おっちょこちょいのかよちゃん
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283 羨望心の芽生え
前書き
《前回》
藤木は奏子、北勢田、濃藤に追いつかれ、りえを渡して自分は逃げようとするが、レーニンおよび杉山が現れてレーニンが高校生三人を殺害しようとする。その場に三河口、湘木、そして冬田が駆け付け、レーニンの殺害を防ぐ。その一方、かよ子は紂王と交戦し、白魔術で彼の攻撃を妨害するがその場に妲己と藤木が現れた!!
藤木と妲己を取り逃がしてしまった大野、ブー太郎、まる子、友蔵、石松、お蝶は走って藤木を追う。
「はあ、はあ、もう走りたくないよお・・・」
「儂も、疲れた・・・」
まる子と友蔵は疲れてしまった。
「何言ってるブー、そんなことしてる間に藤木が逃げちまうブー!」
ブー太郎が反論した。
「その通りだ、休憩する余裕などない、それにこの屋敷の人間もまだ全滅した訳ではないぞ!」
「だってえ・・・」
「頼む、まる子が辛そうなんじゃ、少し休ませておくれ~!!」
友蔵が土下座で懇願した。
「もう仕方ねえ、放っておけ!」
大野は呆れた。他の者も皆まる子と友蔵を見捨てて行ってしまった。
「まる子や、大丈夫か?」
「うん・・・」
だが暫くして、紂王の屋敷の遊女が走って来た。
「この者は・・・、侵入者よ!」
「全く、葬ってくれる!!」
「お、おお、別嬪さん達じゃ~」
友蔵は楽園に浸った。だが、呑気に言っている場合ではなかった。遊女が短刀を出して友蔵とまる子に襲い掛かる。
「ぎえええ、許してくれえ~!!」
友蔵は命乞いした。まる子は炎の石で遊女を焼き尽くした。
「ああ!!」
遊女二名は消失した。
「おお、凄いぞ、まる子お~!」
「いやあ・・・」
二人は勝手にその場で休憩するのだった。
「僕は、帰らないぞ!」
「・・・え?」
「僕はどうせ帰ったって皆から遠いところへ逃げた卑怯者だって言われるだけなんだ!それに僕なんか帰ったって誰が喜ぶんだい!?」
「う・・・」
かよ子は藤木の言っている事がその通りになっていると思うと何も言い返せなかった。
「それに・・・」
藤木は言葉が詰まる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「え?何て言ったの?」
かよ子は藤木の言葉が小声すぎて聞こえなかった。
「・・・、さ」
藤木は深呼吸してもう一度言った。
「笹山さんの事は忘れるってもう決めたし、この世界の方が僕は楽なんだよ!誰も卑怯者って言わないし・・・!!」
「藤木君・・・」
かよ子には藤木が余りにも拒む理由が解らない訳では無い。確かに野良犬に襲われる所を自分を見捨てて笹山だけ連れて逃げて一度愛想を尽かされた事、クリスマスの合唱コンクールで自分だけ歌い出しが遅れて独唱を頑張った自分や笹山、声が出なくなった大野の代わりに歌った杉山とは対照的に冷ややかな目線を取られた事、これらの事から考えると元の世界など苦痛であろう。
「・・・、そんな事ないよ!」
かよ子はそれでも反論した。
「笹山さんはあの手紙を貰った時、凄く悲しんでたよ!それにクラスの皆だって藤木君がいなくて心配そうにしてたよ!皆もう気にしないと思うよ!」
「保証できるのかい?」
その時、妲己がまた九尾の狐に変化して杖の所有者を襲撃し始めた。
「無駄話はおしまいだよ!」
だがかよ子は妲己に杖を向けた。白魔術が発動された。妲己も紂王も攻撃が不能とされた。
「まだ話は終わってないよ!」
「かよちゃん、こいつらは私がやっとくわ!」
「うん、次郎長さん、藤木君を捕まえよう!」
「ああ!」
次郎長が動き出す。ありと悠一、シャクシャイン達は羽根から降りて妲己や紂王と対峙した。
「藤木茂、おとなしくこちら側へ来るのだ!」
「う、やめてくれ!嫌だ!僕は帰らないぞ!」
藤木は妲己が出した鳳凰に乗ったままその場から逃げようとする。
「藤木君!待って!」
かよ子は羽根で藤木を追走した。だがそこに、大きな爆発が起きた。炎がかよ子達を襲う。
「え、何!?」
かよ子の羽根の結界が炎を防ぐ。かよ子は視界が遮られて落ち着かなくなる。
「茂様の邪魔をする方があちらにもいるわ!」
「やっておしまいましょう!!」
藤木と共に遊んだりお世話した遊女達がかよ子達の進む先を阻んだのだった。
「ちょっと、通してよ!えい!」
かよ子は杖を煙に向けた。かよ子の杖から炎が出され、敵の炎を飲み込んだ。更にその炎が遊女達を襲う。
「きゃあ!」
「あ、皆!!」
藤木は遊女が炎にやられていく様を目撃し、慌てて引き返そうとする。
「私達の事はいいから、茂様は早く逃げてください!!」
「そ、そんな・・・!!」
藤木は躊躇った。遊女が煙になって死滅していく。
「や、やめてくれ!!僕の大事な人たちなんだ!!」
「山田かよ子、鵜呑みにしてはならぬ!今すぐ藤木茂を捕えるのだ!」
「うん!」
かよ子は羽根を藤木が乗っている鳳凰の元へと近づける。
「わ、く、来るな!あっち行け!」
藤木は悪足掻きの如く叫んだ。だがその時、かよ子の方へ青い龍が襲い掛かって来た。
「茂様を襲う人は私が許さない・・・!!」
倒されていない遊女が青龍を召喚したのだった。そして藤木が乗っていた鳳凰が返り討ちにしようと嘴から炎を吹いて来たのだった。
「ああ!!」
「山田かよ子!」
次郎長が刀を振った。風を起こして炎を別の方向へ移動させた。だが、竜もまた襲って来る。竜の腕がかよ子の頭上を襲う。
「えい!」
かよ子は氷の能力を行使し、竜の腕を凍らせた。竜はその冷たさに苦しむ。そして冷凍光線を更に浴びせた。一方の次郎長も刀で鳳凰の炎をかわしながら突進していた。
「わあ、来るなあ!!」
藤木は叫んだ。
「茂様!」
別の遊女が藤木の前に立ち塞がった。
「邪魔だ!」
次郎長は女を斬ろうとした。だが遊女も短刀で応戦した。
「茂様、逃げてください!でないと捕まります。早く!」
「う、うん・・・!!」
藤木は鳳凰と共に飛び立った。丁度かよ子も竜の全身を凍らせて撃退させた。
「私の竜が・・・!!」
竜を召喚した遊女が嘆いた。もう一度竜を召喚しようとした。しかし、かよ子は遊女本人を凍らせて凍え死にさせた。
「はっ、はっ・・・」
遊女の一人が消失した。一方の短刀を持った次郎長と交戦している遊女の短刀は次郎長の刀と匹敵する程の威力だった。次郎長は地面に刀を振るう地砕きで遊女を吹き飛ばされた。
「次郎長!!」
別の遊女を倒し終えたばかりのかよ子が加勢にかかる。かよ子の白魔術が発動される。オルガンの音色が響くと共に爆発が起きた。
「きゃあああ!!」
もう一人の遊女も爆発に巻き込まれて消失した。
「山田かよ子、藤木茂を追うぞ!」
「うん!」
かよ子と次郎長は羽根に乗って藤木を追い続けた。
法印大五郎、吉良の仁吉などその他の次郎長の子分達、のり子や椎名、関根などは紂王の屋敷の兵士や遊女達と交戦していた。その上空に何かが飛行しているのを確認した。
「あれは何だ!?」
「鳥!?」
それは鳳凰に乗って逃げる藤木だった。藤木は下を見下ろす。目が眩み怖かったが、多くの兵士や遊女が戦い、倒されていく様を見た。
(み、皆戦ってるのに僕だけこのまま逃げるなんて・・・)
あの時もまた自分は逃げただけだった。野良犬に襲われた時も自分の好きな女子だけを連れておっちょこちょいの女子を置いてきぼりにして逃げて卑怯者と呼ばれた。もっと自分に戦える力があればいいのにと思った。先程そのおっちょこちょいの女子が魔法の杖を駆使して遊女達を倒していくのを見た。自分だってあれだけ特別な力があれば、野良犬から逃げる事も今この場で多くの仲間を失う事もなかったのではなかったか。
(僕だって何か強くなれば、山田の杖みたいな道具があれば、妲己さんみたいになんか能力があれば・・・!!)
藤木は羨望心が強まっていった。その時、何かが飛んできた。その物体は爆発を起こした。
「う、うわああ!!」
藤木は乗っている鳳凰ごと爆発で吹き飛ばされた。
「な、何だ・・・!?」
「あれってもしかしてりえちゃんの友達が探してるって子?」
「そうかもね」
二人の女子がその場にいた。
「な、何だ君達は!?」
「りえちゃんはどこなの?」
「し、知らないよ!!」
藤木は鳳凰に乗ってまたその場を遠ざかろうとする。しかし、一人の女子がブーメランを投げた。そのブーメランが鳳凰に当たる。鳳凰が真っ二つにされた。
「う、うわああ!!」
藤木は鳳凰ごと落ちた。藤木は恐怖で走って逃げ出した。
ありと悠一、シャクシャインに景勝、兼続は妲己、紂王と対峙していた。杖の所有者による白魔術で攻撃不能とされていた為、あり達にとって絶好の機会だった。
「あの時、りえちゃんを取られたけど、今度は取り返させてもらうわよ!」
ありはカムイを召喚した。アイヌラックルである。そして悠一のテクンカネで景勝、兼続が強化された。アイヌラックルが、シャクシャインに、景勝、景勝が纏めて紂王と妲己を殺めようとした。ところが、その場にある人物が現れた。
「紂王、妲己、全く何を手こずっている?」
その場にレーニンが現れた。あり達は戦争主義の世界の長との再会でぞっとするのだった。
後書き
次回は・・・
「吸収による強化」
あり達の前にレーニンが現れ、あまりの威圧感によってありは急に攻撃ができなくなってしまう。それはレーニンが様々な能力を己のものへと吸収しているからだった。かよ子達は引き続き藤木を探し続けるが、その頃まる子と友蔵は疲れたからと休憩していたが・・・!?
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