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第一章
見込んでのスカウト
村上卯夫は一家で経営している食堂で働いている、高校を出て専門学校を経て調理師免許を習得してから本格的に働いている。
色黒で長方形の顔に小さ目の人懐っこい目と大きな愛嬌のある口を持ち背は一七〇位でしっかりした体格であり黒髪を真ん中で分けている。
彼はよく近所の百貨店に行く、実家でもある店はオフィス街にあり繁盛している。昼は食堂で夜は居酒屋になっている。
百貨店は色々なものを買うが。
地下の試食コーナーでよくその試食品を食べるがそれを作っている田中晴香色白で奇麗な奥二重のアーモンド形の顔と愛嬌のある口元に大きな耳を持つ肩までの短い黒髪を整えた一六〇位の背でスタイルのいい彼女にだ。
試食品を食べつつだ、彼は笑顔で言った。
「今日も美味しいよ」
「そうですか、それは何よりです」
晴香は村上の言葉に笑顔で応えるのが常だった。
「今回もです」
「一生懸命作ったんだ」
「はい、それで美味しいなら」
「そうなんだね」
「私も嬉しいです」
「それは何よりだよ」
こうした話をするのが常だった、だが。
ある日だ、常連の客が村上に昼食の時カウンターでこんなことを言った。
「百貨店潰れるらしいよ」
「ここの近所のですか」
「そう、屑鉄百貨店ね」
まさに晴香が勤務している店だった。
「あそこの会長が有名なアホでね」
「邪魔口とかいいましたね」
「あいつが赤字ばかりのテーマパークにご執心で」
「ああ、年間千億単位の赤字出してる」
「それであそこ鉄道会社だけれど」
「線路とテーマパーク以外はですか」
「もう関連企業全部潰すつもりらしくて」
それでというのだ。
「劇場やら球団やら他のテーママーク潰して」
「百貨店もですか」
「全部潰すって決めてね」
「あそこの百貨店もですか」
「潰して赤字減らすらしいよ」
「いや、肝心の念千億単位で赤字出す」
村上はその話を聞いて言った。
「テーマパーク何とかしないと」
「だからアホだから」
客はそれでと答えた。
「ホテルも旅行会社もかなりだよ」
「潰して」
「他の分野で赤字をね、大抵の関連企業は何とか黒字だけれど」
「赤字の元だけ残すんですか」
「それで社員さんは全員リストラだよ」
「無茶苦茶やってますね」
「ああ、あのグループも終わりだよ」
客は鰯の味噌煮込み定食を食べつつ言った、村上はその話を聞いてだった。
百貨店に行って晴香に話を聞くとこう言われた。
「それで私も今は」
「再就職先探してるんだ」
「どの人も探してます」
「会社として探してないんだ」
「もう何処でも行け、知らないですね」
そんな態度だというのだ。
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