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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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勝利の連鎖

 
前書き
更新のペース早くしすぎて燃え尽きてきました←速いww 

 
「どういうこと?」
「なんでそんなことになるんですか?」

どういう経緯でそんな話になるのかわからずルーシィさんと俺は問いかけていた。

「エルミナの街を見ただろう?あの異常な満潮で街が海底に沈む現象は私の力のせいだ。力を抑えられなくなっている」

自身の手を見つめながら悲しそうな表情を見せる水神竜さん。彼はその表情のまま、話を続ける。

「あの街の魚たちも本来は人間だ。水中でも適応できるように魚になる魔法をかけているんだよ」
「あ!!だから私の姿を元に戻せたんですね」
「つーか、あの街の奴らはなんで出ていかねーんだ?」

グレイさんが素朴な疑問をぶつける。それに対する水神竜さんの答えは至ってシンプルなものだった。

「水神信仰さ。私が過去にしてきた数々の暴虐がどう間違ったのか、数々の奇跡として伝わった街でね」
「そんなに信仰心が強かったら水神様が一言「出てけ」っていえば・・・」
「彼らの生活を奪えというのかい?」

彼の過去の行いは自身でも悔いるほどのものであるのは伝わったけど、それは街の人からすれば違うものとして捉えられているらしい。それにどれだけ街の中が大変になっていても、彼らはそれを理解した上で生活しているのだから何も言えない。それにカシマさんなんか自分のこと魚と思ってたしね。

「それに街に人がいなくなっても何も解決しない。私の力はやがて隣街、その隣の街へと進行していく。この力は私が死なねばおさまらんのだよ」
「そんな・・・」
「他に方法はねぇのか!?」
「魔力を閉じ込めたりとか・・・」
「できない。だから私を殺してくれる者が来るのを待っていたのだ」

ここまで話してきた上でこの人は死を望んでいる。しかし俺たちは人のために行動しているこの人を殺さねばならないことに躊躇いが生まれていた。

「だが・・・その前に一つだけやらねばならぬことがある。これが最大の誤算にして、最悪の大問題なのだ」

その時の水神竜さんの顔は鬼気迫るものを感じた。それと同時に、彼が何をやろうとしているのかわからない俺たちは首をかしげる。

「やらなければならないこと?」
「それは一体何なんですか?」
「うむ」

エルザさんと俺が問いかけると彼は自身の両手を見つめながら話し始める。

「私のドラゴンとしての力はある者に奪われてしまったのだ」
「!!」

衝撃的な水神竜さんの言葉。しかしそれを聞いてすぐに心当たりがあったらしく、ナツさんたちがそれを確認する。

「力を奪われた!?」
「例のドラゴンイーターとかいう奴か」

先程の二人組はどうやらドラゴンを食べることによって滅竜の力を手に入れた第五世代の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)らしい。なんでもドラゴンを食べることでその力を自身のものにできるらしいけど、それが原因で水神竜さんも?

「いいや。奴らは私に"力"があると思い狙っている。私は死ぬ前になんとしてもあの"力"を取り戻さねばならない」
「なんでその力が必要なんですか?」
「あの力が悪用されたら、それこそ厄災と呼ばれる事態になるからだよ」

その力は失われているにも関わらず街への浸水は止められないらしい。そのことに違和感は覚えたものの、何がおかしいのかわからずスルーしてしまった。そのことを後に後悔するとも知らずに。

「ドラゴン・・・それも五神竜の一人から"力"を奪うなんて・・・」
「そんなこと可能なんですか?」
「実際にやられてしまったからね」

右手を握りしめ悔しそうにしている水神竜さん。そんな彼にハッピーたちが質問をぶつける。

「誰が奪ったの?」
「犯人はわかってるの?」
「居場所とか~」
「奴は"白魔導士"と呼ばれている。今どこにいるかはわからない」
「白魔導士?」
「ゼレフの反対みたいね」

黒魔導士と呼ばれていたゼレフは死を呼ぶとされており、恐れられていた。その真逆となるとどうなるんだろう?名前だけだと正義にしか思えない。

「私は力を取り戻しこの街を元通りにする。それまでは死ぬわけにはいかない」
「だったら俺たちがーーー」

これからするべきことは決まったと思った矢先、神殿内を舞う小さな物質に気が付く。

「なんだ?」
「神殿が・・・」
「砂に・・・」
「いや・・・灰だ!!」
「灰!?」
「それって・・・」
「さっきの奴らじゃ・・・」

その正体は灰。それには心当たりがあった俺たちはその灰の動きを見ている。

「水神様!!」
「来るな!!カラミール!!全員避難させるんだ!!」

異常事態に慌てて飛び込んでくるカラミールさん。そんな彼女に水神竜さんが指示を出すが、それよりも早く俺たちの真上に灰を足場代わりにした三人組が現れる。

「また会ったのぅ」
「2時間ぶりっちゃ」
「あいつら!!」
「一人増えてんぞ」

先程エルザさんの攻撃を受け止めた鎧の男と目付きの悪い女性。その二人の前には肩に骸骨を模した鎧を付けた仮面のようなものを付けている男が腕組をして、こちらを見下ろしている。

「話は聞かせてもらった。なるほどなるほど。"力"を奪った奴・・・白魔導士を喰えばよいのだな」
「いいや、"力"は水神竜に返す。お前たちには渡さねぇ」

不敵な笑みを浮かべる男。それに対して俺たちはすでに臨戦態勢に入っている。

「我が神殿を穢す者よ、今すぐ立ち去れ」

一触即発の俺たちの間に割って入ったのは水神竜さん。彼は地面から水を吹き出させると、それをドラゴンイーターたちへと向けて放つ。
しかし仮面の男は軽く手を振っただけなのに、その水を灰へと変えてしまった。

「水が灰に!!」
「貴様はもはや水神竜ではない。喰うに値せぬ」

そう言うと水神竜さんへ灰が纏わりつき動けなくなってしまう。それはまるでロープのようで、彼を締め付けているようにも見える。

「水神様!!」
「ルーシィ!!シリル!!ウェンディ!!彼らを頼む!!」
「「はい!!」」
「わかった!!」

水神竜さんたちを守るように俺たち三人は前に出る。相手が三人なこともあり、こちらもナツさんたち三人が前へと出た。

「灰って燃やしたらどうなるんだ?」
「さぁな。もっと灰になるんじゃねーか」
「試してみるか!!ここなら炎も使えるしな!!」

勢いよく飛び出す三人。頼りになる三人が飛び出しことで俺たちは勝利を確信していたが、予想外の敵の実力に苦戦を強いられることになるとは思いもしなかった。

















第三者side

評議院から列車で2時間ほど揺れていた二人。彼らは目的地に着いたことを確認すると、最低限の持ち物だけを入れたカバンを手に取り駅へと降りる。その地に着いた途端、赤髪の青年の額から汗が溢れ落ちた。

「この暑さ・・・間違いなくこの間の奴らだな」

記憶にある気温にしかめっ面をする彼に対し、黒装束の男は周囲を軽く見渡すと、何かに気が付いたのかすぐに歩き始める。

「見つけたのか?」
「姿はわからん。だが、三人組の気配はする」
「三人・・・ならほぼ間違いないねぇ」

その時の二人の表情は類似していた。互いに笑みを浮かべ言葉を交わすことなく歩を進める両者は、敵の姿を確認していないにも関わらずすでに戦いが始まっているかのような、異常なまでの集中力を見せていた。


















シリルside

激しくぶつかり合う二人の剣。グレイさんとナツさんは敵を押し込んでいたこともありここからでは視認できないところに行ってしまい、俺たちはエルザさんと女剣士の戦いの流れ弾が水神竜さんたちに当たらないように対処している。

「おのれ・・・強いのぅ」
「仲間を守るための剣に弱さはいらない」

エルザさんとの戦いを楽しんでいるようにも見える女剣士。いや、厳密には剣を持っていないため剣士にはならないのかな?でも攻撃は剣になった腕を使ってるし・・・よくわからん。

「違うおのれも見てみたい」

俺が余計なことに頭を悩ませていると彼女は距離が離れているにも関わらず突然腕を振るう。それに気が付いたエルザさんはすぐさま腕でガードをしていたが、何がしたかったのか俺たちから見てもわからない。

「衝撃波か!?しかし・・・////」

エルザさんも彼女が何をしようとしたのかわからなかったようですぐに反撃しようとしていたが、突然彼女は顔を赤らめ、剣を投げ捨て胸を隠すような素振りを見せる。

「ちょ・・・ちょっと待て!!なんだこの格好は!?み・・・水着じゃないか!!」
「エルザさん?」
「??」
「さっきからずっと水着でしょ?」

突然のエルザさんの行動に意味がわからずにいる。しかし彼女は顔をトマトのようにしたまま身を小さくしている。

「よ・・・よせ・・・見るな・・・恥ずかしい・・・」
「どうしたのエルザ!?」
「なになに~?」
「何か様子が変だわ」
「さぁて、続きをやろうか」

普段の彼女とはまるで違うその様子に違和感を覚えていた俺たち。その姿を楽しんでいるかのような女剣士がそう言うと、彼女は手を握り合わせ涙目になっている。

「た・・・助けて!!殺さないで!!」
「!!」
「はっ!?」
「エルザさん!?」
「な・・・」

今まで彼女から聞いたことがない発言が飛び出し耳を疑う。その言葉を待ち望んでいたのか、剣士は獲物を見るような目で彼女を見下ろす。

「助けてくださいキリア様であろう?」
「た・・・助けてください・・・キリア様・・・お願いします!!」
「エルザ・・・?」

何がなんだかわからずこの異様な光景をただ見ている俺たちに対し、剣士は不敵な笑みを浮かべながら説明した。

「斬ったのさ、"強さ"を」
「"強さ"を・・・斬った?」

彼女の言葉の意味がわからず頭の中がグルグルしているその間にもエルザさんは恐怖に怯えるように頭を抱えながら彼女へ許しを請おうとしている。

「ふふ、屈強な剣士もこうなってしまえば可愛いものよのぅ」
「エルザさん!!しっかりしてください!!」
「エルザさん!!」

懸命に彼女に呼び掛けるもののそれは全然届いていない。その間も女剣士は彼女の頭を優しく叩きながら強者のような振る舞いをしていた。

「おのれ・・・頭が高いんじゃないかのぅ?」

そう言うとエルザさんの頭を踏みつけ地に伏せさせる剣士。それを見た瞬間、俺たちの怒りは沸点に達した。

「エルザさん!!」
「ウェンディ!!待って!!」
「なんで!?シリ・・・」

ドラゴンフォースを解放して戦いに出ようとしたウェンディを制止する。やる気を削がれた形になった彼女は不満そうにこちらを見ていたが、すぐに俺の顔を見てその感情を抑えてくれた。

「ここは俺が出る」

ドラゴンフォースを解放している俺を見て言葉を失っている少女。たぶん今の俺は怒りが頂点に上りすぎてすごい顔をしてるんだと思うけど、そんなことは気にしていられない。

「水竜の・・・」

身体に水を纏わせ地面を蹴る。そのまま回転を加えながら突進を試みるが、敵はそれに気が付いたらしく飛び上がり回避する。

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)!?こんなチビが?」
「その油断が命取りだよな」
「!!」

相手が飛び上がったタイミングで地面を蹴りその上を取る。本当は下に打ち落としたいところだけど、いまだに泣き崩れているエルザさんがいるためそれは却下。

「水竜の鉤爪!!」
「くっ!!」

蹴りを放ち相手は壁の方へと飛ばされるが空中で綺麗な宙返りを見せ地面に平然と着地。やはりこいつ、そこそこ強い。

「しかも水!!こいつを喰らえば水神竜などいらんかもな!!」

彼女たちの狙いはドラゴンを食べること。それはどうやら滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)にも適応されるらしく、狂気に満ちた表情でこちらへと向かってくる。

「これでどうじゃ!?」

素早い攻撃で俺の首もとを狙ってくる剣士。でも・・・

「おっそ」
「!!」

この間のステラ王国で戦ったあの男の方がもっと速かった。

「刃竜双破斬!!」

両腕を剣のようにして同時に振り下ろしてくる。その威力も今まで戦ってきた相手の中でも上位に入るだろう。それでも・・・

「その程度じゃ俺には当たらない」
「なっ・・・」

もっと速くて威力のある技を・・・片手で平然と打ち込んできた氷の神。それに比べたら大人と子供の差ほどある。

「刃竜裂破斬!!」

今度は下から上へのアッパーパンチにも似た攻撃。しかしそれを俺は右手に魔力を纏わせると、跳ね返すように叩きつける。

「ぐっ・・・」

その衝撃で地面に亀裂が走った。それだけで相手の魔力の高さはよくわかるが、俺の真似事の返し魔法(カウンター)でも対処できるのではやはり弱い。

「ならば!!」

それでも諦めずに攻撃を繰り出してくるその姿には感服する。彼女は腕を振るうと衝撃波でこちらへの攻撃を試みたようだ。

「刃竜覇王剣!!」

これまでの最高威力といって差し支えない攻撃。だがその攻撃は俺はすでにジャンプでいない場所を通過していく。

「は?」

相手の動きで次に来る攻撃は予測ができた。威力があるがゆえに事前動作が大きいから見分けられる・・・これがあの時天使に簡単に行動を見極められた原因なのかもな。

「こうなれば奥の手じゃ!!刃竜の裂哮!!」

そう言った彼女は咆哮を放った。しかしそれはただの咆哮ではない。四方八方を剣が飛んできたかのような跡をつけるほどの鋭い攻撃。全方向にいる敵への無差別攻撃であることはすぐにわかった。

「ならーーー」
















ウェンディside

「刃竜の裂哮!!」

シリルと対峙する女剣士さんのブレス。しかしそれは彼だけに向けられたものではありませんでした。

「きゃっ!!」
「何これ!?」

彼女の身体の向きとは逆方向にいた私たちにも・・・それどころか至る方向へと飛んでくる衝撃波。それから身を守ろうとした私でしたが、あることに気が付きました。

「ひぃっ!!」

その場にうずくまっているエルザさん。彼女はその攻撃を避けることも身を守るために動くこともできないようでただ小さくうずくまることしかできてません。

「エルザさん!!」
「ウェンディ!?」
「危ないよ~!!」

エルザさんはあの女の人に近いところにいる。もし攻撃を受けたらひとたまりもない。そう思った時、私の身体は動いていました。

「伏せて!!」
「きゃっ!!」

エルザさんに覆い被さるようにして彼女を守ります。しばらく動けずにいると、音が鳴り止んだことで顔をゆっくりとあげます。すると、私たちの周りを守るようにあるものができていました。

水竜の球体(フェアリースフィア)

私たちを守っていたのはシリルが生み出した水の球体。それは私たちだけではなくルーシィさんや水神竜さんたち全員をしっかりと囲っていました。

「バカな・・・こんなことが・・・」

そのことにひどく驚いている剣士。そんな彼女にシリルは水竜の球体(フェアリースフィア)を解除して歩み寄っていきます。



















シリルside

「バカな・・・ワシが負けるはずが・・・」

全ての魔法を防がれたことにより彼女は震えていた。そんな彼女に俺は歩み寄っていくと、彼女は恐怖心が勝ったのか後ずさりしていく。

「あなたは確かに強いです。以前の俺なら歯が立たなかったかもしれない。ですけど・・・」

アルバレスとの戦いは自分の意志の弱さが最大の敵(ティオス)を生み出したことを理解した。最初の天使との戦いでまだまだ力が足りないことを理解した。そして俺を狙った天使たちとの戦いで一人ではまだ戦えないことを理解した。

「俺は倒さなきゃならない奴がいる。それに勝つためには・・・」

右手に魔力を込めて一気に距離を詰める。それに気が付いた彼女は反応しようとしたが、それよりも速く・・・

「お前なんかに負けていられねぇ!!」

彼女の腹部に突き刺さった。

「あ・・・あぁ・・・」

天井にぶち当たった彼女はそのまま地面へと落下する。キャッチしようと思ったけど目測を誤ったのは内緒です。

「あいつらに勝つまで、俺たちは絶対負けねぇ」

















第三者side

「喰わずに食卓から下げることを許してほしい」

海すらも灰にしようとしている魔法を放つスカリオンに対抗していたグレイ。しかし彼はスカリオンが放った魔法に飲み込まれそうになる。

「がはっ・・・」

自身の身体が灰になっていく感覚。それに抗おうにも自らの意志ではどうしようもない。

「あ・・・あぁ・・・」

意識が途絶えそうになるそんな中、突如流れが変わる出来事が起きた。

ドォンッ

水中に響き渡る鈍い音。それが起きたと同時に水の流れが一気に変わる。

「なっ・・・これは・・・」

それによりスカリオンが操っていた灰がチリジリになってしまった。それにより灰になりかけていたグレイの身体が元通りになる。

「なるほど、そういう魔法か」

一度攻撃を受けたことにより氷の魔導士は全ての構造を理解した。感づかれた仮面の男は新たな攻撃を放とうとするが、それよりも早くグレイが間合いに入る。

「灰にして俺をどこかに飛ばす魔法か。だが、灰なんかじゃ決定打にはならねぇよな」
「こいつ・・・」

至近距離にいるグレイを再び灰にしようと試みたものの、それよりも早く青年の魔法が男を捉えた。

「氷魔・零ノ破拳!!」

両腕に手甲(ガントレット)を造形したグレイは目にも止まらぬ連続攻撃をスカリオンへと打ち込む。彼のその一撃を受けた男は意識を失っていた。

「ったく・・・また助けられちまったみてーだな」

彼を救う振動があったのは神殿の方。そのことに気が付いた彼は悔しく思いつつも、次の行動へと移すため意識を失っている男を掴み、水上へと上がっていった。


















「お・・・おお・・・」

一方こちらは船の上でダウンしているナツ。乗り物酔いにより彼は目を回していたが、ここでもある変化が起きていた。

「む。これは・・・」

その異変に真っ先に気付いたのはマッドモール。彼は船が崩れていることに気が付き、慌てていた。

「まさかスカリオンがやられたっちゃ!?」

仲間の敗北によりその船はみるみる本来の形・・・灰となって消えていく。そうなると彼にとってこの場は非常に危険な場所へとなってしまう。

「鎧竜は重いからすぐに沈んでしまうっちゃ!!」

物理的な攻撃に対して絶対的な防御力を誇る彼だったが、鎧は必然的に重くなる。ただ、人間である限り水に浮かぶことはできないためこの広い海のど真ん中ではいかようにも手の施しようがないことは言う迄もない。

ガシッ

ただし、一部例外がいることも忘れてはならない。

「なっ・・・」

船が完全に灰となり後は水に沈むだけと思われていたマッドモール。そんな彼の腕を掴んだのは火の竜だった。

「さっきはずりー手を使ってくれたな」
「お前・・・なんで浮いて・・・」

水上に立っているナツ。しかしなぜ彼がそんなことをできているのかわからず彼は困惑していると、すぐに足元に違和感があることに気が付いた。

「足から・・・炎を・・・」

足から火を出すことによりそれをブースターとして水上に浮いている彼に驚愕した。ナツはうまくバランスを取りながら彼を持ち上げると、自らの腕に炎を纏わせていく。

「どんなすげぇ鎧だろうが、熱さには耐えられるかな?」

不敵な笑みを浮かべる火の竜に対し、腕を掴まれている男はこれまた笑みで返す。

「無駄なことっちゃ、鎧竜には耐熱性能もあるっちゃ」
「それを越える熱っちゃー!!」

一気に炎の熱を上げていくことで周囲の水が乾き始めてることに気が付く。しかし時すでに遅し。

「燃えろぉ!!炎竜王の煉獄!!」
「ちゃあああああ!!」

宙に打ち上げられた鎧の竜。彼はそのまま海へと叩きつけられると、下から浮いてきた氷の足場に持ち上げられながら水上へと浮上する。

「おう、やったみてーだな」
「お前もな」

勝利を納めた二人の妖精は笑みを浮かべる。彼らは氷の上に乗ると次に取るべき行動を考えるために歩み寄るのだった。
















その頃、イシュガル大陸のとある街では予想外の出来事が起きていた。

「ば・・・バカな・・・」
「私たちを相手に・・・」
「たった一人で・・・」

地に伏している三人の人物。彼らの背中には翼があるのだが、その翼さえもボロボロになるほどのダメージを浮けている彼らは今にも事切れそうになっていた。

「さすがだねぇ。まさかとは思ってたが、一人で三人とも倒せるとは・・・」

その天使たちの前に立っていた黒装束の男に拍手を送る赤髪の青年。呼吸一つ・・・いや、服装すら乱れることもなく脅威の力を持つ存在を倒した男はあろうことか大きなアクビをしてみせた。

「こんなのにスプリガンの弟たちは負けたのか?興醒めだな」

目の前にいる三人・・・彼らは以前ナツたちが討伐に向かいなす統べなくやられた天使たちだった。そんな存在に対し、黒装束の人物はカミューニの手を借りることなく勝利を納めてしまったのだ。

「おめぇがおかしいんだよ、どう考えても」
「貴様たちが弱すぎるだけだと思うが・・・そういうことにしておいてやる」

役割を終えた男の横を通りすぎ倒れている天使たちの前にしゃがむカミューニ。彼はリーダー格である炎のような髪をした人物のそれを掴むと、ヤンキーのように顔を近づける。

「さぁて、消える前に答えてもらおうか。俺たちの質問にな」

そう言った彼の表情は悪魔のそれに似ていたが、後ろにいた人物はそれを言うことはせず、近くの木の根元に座ると彼の用件が終わるまで静かに目を閉じるのだった。







 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
ここでシリルたちが圧勝を納めるためにグレイやナツにリハビリを兼ねてドラゴンクライをやった感じですね。
本当はエルザvsキリアをやってもよかったのですが、この先で二人が対峙できる場面があるので今回はパスです。 
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