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おっちょこちょいのかよちゃん

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279 杖の通用具合

 
前書き
《前回》
りえに拒絶され、二度目の失恋を経験した藤木は遊女達に慰められる。三河口、湘木、そして冬田は戦争主義の世界の長・レーニンおよび杉山と顔を合わせる。ベニートから三河口は武器として鎖鉄球を使用していると連絡を受けているが、三河口は温存の為に使用してこない。そして冬田にとって嬉しい援軍・山田かよ子ら藤木救出班が現れる。そして藤木を拒絶したりえは妲己により処刑されそうになるが、その場で助けが遂に訪れる・・・!? 

 
 杯の所有者を奪還する為に動いている者達は彼女が囚われていると思われる屋敷に辿り着いた。
「エク・カムイ!」
 その一人の女性・煮雪ありは己の道具を使用する。彼女はタマサイでアイヌの神・カムイを呼び起こす事ができるのである。
「よし、ワイらも行くで!」
 鎌山健次郎が鎌を振り回して鎌鼬(かまいたち)を起こした。屋敷の屋根の一部が破壊された。
「よし、このまま追撃だ!俺は救援を召喚する!」
 ありの夫・煮雪悠一はテクンカネを利用する。協力者を増やそうと試みた。二人の武将が現れた。
「私を呼んだのはお前かね」
「はっ。あそこに杯の所有者の女の子がいるので助けて欲しいのだが」
「よかろう。この景勝と我が家臣・兼続も協力しよう。行くぞ、兼続」
「はっ、しかと心得ました」
 二人の新たな味方を付けた一行はその屋敷へ侵攻するのだった。

 三河口、湘木、冬田に対して戦争主義の世界の長・レーニンと彼と同体化している杉山との戦闘は激しくなる。その時、藤木救出班が現れたのだった。
「お兄ちゃん!」
 かよ子は知り合いの高校生を呼ぶ。
「かよちゃんか・・・。藤木君の方はいいのか?」
「確かにそっちも心配だけど、お兄ちゃん達の方は大丈夫なの?」
「確かに言われるとそうではないが・・・。まあいい、手伝って貰おうか」
「来てくれたのか、杖の所有者よ、素晴らしい。ブラド三世が奪ったにも拘らず、ヴィクトリア女帝が守り抜けなかったその杖をもう一度貰おう!」
「山田、お前がどれだけ強くなったか見てえな」
 レーニンと杉山が交互に顔を変えた。
「行くよ!」
 かよ子は杖を向けた。火炎放射をかます。だが、レーニンは既に異能の能力(ちから)で防御してしまった。
「皆、こいつは俺の異能の能力(ちから)を吸い取って自分の物としている!」
「え!?」
「こいつは俺達も加勢だな!」
 藤木救出班の他の面々も参戦していく。
「杉山、お前、これ覚えてるか?」
 大野はある物を見せた。それは嘗て杉山の物だったが、大野の転校の件で喧嘩した時、杉山が一度放棄した雷の石だった。
「俺の石・・・、か。届けに来てくれたのか?」
「ちげえよ。俺は親友の義理で山田に頼まれて預かってるだけだ。だが、なんだかんだでお前の石も役に立ってるぜ」
「そうか・・・」
 杉山はどこか嬉しくも感じていた。これは喧嘩したものの親友としての証になっているのか、それともまた別の理由か・・・。
「くだらん思い出話はいい!」
 レーニンの姿に戻り、レーニンは衝撃波を放つ。だがかよ子の羽根の結界で防御した。
「その杖の能力(ちから)、寄越す気がなければそれを吸収させて貰うまでだ」
「吸収!?」
「なんじゃ、吸い取るのか?」
 友蔵には言葉の意味が解らなかった。
「山田かよ子の杖の能力(ちから)を吸収するという意味だ」
「何と!」
 レーニンの能力吸収の術が始まった。三河口やかよ子が武装の能力(ちから)を発動させるが、レーニンには武装の能力(ちから)が通用しなかった。
(この男の吸収術に武装の能力(ちから)による防御は効かなかったっけか・・・)
 三河口は戦争主義の世界の本部で剣を取り返した時にレーニンと対面した事を思い出した。その時は武装の能力(ちから)が通用せずにあっけなく己の能力(ちから)を吸収されてしまったのである。
「終わりだ、杖の能力を・・・」
 だが、レーニンの吸収能力が効かなかった。
「ええい!」
 かよ子の杖から白い光が放たれた。そして讃美歌を奏でるようなオルガンの音色が聞こえて来たのだった。
「こ、これは・・・」
「白魔術の能力だよ」
「白魔術、だと・・・!?」
 白魔術を行使する能力。それはかよ子がラ・ヴォワザンにモンテスパン公爵夫人と戦った時に彼女らが使用する黒魔術に対抗したいという気持ちから杖が強化されて得た能力である。
(あいつ、杖にそんな能力を身に付けたのか・・・!!)
 この杖の進化には杉山でも驚かされた。そしてその白魔術による音楽はレーニンの吸収能力を通さなかった。
「な・・・!!」
 そして杖から電撃が放たれる。
「山田かよ子、杉山さとしを巻き添えにしてはならぬぞ!」
 石松が注意した。
「うん!」
 かよ子はやや手加減して電撃を浴びせた。
「俺達も行くぞ」
 三河口も接近した。
「ほう、貴様からやるか」
 レーニンが三河口を攻撃対象に変えた。衝撃波が放たれる。だが三河口はそれを武装の能力(ちから)で全て防御する。レーニンはその衝撃波を武装の能力(ちから)で強めてさらに強化させる。だが、強化が途中で止まった。
「何?」
「俺が止めてやったよ!」
 関根の刀がレーニンの武装の能力(ちから)で一時的に吸収したのだった。
「感謝します!」
 三河口は手短に礼をしたが、余所見をせず武装の能力(ちから)と合わせて突進した。だがレーニンは衝撃波でそれを止めようとする。だが三河口の武装の能力(ちから)も負けていなかった。お互いが睨み合ったまま動かない。
(す、凄い・・・!!)
 かよ子は白魔術で電撃を強めた。
(む、白魔術で強化しおって・・・!!)
「こっちは俺が防いでやるよ」
 杉山が武装の能力(ちから)でかよ子の電撃を防御した。
(レーニンはお兄ちゃんが戦ってるけど私の方は杉山君が相手してるんだ・・・!!)
 かよ子は構わず白魔術を含めた電撃で引き続き攻撃する。三河口が武装の能力(ちから)でレーニンを吹き飛ばそうとした。
「このお、ブー!」
 ブー太郎や大野なども石で攻撃した。
(ち、俺もあの石を持ってたらな・・・)
 杉山は大野と体育館裏で喧嘩した時、雷の石を捨ててしまった事を悔やむ。だが、後悔しても遅い。一方、レーニンの衝撃波は次々と三河口に弾かれる。そして、三河口は遂にあれを出した。さりの護符で出した鎖鉄球だった。三河口は切り札として今迄温存していたものである。
「ええ、お兄ちゃん、道具を貰っていたの!?」
「ああ、『仮の武器』だが」
(仮の武器?どういう事・・・)
 だが気にしている場合ではない。三河口は鎖鉄球を振り回して飛行した。
「す、凄い・・・!あんな事できるの!?」
 レーニンは飛行した三河口に無数の槍を飛ばした。だが、振り回した鎖の風圧が全てを弾く。そして鎖鉄球をレーニンにぶつける。レーニンは何とか武装の能力(ちから)で防ごうとしたが、吹き飛ばされた。
「あれが、ベニートが言っていた鎖鉄球だな・・・!!」
 同時に吹き飛ばされた杉山もまた驚かされた。
(あいつもまた強くなったのか・・・)
「杉山!自分の能力(ちから)を受けてみろ!」
 大野が叫んだ。杉山は大野が嘗て自分のものだった雷の石を使用してきたのだ。
(俺の石の能力(ちから)・・・!!)
「よし、俺の法力を加えてやるぞ!」
 法印大五郎の法力が発動された。杉山は武装の能力(ちから)で防ごうとするが防ぎきれない。かよ子も再び電撃で己の電撃を強めようとする。
「レーニン、いや、杉山君、終わりにするよ・・・!!」

 紂王の屋敷。藤木は遊女の個室で宥められていた。
「私が茂様のお嫁になれたらいいのに。安藤りえ嬢の代わりにはならないとは思いますが・・・」
「う、そんな事、ないよ・・・。君だって可愛いし・・・」
「兎に角、安藤りえ嬢は妲己様が処分すると思うので嫌な女はいなくなって安心しますね」
「いなくなるって、りえちゃんはどうなるのかい?」
「そうですね、本来ならばここに来てはいけないはずの人なので、殺害されると思いますが」
「え、ちょ、それだけは、それだけはやめてくれよ!」
「え、どうしてですか?」
「その、それでも僕はりえちゃんを守るって決めたんだ・・・。妲己さんにお願いしてくるよ。りえちゃんを殺すなんてそんな酷い事はできないよ!!」
 藤木は部屋を飛び出し、りえとの部屋に戻ろうと走った。
「し、茂様!!」
 遊女は追いかけた。その時、「ドーン!」「ガラガラ」と爆発音や物が崩壊するような音がやかましく建物内に響いた。
「な、何だ!?」
 藤木も、その場にいる遊女も何事かと驚いた。その場に紂王が走って現れた。
「おい、大変だ!敵襲だ!!」
「テキシュー?」
 藤木は一瞬何を言っているのか理解できなかった。
「茂様や私達を襲いに来た人がいるんです!今すぐ逃げないと!」
「え?う、うん!!」
 藤木遊女や紂王と共に逃走の準備を始めるのだった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「屋敷の襲撃」
レーニンおよび杉山と交戦するかよ子達だが、藤木のいる方角にて喧騒が発生する。三河口にいわれて急ぐかよ子だが、杉山、そして冬田達もも藤木のいる方向へと向かう。紂王の屋敷ではあり達がりえの奪還の為に侵攻していた。藤木は逃げようとするりえを忘れて避難しようとするもある約束を思い出し・・・!? 
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