本物の出来損ない

「何でも碌に働かかないでお酒とギャンブルと女遊びばかりで」
「そんな人なのね」
「ご家族に暴力ばかり振るってって評判よ」
「そういう人なのね、本当に出来損ないね」
　母は茉祐の話を聞いて吐き捨てる様に言った。
「ああした人こそがなのよ」
「出来損ないなのね」
「そうよ、だからね」
　美海にあらためて言った。
「あんたは真面目に何でもしているからね」
「いいのね」
「そうよ、ただ二人共あんな人にはならないで」
　それでというのだった。
「お付き合いもしたら駄目よ」
「それはどうしてなの？」
「何されるかわからないし自分もそうなるかも知れないからよ」
　だからだというのだ。
「変な影響受けてね」
「だからなのね」
「そう、ああした人とはね」
「お付き合いしたら駄目なのね」
「そうよ、何があってもね」
　こう言うのだった、そして。
　暫くしてだ、茉祐は玲と美海に家で話した。
「スーパーで暴れてた人警察に捕まったわ」
「そうなのね」
　母はその話に当然という顔で話した。
「どうせ暴力沙汰でしょ」
「クラスメイトの妹さん殴って大怪我させて」
「通報されたのね」
「そうなったわ、それで離婚して」　
　茉祐はさらに話した。
「刑務所に入ってるわ、クラスメイトの娘達はお母さんと一緒にお母さんの実家に入って」
「そこで暮らすのね」
「そうなったわ、実家の人達はいい人達らしいから」
「じゃあその娘達は安心ね」
「ええ、けれど捕まっても反省してないらしいわ」
　その父親はというのだ。
「全くね」
「そうなのね、本当の出来損ないね」
　母はあらためて思った、それでまた娘達に言った。
「いいわね、こうした人がなのよ」
「わかったわ、出来損ないの人ってどういう人か」
「そういう人なのね」　　
　茉祐だけでなく美海も頷いた、そしてだった。
　美海はそれからも真面目に生きていった、そして茉祐と共に一般社会で幸せに過ごしていった。誰も彼女を出来損ないと言わなかった。普通に真面目な人だと言った。


本物の出来損ない　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０２３・３・１６