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仮面ライダーAP

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特別編 仮面ライダー羽々斬&オリジンモンスターズ 第14話

 
前書き
◆今話の登場ライダー

鳥海穹哉(とりうみくうや)/仮面ライダーケージ
 警視庁に属する巡査長であり、真っ直ぐな正義感の持ち主でもある熱血刑事。年齢はこの日で30歳。
 ※原案はたつのこブラスター先生。

忠義(チュウギ)・ウェルフリット/仮面ライダーオルバス
 アメリカでは騎馬警官として活躍していた父の影響で警察官となった、ハーフの青年。年齢は22歳。
 ※原案はX2愛好家先生。

明日凪風香(あすなぎふうか)/仮面ライダーΛ−ⅴ(ラムダファイブ)
 若くして警部補にまで昇進しているエリート警官であり、女子高生と間違われることも多い「男の娘」でもある青年。年齢は27歳。
 ※原案はクレーエ先生。
 

 
 仲間達の勝利と全員の生還を信じ、残る3人の新世代ライダー達は、ニューススタジオを抜け出してさらに上階へと駆け登って行く。

 数十年にも及ぶ長い年月を掛けて培われ、研ぎ澄まされて来た絶対的な殺気。一段登る度にその気配を強く感じながらも、彼らは決して臆することなく階段を駆け上がる。

 階段を走り続けていた彼らはやがて、ガラス壁がある廊下へと辿り着いた。
 そこは、日向恵理を連れて逃避行していた吾郎が、シェード隊員達と交戦していた場所。「愛」に目覚めた彼が、かつての同胞達に牙を剥いた場所の一つだ。

「12年前……この廊下で、俺達の部下が命を落とした。コードネームは『ザンキ』。部下達の中でも特に好戦的な男だったが……仲間意識が強く、優秀な奴だったよ」
「よもや俺達まで、この場所で『最期』を飾ることになろうとはな。神や仏が実在するのだとしたら、そいつらほど趣味の悪い連中は居まい」

 その廊下で新世代ライダー達を待ち構えていたのは、始祖怪人達の中でも特に戦闘能力が高い精鋭の2人――カマキリザードとレッドホースマンだった。

 かつての戦いで部下が戦死した場所に訪れていた彼らは、自分達に引導を渡さんと現れた新世代ライダー達の方へと向き直り、静かに殺気の炎を燃やしている。表面的な佇まいは穏やかなものだが、その眼はすでに凶悪な闘志を宿していた。

 だが、それは怪人達に限った話ではない。
 忠義(チュウギ)・ウェルフリットが変身する仮面ライダーオルバスは、エンジンブレードを握る手を震わせ、殺意にも似た闘志を滾らせている。普段から「明朗快活なお調子者」として振る舞っていた彼は今、別人のような殺気を纏っていた。

「……そうかい。俺としちゃあ、神に感謝したいぐらいだね。てめぇだけは……俺の手でどうしてもブチ倒したかったからな」
「ほう? ……まさか、お前と再びやりあえる日が来るなんてなァ。ジャスティアドライバーの坊主」

 そんな彼の気配と、その腰に巻かれた変身ベルト「ジャスティアドライバー」に気付いたレッドホースマンは、感慨深げに薄ら笑いを浮かべていた。この2人が対峙したのは、これが初めてではなかったのである。

 ――番場惣太の主導により、幾つもの強化外骨格(パワードスーツ)を生み出した一大開発計画(ライダープロジェクト)。その成果物の一種だったジャスティアドライバーは、ソロモン72柱の悪魔に因み、72機もの試作機が開発されていた。
 齢19にして、その全てを完成させた狂気の天才女性科学者――一光(にのまえひかる)博士も、試作機を所有していた1人だった。彼女もまた、「仮面ライダーバウル」と呼ばれたライダーの1人だったのである。

 そんな彼女と、72機のジャスティアドライバーが脅威になると判断したレッドホースマンは数ヶ月前、全てのドライバーを奪うべく彼女の研究施設を襲撃したのだ。
 始祖怪人という概念を知らぬまま応戦したバウルとオルバスは辛うじて退却させることには成功したが、バウルこと光は無理が祟り、生死の境を彷徨うことになった。元々虚弱体質でもあった彼女にとっては、かなり深いダメージとなってしまったのだ。

 そして、その混乱の中で幾つかのジャスティアドライバーを奪われたオルバスは、全てのドライバーを取り返すため、レッドホースマンが指揮するノバシェードの戦士達と戦い続けていたのである。
 奪われたジャスティアドライバーの回収が完了し、光の容態が安定して快復に向かい始めたのが、約1ヶ月前。それまでの数ヶ月間、オルバスを突き動かしていたのはいつも、得体の知れない馬型怪人への憎しみであった。

「この数ヶ月で、随分とイキの良い剣士になったもんだ。あの女はそろそろくたばったか?」
「いいや……生憎ながら、もうすぐ退院さ。バウルのスーツはオルバスより遥かに頑丈なんだ、てめぇの剣如きに負けたりはしない。継戦能力には難アリだから、バテるのが少々早いってところぐらいさ。あの博士の弱点なんてよ」
「そいつを聞いて安心したぜ。あの女が要注意だと判断した俺の目に、狂いはなかったってわけだ。あれしきの攻撃でくたばるようなら、俺が恥をかくところだったぜ」

 忠義ことオルバスの殺気を真っ向から浴びてもなお、レッドホースマンは涼しげな佇まいで軽口を叩いている。その挑発的な態度に乗せられるまま、オルバスはエンジンブレードを構えていた。

「あの女が命を懸けた『意義』は……今のお前を、俺の前まで導くことだったのかも知れねぇな。掛かって来な、坊主。……いや、仮面ライダーオルバス」
「言われるまでもねぇ。……覚悟しな、始祖怪人ッ!」

 闘志と剣技を研ぎ澄まし、自分の前に辿り着いたオルバスの勇姿に、レッドホースマンは好戦的な笑みを浮かべていた。
 死に向かい、命を削ることに対する「意義」。彼はそれを、オルバスとバウルに見出しながら――愛用の両手剣を振り上げている。

「ふん……どうやら俺の他にも、コイツらに焚き付けられてしまった奴がいるようだな」

 そんな彼らの果たし合いを横目に――カマキリザードは、自身を静かに見据えている明日凪風香(あすなぎふうか)こと仮面ライダーΛ−ⅴ(ラムダファイブ)と視線を交わし、蟷螂の如き両手の刃を悠然と構えていた。

 女子高生と間違われることもある「男の娘」な風香の体躯は、外骨格を纏っている状態であっても、仮面ライダーとしてはかなり細身に見えている。
 だがカマキリザードは、その鎧を纏っている者の真の力量をすでに看破しており、決して油断出来ない相手であることを理解していた。その「慢心」が感じられぬ刃を前にしたΛ−ⅴは、背後に立つ「最も優秀な部下」に声を掛ける。

「……鳥海。ここはウェルフリットと俺に任せて、お前は屋上を目指せ。この上に多数の生命反応がある。恐らく人質は、そこに集められている」
「しかし、明日凪警部補……!」
「心配するな。俺達は勝つ。例え相手が、50年近くの戦闘経験(キャリア)を持つ始祖怪人であろうとも……それでも俺達は、『仮面ライダー』だ。不可能を可能にする力がある者達だ。それを見失うな」
「そういうわけなんで……人質の救出は頼みましたよ、穹哉さん! ありがた〜く、美味しいところ持って行っちゃってくださいッ!」
「忠義……あぁ、分かったッ!」

 Λ−ⅴとオルバスの激励に背を押され、鳥海穹哉(とりうみくうや)こと仮面ライダーケージは一気に走り出し――レッドホースマンとカマキリザードの頭上を飛び越えて行く。天井にぶつからないギリギリの高さで跳んだ彼は床を転がりながらも、すぐさま立ち上がって屋上を目指し始めていた。
 だが、2人の始祖怪人は全く意に介さず、自分達が狙いを定めた好敵手(ライバル)にのみ目を向けている。それは、彼らと相対しているライダー達も同様だった。

「……覚悟は良いな?」
「……こちらの台詞だ」

 カマキリザードとΛ−ⅴが交わした、短いやり取り。それが決戦の火蓋を切る合図となり、この階に集まった戦士達は同時に走り出して行く。
 穹哉ことケージは苛烈な剣戟の音を耳にしながらも、躊躇うことなく階段を駆け上がって行った。屋上で彼を待ち受ける「最恐」の殺気は、もうすぐそこに迫っている――。

 ◆

 オルバス達と別れ、さらに上階へと駆け上がって行く青の戦士。やがて、最後の扉を抜けて屋上に出て来た彼の視界に、広大な夜景が飛び込んで来る。

 そこは12年前、織田大道と対峙した吾郎がシェードに対する叛逆を宣言した始まりの場所であった。
 そして今、屋上の端から人々の喧騒を見下ろしている最後の始祖怪人が――ケージの方へと向き直った。

「……俺の部下だった織田大道は、最期の瞬間までシェードに忠実だった。少々、お遊びが過ぎるところもあったが……それでも、嫌いではなかったよ」
「貴様は……!」

 そこに佇んでいた野戦服姿の老兵――山城一(やましろはじめ)ことエインヘリアルは、妖しい輝きを放つ紅い双眸で、ケージを見据えていた。彼の傍らに転がっている多くの職員達は、猿轡をされたまま縛り上げられている。
 両手の小指をブレード状に変形させた彼は、その刃を素早く振るい――職員達の縄を全て断ち切ってしまうのだった。目的である「仮面ライダー」が現れた今、「餌」に過ぎない人質など不要なのだろう。

「……失せろ。巻き込まれんうちにな」
「ひ、ひぃいぃ……!」

 その冷酷な言葉と目付きに震え上がった人々は、我先にとケージの傍を通り過ぎ、下の階へと走り去って行く。その人波が過ぎ去るまで、ケージはエインヘリアルの不意打ちを警戒し、その動向を睨み続けていた。

 そして全ての人質がこの屋上から逃げ去り、静寂が辺りを包み始めた頃。エインヘリアルは静かに、逃げ惑う人々の姿を嗤う。

「助けに来たお前に対する礼すら忘れ、自分の安全しか顧みない。健全な精神は健全な肉体に宿る……とは、よく言ったものだ。惰弱な人間の身体に相応しい、実に軟弱な精神ではないか」
「まるで自分達は違う、とでも言いたげだな。他人を傷付けて行く道でなければ、生を実感することさえ叶わない貴様達が……どうして人間の価値を測れるというんだ」

 徳川清山と羽柴柳司郎に続く、組織のNo.3だった山城一ことエインヘリアル。シェードの理念を体現したかのような彼の言葉に、ケージは「人間」として反論する。

「先の大東亜戦争に教わったのだよ。闘争は人間の本能であり、使命でもある。戦わなければ奪われるのみであり、奪われぬためには奪うしかない。我々はそうして生き延びて来たのだ、あの時代からな」
「そんな時代は、もうとっくに終わっている。過ぎ去ってしまった歴史に、いつまでも囚われたままだというのなら……その悪夢を、ここで払う。そのためにも……始祖怪人、貴様を倒す!」

 そんな彼の言葉すら嘲笑い、エインヘリアルは静かに両手の刃を構えるのだった。それに呼応するかの如く、ケージも拳を構えて臨戦態勢を取る。

「そうだ……それで良い。清山に生み出された我々か。番場に作り出された貴様達か。最期の饗宴、心ゆくまで堪能しようぞ」

 ――かくして。始祖怪人の最期を彩る、真の最終決戦が幕を開けたのだった。
 
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