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不幸過ぎて笑えない

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第二章

「大阪生まれで生粋の阪神ファンにとってはね」
「今年は地獄?」
「この世のね、天国からね」
「地獄ね」
「そんな気分よ」 
 こう言うのだった。
「全く以てね」
「そうよね」
「そういえばあんた笑ってないわね」
「どうして笑うの?」
「いや、これだけのネタみたいな負けだったのに」
 それでもというのだ。
「別にね」
「笑わないわよ、だから楽天もね」
「去年弱かったから」
「今年もぱっとしなかったし」
 それでというのだ。
「特にね」
「そうなのね」
「そもそも他人の不幸笑う趣味ないから」
「私もよ、いや他人の不幸は蜜の味っていうけれど」
「それはあれでしょ、些細なトラブルでこけてる様な」
「そんな状況だから笑えるのね」
「それが過ぎるとね」
 不幸がというのだ。
「流石にね」
「笑えないのね」
「今のあんたは笑えないわよ」
 阪神の歴史的惨敗に絶叫している茉祐はというのだ。
「流石にね」
「あんたいい娘ね、多分ね」
「多分?」
「幸せになれるわよ、人の不幸を笑うって」
 そうしたことはというのだ。
「やっぱり浅ましいことだしね」
「そうよね、人の幸せこそね」
「笑うものよね」
「それこそがね」
 まさにとだ、愛理は言った。
「笑うもので不幸はね」
「笑うものじゃないわね」
「人の不幸を笑うのは」
 それはというのだ。
「碌な人じゃないわ、ただね」
「ただ?」
「今年のシリーズは伝説になるわよ」
 茉祐は落ち着いた顔になって言い切った、見ればその目は座っている。
「絶対にね」
「伝説って」
「阪神は只でさえネタになりやすいチームで」
「それね、人気もあるしね」
「注目もされてるしね」 
 それだけにというのだ。
「今年のシリーズのことは」
「伝説になるの」
「それでネタになって」
 そうもなってというのだ。
「それでね」
「言われ続けるの」
「どう言われるかは知らないけれど」
 それでもというのだ。
「絶対によ」
「伝説になるのね」
「そう、ネタにね。それでね」
 そのうえでとだ、茉祐はまたビールを飲んで話した。 
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