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パンの頭

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第三章

「受けるならその者と末永くな」
「仲良くですね」
「過ごすのだ、いいな」
「わかりました」
「全く、告白されるというのはどんなものだろうな」
 ゼウスは常に言い寄る者としてふと思った。
「わしも知りたいものだ」
「ですが浮気は駄目ですよ」
「ええい、今はしておらん」
 またヘラに応えた、だがパンの相談については彼に任せた。するとパンは迷うことその場でだった。
 ピテュスに笑顔で応えた、そうして交際をはじめたが。
 ピテュスは松の木のニンフであり彼に松の枝で冠を作ってだった。
 それをプレゼントした、パンはその冠を大喜びで身に着けて周りにもみせびらかした、それは森や山でだけでなく。
 オリンポスにおいてもだった、ゼウスにも見せたが。
「その冠大事にせよ」
「ピテュスからの贈りものだからですね」
「愛する者から貰ったならだ」
 それならばというのだ。
「是非だ」
「大事にすることですか」
「そうだ、そこには心があるからな」 
 だからだというのだ。
「そうしたものは何があってもな」
「大事にすることですね」
「そうであってこそだ」 
 まさにというのだ。
「誰かを愛することが出来るのだ」
「愛する人からの贈りものを大事に出来てこそ」
「そういうことだ、ではいいな」
「はい、これからはです」
「その冠を大事にするな」
「常に身に着けていきます」
 パンはゼウスに誓った、そうしてだった。
 その冠を常に着けた、そのうえで。
「僕達は何時までもだよ」
「一緒ですか」
「そう、何があってもね」 
 共にいるピテュスに話した。
「離れないよ、いいね」
「はい、それでは」
「ずっと一緒にいよう」
 冠を被ったままピテュスを抱き締めた、彼女も応えて抱き返した。
 以後パンは遊ぶこともしたがそれでもピテュスを大事にし続けた、そしてその頭には松の枝で作った冠があった。それは今もでありギリシアの森や山の中を楽しそうに駆け回る牧神の頭にはそれがある。神話の頃からの愛は今も続いている。


パンの頭   完


                   2022・11・16 
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