数年後にだ、その子供であるいのり隔世遺伝で祖母そっくりの外見である彼女に言われた。
「お母さん太った？」
「えっ、そう？」
　娘の言葉にぎくりとなって応えた。