思い出の卵焼き
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第二章
「あなたどうして卵焼き好きなの?」
「そのことか」
「付き合ってる時からだけれど」
「それな、子供の時にな」
「子供の時?」
「ひい祖母ちゃんが作ってくれた卵焼きが美味かったんだよ」
夫は妻に話した。
「五歳の時な、それでな」
「その時からなの」
「好きなんだよ、それで祖母ちゃんもお袋もな」
自分のというのだ。
「卵焼き得意でな」
「美味しかったの」
「うちはお弁当にもよく入れてたし」
卵焼きをというのだ。
「朝もな」
「よくおかずに出ていたのね」
「だからなんだよ」
「そうなのね、子供の頃の思い出ね」
「ひい祖母ちゃんそしてな」
「お義祖母さんお義母さんが作ってくれた」
美鈴は自分から言った。
「そうした食べものだから」
「余計に好きなんだよ」
「そうなのね」
「ああ、だからこれからもな」
その卵焼きを見つつだ、順一は話した。
「卵焼き食いたいな」
「そうなのね」
「だから作ってくれるか?」
「いいわよ、ただね」
「やっぱり最近卵高いよな」
「そのことが気になるわ」
「そうだよな、早く元の値段に戻って欲しいよ」
夫は心から言った。
「こんな美味いものが食えなくなったらな」
「嫌よね」
「ああ、本当にな」
こう話してだった。
順一は今は卵焼きを食べた、そうして笑顔になった。子供の頃から食べているそれは今も美味かった。
思い出の卵焼き 完
2023・4・20
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