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仮面ライダーAP

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北欧編 仮面ライダーRC&レジスタンスガールズ 第16話


 市長公邸にまで響き渡って来るほどの轟音。それは、仮面ライダーRCの圧倒的なパワーによって、新世代ライダー達が吹き飛ばされた際の衝撃音であった。

 公邸に繋がる道路を舞台に繰り広げられているこの死闘において、ライダー達は窮地に立たされている。地を転がりながらも何とか立ち上がっている彼らだが、すでにかなりの体力を消耗しているようだった。

 ――死ぬほど不味く、栄養満点なあの軍用糧食(レーション)を口にしていなければ、彼らはこの時点で力尽きていただろう。
 戦闘の轟音を聞き付けた街中の戦闘員達もこの場に駆けつけて来たのだが、彼らは皆、超人同士の潰し合いに巻き込まれる形で全滅していた。LEPにとっては彼らの存在など、路傍の生ゴミにも値しなかったのである。

「があっ、はッ……! なんなんだ、この強さ……!」
「黒死兵より強い、なんてレベルじゃねぇ……! こんなレベルの怪人がいやがったのか……!」
「常時オーバーロード状態のUSAのパワーでも、押し負けるとはッ……!」

 ケージ、オルバス、USAの3人は、RCの異様な馬力に驚嘆し、わなわなと拳を震わせている。この時の彼らにはまだ知る由もないことだが――RCのパワーと装甲は、始祖怪人達の中でも五指に入るほどの代物なのだ。
 芦屋隷(あしやれい)博士によるスーツの強化改造が完了していない今の彼らでは、そんな相手と真っ向から殴り合うにはあまりにも「力不足」だったのである。

 その上、ケージ達はすでに先の黒死兵戦で必殺技を撃ち尽くしている。再使用までの所要時間(クールタイム)も終わっていない今の状態で、RCを正攻法で攻略するなど不可能に等しい。

「くそッ……! だからと言って……負けられるかよッ!」

 それでもターボは諦めることなく、拳銃形態(ガンモード)のシャフトブレイカーでエネルギー弾を連射しながら突進して行く。
 そして「間合い」に入ったところでソードイグニッションキーを装着し、刀剣形態(ソードモード)に変形させ、一気に斬り掛かった。だがRCは、片腕の手刀だけでその刀身を容易くへし折ってしまう。

「折れたァ!? ぐっ、お、あぁああッ!」
「本田ッ!」
「本田さんッ!」

 そのまま腹部に拳の乱打を受けたターボは、再び吹き飛ばされて行くのだった。咄嗟に彼の身体を受け止めたUSAとオルバスも、勢いに押されて転倒してしまう。

「……学習(ラーニング)完了。これより、攻撃体勢へと移行する」
「な、なに……!?」
「これまでは、攻撃の内にも入らねぇってのか!?」
「ライ、ダー……ファイト!」

 だが、それで終わりではなかった。これからが「本番」であると宣告して来たRCは、コードで繋がっている輸送車を前進させると、ケージ達の間合いに自ら飛び込んで来たのである。

 常にコードで繋がれているため移動範囲に制限があり、動きも鈍重であるという弱点を持つRCだが。頭脳部であるLEPがRCの動きに合わせて輸送車を動かせば、移動範囲の問題は解決してしまう。さらに出力のギアを最大にすれば、速度と威力を両立させた攻撃も繰り出せるのだ。

 首輪を緩められた猟犬は、枷の存在も忘れて獲物を喰らい尽くすのである。

「ぐはぁ、あッ……!」

 打撃が届く間合いに飛び込んで来たRCの鉄拳は、4人の新世代ライダー達を矢継ぎ早に叩きのめして行く。あまりの衝撃に吐血する新世代ライダー達は、その鉄仮面を自らの血で汚していた。
 横綱相撲、という言葉でも足りない一方的な展開であった。彼らの中では最もパワーが突出しているUSAの拳打でさえ、RCの装甲を僅かに陥没させるのが精一杯だったのである。

 何十発というパンチとキックを立て続けに喰らい続けた4人は、憔悴し切った様子で片膝を着いてしまう。そんな彼らを、RCの双眸は冷酷に見下ろしていた。

「く、くぅッ……!」
「殺すな、という指示を受けている。これ以降、手加減は出来ない。速やかな退却を勧告する」
「……それで大人しく引き下がってくれるとでも? ハッ、どうやら『学習』が足りてねぇようだな」
「そんな甘い計算で測れるようなものじゃないのさ、俺達仮面ライダーはな……!」

 だが、それでもライダー達は屈することなく、自分達の勝利を信じ続けている。人間の戦士達が拠り所にしている「勇気」という概念を理解出来ないスーパーコンピューターは、彼らの解答にある決断を下すのだった。

「……第1目標の『学習』は完了。第2目標の遂行は困難と判断。『楽しみが減る』損害についてはやむを得ないと判断し……これより、仮面ライダー4名の『抹殺』を実行する」

 極限状態に陥った人間達は、少なからず「我が身可愛さ」や「自暴自棄」の感情を発露させるはず。だが、この4人にはまだその兆候が見られない。
 理解出来ない。この者達は装甲服を着ているだけの「人間」ではないのか。自分達の窮地を自覚出来ないほどに知性が無いのか。理解出来ない。

 ――そんな異常(エラー)反応がLEPの計算を乱し、「学習」を阻んでいた。
 この戦闘で人間という種に対する理解からさらに遠退いた彼は、自身の思考回路が故障を起こす前に、「演習」を終わらせるべきだと判断する。

 戦馬の指示に反しようとも、この4人はここで「抹殺」せざるを得ない。それこそが最適解であると判断し、ライダー達にとどめを刺そうと躙り寄るRCが拳を振り上げた――その時だった。

「――全員突撃ィイッ!」

 野戦服に袖を通したニッテ達主力メンバーを筆頭とする、オーファンズヘブン解放戦線の美少女兵士達。愛銃に命を預けた彼女達が、豊満な乳房を揺らしてこの戦場に馳せ参じたのである。
 引き締まった腰を蠱惑的にくねらせ、安産型の桃尻を左右に振りながら、瓦礫だらけのアスファルトを駆け抜けて行く戦乙女達。その手に握られた愛銃は絶えず火を噴き、RCや輸送車のボディに弾丸と榴弾の嵐を叩き込んでいた。

「……!?」
「あいつら、何を……!」

 市長の護送を任されたサガ、アロマ、リエリスを除く全員が、この場に駆け付けている。黒死兵すら倒せなかった彼女達が、その黒死兵よりも遥かに手強いRCに挑もうとしている光景に、ライダー達は仮面の下で焦燥を露わにしていた。

 無論、RCもただ弾丸を浴びているだけではない。取るに足らない相手であると理解しながらも、敵対者は抹殺するべきと判断していた彼は、近くにある巨大な瓦礫を軽々と持ち上げ、彼女達目掛けて投げ付けて行く。

「――散開ッ!」

 だが、戦乙女達に恐れはない。ニッテの指示に合わせて全員が散開し、瓦礫は誰にも当たることなく地面に墜落する。
 即座に廃墟の影や近くの瓦礫など、多くの遮蔽物に転がり込んだ彼女達は、RCの圧倒的なパワーに気圧されることなく弾幕を展開して行った。残弾全てを撃ち尽くす勢いで引き金を引く彼女達は、その反動で乳房と巨尻をぷるぷると揺らしている。

「おい、何をやってるんだ! ベイカー市長の救出には成功したんじゃないのか!?」
「俺達に構っていないで、早くここから逃げるんだ! そんな格好で何をしに来たッ!? 奴の攻撃に巻き込まれたらタダじゃ済まないんだぞッ!」
「言われるまでもなく逃げるわよッ! ……あんた達と一緒にねッ!」
「……!」

 解放戦線を率いるリーダーとして、ニッテはライダー達の呼び掛けに対しても猛々しく言い返していた。
 今の彼女達にとって、ライダー達は紛れもない「仲間」なのだ。このまま見殺しにすることなど、出来るはずもないのである。その勇ましさを目の当たりにしたLEPは、解放戦線の美少女達もライダー達に劣らぬ脅威になり得ると判断していた。

「約十数名の武装した民兵を捕捉。脅威と判断。これより、当該民兵の抹殺を実行する」
「……いかん! 皆、近くの遮蔽物にッ!」

 輸送車の車体上部に搭載されている、ブローニングM2重機関銃。LEPによって制御されているその銃口はヴィクトリア達を執拗に狙い、猛烈な勢いで火を噴き続けている。

「くぅうッ!? ……あのブリキ野郎、手加減というものを知らないようですねッ!」
「そりゃあ、ブリキ野郎に人間様の常識なんて通じるわけないだろ……! 皆、気を付けろ! 今さら言うことじゃないけど、アイツはブッチギリでイカれてるッ!」

 瓦礫に身を隠してその掃射を凌いでいるレオナやエヴァ達は、弾雨を掻い潜るように遮蔽物から遮蔽物へと飛び込み、輸送車とRCに接近しようとしていた。例え銃弾が頬を掠めても戦乙女達は迷うことなく、慎重かつ大胆に始祖怪人の刺客を包囲している。

「市長を救出したら、もう軍部が攻撃を躊躇することもない……! 私達がここを離れたら、すぐにでも空爆が始まる! あなた達を見捨てて私達だけで逃げるわけには行かないんだッ!」
「しかし……!」
「大丈夫っ! 市長からのお墨付きはもう貰ってるんだから! ……仮面ライダーと一緒に帰って来るんだぞ、ってね!」
「君達……!」

 ヴィクトリアとニッテの凛とした叫びに、4人のライダー達は拳を震わせる。正規軍でもない少女達が、これほど命を張っている時に――自分達は何をしているのか、と。
 その一方で、ニッテ達の一斉射撃を浴び続けていたRCは、全ての銃弾を装甲で容易く凌ぎ続けていたのだが。五月蝿い羽虫達から始末しようと動き出した途端、苦しむような仕草を見せて後退し始めてしまう。

 黒死兵を遥かに上回る防御力を持ち、ライダー達の攻撃さえ軽々と受け止めていたRCが。僅か一瞬とはいえ、ただの銃弾に怯んだのだ。

「……!? 奴が後退した……!? 俺達がどれほど攻撃しても、今までビクともしなかったはずなのに……!」
「跳弾……! 奴の装甲が跳ね返した弾丸が、そのまま後方の輸送車に命中しているんだ! いや……正確には、輸送車の車内(・・)に!」

 その光景にオルバスが瞠目する中――注意深く状況を観察していたターボが、ハッと声を張り上げる。
 RCがダメージを受けたかのような怯みを見せた時。銃弾は、ライダー達の攻撃によって装甲が陥没した箇所に命中していた。

 それ自体に効果は無いのだが――そこから跳ね返った弾丸が、RCの後方からその機体を制御している輸送車の内部へと飛び込んでいたのだ。
 繊細なコンピューターであるLEPを積んでいる車内にまで跳弾が及んだことで、RCの制御にも支障を来していたのである。

「俺達の攻撃で僅かに歪んだ装甲が、奴の計算に反した跳弾を引き起こしているんだ……! 奴は自分の装甲で、自分の首を絞めている!」
「……なるほどな。だったら俺達で、もっと歪ませてやりゃあイイってことかッ!」

 ライダー達だけでは、RCの守りを突破して本体のLEPに近付くことは出来なかった。だがニッテ達の銃弾なら、RCを擦り抜けてLEPに直接ダメージを与えることが出来るのだ。

 輸送車とRCを繋ぐコードは見た目に反して非常に強靭であり、銃弾が命中しても切断は出来ない。コードが繋がっている先の車内は本体のLEPが剥き出しになっているのだが、直接狙える距離まで接近しようにも、重機関銃の迎撃が激し過ぎて近寄れない。
 LEPも車内を直接狙われるケースを警戒しているのだろう。重機関銃の射程外からLEP本体を狙おうとする者に対しては、RCの瓦礫投擲で牽制している。その徹底された防御体勢は、まさに移動要塞そのものであった。

 だが、その完璧に見える迎撃システムにも抜け穴があった。それが、予期せぬ角度からの「跳弾」だったのである。
 LEPの弾道計算が及ばない「装甲の陥没による跳弾軌道の変化」は、LEP本体にダメージが通る確率を奇跡的に高めていたのだ。跳弾によるLEP本体への被弾。ニッテ達にその現象を狙って引き起こせるほどの技量は無いが、それでもひたすら撃ち続ければ命中率は上昇する。

 しかしニッテ達の弾薬にも限りがある以上、早期に勝負を決めなければならない。彼女達の愛銃が「弾切れ」を起こす前にその確率を僅かでも底上げするには――やはり、少しでもRCの装甲を歪ませるしかない。

「これが最後だ……! 彼女達がくれたチャンス、絶対に無駄にはしない! 皆、行くぞッ!」
「……おおッ!」

 そして今それが出来るのは、ここに居る新世代ライダー達をおいて他にない。故に彼らは、最後の力を振り絞るように走り出し――総攻撃を仕掛けるのだった。
 
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