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エターナルトラベラー

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外典 【BORUTO】

 
前書き
気が付けば二年ほど放置していました。 

 
「はっ…え…?…て、ちっちゃ」

高熱でだるい体に鞭打って手を目の前で握りしめる。

「…こうねつ…?」

その子は二歳ほどの女の子でここ数日高熱を出して自宅のベッドで寝込んでいた。

「あ、モンテ起きたの。体の調子はどう?」

そう黒髪の優しそうな雰囲気を纏った女性がモンテの部屋に入って来てそのひんやりとした手のひらをモンテの額に乗せた。

「だ、だいじょうぶ…です」

その冷たい手のひらが気持ちよく、それだけを言ってベッドで横たわるモンテ。

「熱はだいぶ下がったわね。あまり心配させないでね」

母親だろう誰かはそう言ってほほ笑んだ。

少女…モンテは冷やされた頭で考える。

知らない天井。知らない人間。…いや、わたしのお母さんだ。

あれ、?お母さん…?

知らないお母さん?とモンテは考える。

知らない天井、縮んだ体、知らない人間。

いや、知っている天井、自分の体、お母さん。

色々な事が合わさって理解した。

どうやら自分は生まれ変わったらしい。

前世の郷愁は有るが、それで今の両親?を悲しませる訳にはいかない。

モンテは自分が子供である事を受け入れた。

母親に抱っこされて見る街の景色は昭和後期と言った感じで新しさと古めかしさが同居している。

崖の上には高層のビルの建築が始まっていて近代化に拍車を掛けていた。

そんなまるで現代を思わせる世界にただ一つ大きな違いがあるとすれば…

「に…ニンジャっ!」

街の屋根伝いにシュバっと移動する集団。

「そうよ。モンテも将来は忍者になるのよ」

な、なんだってーっ!

どうやらこの世界は忍者と呼ばれる武力集団が居るようだった。

そう言えば、あの大きな崖に刻まれた顔岩。ハリウッドだと思っていたのだけど、もしかしてNARUTO!!って事はここは木ノ葉の里っ!?

モンテは前前世ではドラゴンボールファンだった。

しかし同時にNARUTOの事も原作漫画くらいは読んでいたのだ。

1、2、3、4、5、6、7………なな?

左から、柱間、扉間、ヒルゼン、ミナト、綱手、カカシ?……ナルト?

一番右の顔岩に見える頬の三本筋。

もっともっとと目を凝らすモンテ。

「あら、凄いわ…モンテ、その歳で白眼を使えるなんて」

「びゃくがんっ!!」

クラッとした。

日向モンテ。

どうやら自分は原作の終わったNARUTOの世界に転生したようだ。



……

………

再び三日ほど寝込んだモンテ。

そして再確認。

モンテはどうやら日向家の女児として生まれ変わった様だ。

そして先日の火事場のクソ力的な何かで白眼にも目覚めたらしい。

「しかし何で白眼(笑)…普通こういう時は写輪眼でしょうっ!」

ベッドの上でグッと手を握るモンテ。

「はっ!?」

殺気に振り返るとビキビキと経絡系を吹き上がらせた白眼で睨む母。

「白眼、かっこいいわよね?」

「イエス、まみゅっ!」

かみました。

お母さま、怖いです。プルプル。

モンテの母は修行バカな一面を持っているようで、三歳にもなると修行の日々が始まる。

「うぅ…わたし、来世は修行とは関係ない人生を送るはずだったのに…」

「モンテちゃん、余裕そうね」

「い、いえっ!せいいっぱいでしゅっ!」

かみまみた。

しかしそうっ!NARUTOと言えば忍術、それも影分身である。

モンテはひゃっほいと勢い込んで十字に印を組み上げた。

「影分身の術」

あれ?

失敗すら現れない。

「いやいやいや、うん。失敗しただけ。そう影分身って高等忍術だし」

しかしどれだけ修行しようと簡単な忍術すら使える気配がない。

「…モンテちゃんには遁術、幻術の才能が無いわね」

と母が言う。

「う…うわーーん…」

『ぐわははははっ!こいつは最高だなっ!』

いきなりモンテの中からモンテに直接響く声。

『悟空さん、笑いすぎっ!』

『柔拳の才能もない上に遁術も幻術も使えないとはな』

がははと笑うのはモンテに封じられている四尾の孫悟空だ。

モンテはどうして自分に四尾が封じられているのか疑問に思ったが、原作は終了しているのだしと考える事を止めた。

それに、どうにもこの孫悟空は若い。

若いと言うかまだ子供と言う感じだ。

四尾の言う様にモンテには日向家特有の柔拳の才能も無かった。

魂にしみついた剛拳の気質の所為で柔拳とは相性が悪かったのである。

『だが、まぁモンテには必要ないだろう。剛拳の才能はあるのだし、かめはめ波とかあるじゃねーか』

『うう…』

日向家のチャクラ放出の才能は受け継いだようで、チャクラを撃ちだす技術や、圧縮して放つ攻撃はうまかった。

『そうじゃないのっ!印を組んで術を出す事に憧れているのよっ!』

『まぁ才能がねぇんだししょうがねぇ。それに大概の忍術よりお前の気弾はつえーじゃねえか』

気円斬とかな、と四尾が言う。

『そうなんだけど…なぜか母様たちには通じないのよね』

『あいつらは大概化け物だ』

『化け物に化け物と言われるうちの両親っていったい…』

前世覚醒者であるモンテは、前世で覚えた技術の幾つかを使うことが出来た。

その一つが気円斬やかめはめ波だ。

しかしそれを持ってしても両親たちには軽くあしらわれる。

そんな生活を続け、穏やかに時間が過ぎて行き、今日、わたしこと日向モンテは木ノ葉の里のアカデミー忍術科へと入学する。

木ノ葉の里のアカデミーの忍術科の入学式。

グラウンドに並んだ新入生およそ30人。

その後ろに親御さんが並び、目の前の壇上には七代目火影であるうずまきナルトが登壇し、祝辞を述べている。

その左右にはアカデミーの教員であるうみのイルカや油女シノ、みたらしアンコなどが並んでいる。

七代目火影、うずまきナルト。…もうおじさんね。

NARUTOと言えば少年から始まり青年で終わる。

その主人公がもう二児の父親…

「あれ?ボルトは…?」

ボルトと言うのはナルトの息子で、モンテとは同い年だった。

小さい頃から親どうしが知り合いのため顔を合わせる機会も多い。

そんな彼の姿が見えない。

火影の息子だし当然忍術科だと思っていたのだけれど…

とそんな時、空中を待って火影岩に突き刺さる雷車。

雷車とは木ノ葉の里の近代化で取り入れられた電気エネルギーで動く鉄道である。

それは木ノ葉の里をぐるりと回る様に運転し、生活の足に活用されていた。

その雷車が火影岩に突き刺さる惨事を引き起こしたのが…

「ボルト…」

入学式に間に合わないと急いだ結果、かなりセンセーショナルな登場だった。


結局ボルトは罰として一週間の自宅謹慎となったようだ。


アカデミーでの忍術クラスの生徒はおよそ30人。

その教室は段を上がる様に席が設けられていてどこに座っても黒板が良く見えるように設計されている。

登校初日、モンテは気だるそうに席に着いた。

「おはよう、モンテ」

そんなモンテに声を掛けたのはクラスで一番ふくよかな女性だった。

なぜか手にガルBのポテトチップスの袋を持っている。

「チョウチョウ、おはよう」

秋道チョウチョウ。

褐色な肌と太った体。しかしその巨体がチャーミングに纏まっている。

「ちょっと、元気が足りないんですけど」

「お、どうした?何かあったか?」

「ワサビー、聞いてよ。モンテがやる気ないみたいなのよ」

少女の名前は伊豆野ワサビ。

「そんなのいつもの事だろう」

切れ長の瞳孔にツンツンとしたショートヘア。腰からアクセサリーだろうか猫のような尻尾が揺れている。

「おはよう、モンテ。久しぶり」

「あー…だね。おはよう、ワサビ」

この三人、とある共通点で小さい頃からの知り合いだった。

「あ、そうだ。あちしの親友を紹介するね」

そう言ったチョウチョウは振り向いて手を上げた。

「おーい、サラダー」

「ちょっとチョウチョウ、恥ずかしいでしょうっ!」

むすっとした表情で駆けつけて来たのは赤い眼鏡をかけた少女だ。

「この子はうちはサラダ。あちしの親友」

とサラダの肩を抱いて前に押し出した。

「よ、よろしく」

その黒い瞳が眼鏡の奥から覗く。

「く…これがうちはか…」

羨ましいとモンテ。

「ちょっとチョウチョウこの子大丈夫なの?」

「大丈夫大丈夫、だいたいいつもこんなだからモンテは」

何処が大丈夫なのか分からない。

「まって、日向モンテってもしかして日向宗家の…」

「あー…まぁね。だけど、日向家を継ぐのはネンお兄ちゃんだから」

ネンお兄ちゃんとは日向ネンと言い、モンテの一つ上の分家出身の少年だ。

日向の柔拳を使えないモンテよりネンが日向宗家を継ぐ事で決定している。

「お兄ちゃん、じゃなくて旦那様、でしょ?」

そうチョウチョウがからかう。

「え、そうなの?」

とサラダ。

「んー。まぁ一応婚約者って事になってるね」

「そんなんで良いの?」

「まぁ、婚約者でもないとわたし結婚出来なそうだからなぁ」

モンテが笑って答えた。

その答えに政略的な意味が含まれているとサラダは気が付いただろう。

「でもそんなに仲悪くないんだぜ」

そうワサビも腕を組んで言った。

「それにぃ、婚約と言ってもモンテが捨てられる事もあるのだし」

「ぬなっ!!」

チョウチョウの言葉にぐっとこらえるモンテ。

「あー…でもあれは大丈夫じゃねぇか?ネン兄さん生真面目そうだし」

ワサビが訳知り顔で一人頷いている。

「あー、だね。あれは浮気はしないタイプだわ」

チョウチョウも頷いた。

「あなたも大変ね」

「賑やかなクラスだよね…はぁ」

ボルトが一週間遅れで合流し、本格的に授業がスタート。

体を動かすのは得意だが、忍術の授業は赤点で、力学のような座学もモンテには難しい。


座学の成績が芳しくないモンテはシノ先生から大量の宿題を出される事もしょっちゅうだ。

家の自室で教科書とにらめっこして問題を解いているモンテ。

「だーーーっ!面倒くさいーーーっ!」

「おねえちゃん、どうしたの?」

モンテの声にてとてとと入室して来るのは三歳ほどの子供だ。

「ミツキー…おねえちゃんを抱きしめて」

「え、あ、…うん」

ぎゅっと抱き着いたのは日向ミツキ。モンテの腹違いの弟である。

ミツキが宗家当主候補に選ばれなかったのは単純に先天的な白眼を持っていないからだ。

「しゅくだい、やっているの?」

「うん、でも全然やる気でなくて」

何だかんだ理由を付けて逃げるモンテ。

「でもぼく、ばかなおねえちゃんはいやだな」

「ぐは」

その後一生懸命机に向かうモンテの姿があった。


ようやく宿題を片付けて居間へと向かう。

「あれ、ボルト?」

「あ、モンテ。ちょとハナビねーちゃんをどうにかしてくれってばさ」

居間を左右に眺める。

「ちょっとボルトっ」

ナルトとヒアシは酒を飲んでいるのか畳に倒れ、ボルトはハナビに絡まれていた。

ひまわりはお手伝いさんと遊んでいて、ミツキは母が部屋へと連れて行ったのだろう。

「…無理」

ハナビも酔っぱらっていてこうなった彼女には近づかないとモンテは心に決めている。

軽く夕食をつまみ終わるとどうやらボルトはハナビの拘束から抜け出せたようだ。

縁側で腰を下ろしてツキを見上げているボルト。

「どうしたボルト。そんなに落ち込んで」

と聞いたモンテにボルトはバツの悪い表情を浮かべた。

「オレさ。白眼を開眼したって…バカみてーに騒いでさ」

聞けば、最近ボルトの右目が特殊なチャクラを見れるようになったらしい。

それで白眼を開眼したと意気込んだ所、修行も努力もなく白眼を使える訳が無いとナルトに一蹴されたらしい。

だがもしかしたらとヒアシを訪ねて来た結果、白眼を開眼した様子は無いとの事だった。

「あーあ、オレってばかっこ悪いってばさ」

腕を頭の上に組んでばたりと倒れるボルト。

「と言うかさ、そもそもそれって本当に白眼だった訳?」

「どう言う事だよ」

そう言って起き上がるボルト。

「白眼を使うと目元回りの経絡系が浮き上がるわ。だけど眼球が薄灰色に染まったりしないわよ」

「あ…」

ボルトの話を聞いたモンテは白眼ではない可能性を示唆する。

「じゃあやっぱり…」

「とは言え、どんな瞳術であれ自在に使えないんじゃね」

「かー…容赦ねぇな」

ボルトはバタンと再び倒れる。

「だけど、ありがとうよ」

「うん」

と言ってニカと笑う。

「それに、白眼を羨ましがるなってボルトは変わってるね」

「どうしてだってばさ」

ゴロンと向きを変えて問いかけるボルト。

「どうせなら写輪眼に憧れなさいよ。だって白眼ってちょっと遠くのものが見えたり頑張れば相手の経絡系が見えるだけで、物を燃やしたり幻術を掛けれたりするわけじゃ無いんだよ?」

弱っちいわよねと言うモンテ。

「も、モンテ…?その…それくらいに…」

ボルトが何かに気が付いてモンテを制止する。

「何よ。物を異空間に飛ばしたりも出来ないのよ?白眼なんてよわ…」

「モンテちゃーん…」

「ひっ」

その殺気に振り返るとビキビキと経絡系を浮き上がらせた白眼で睨むハナビの姿があった。

「白眼サイコーいぇいいぇいっ!」

「幸運を祈るってばさ…」

そう言ってそそくさと気配を消して去るボルト。

「この裏切者っ!!!!」

あーーーーーーっ!!

モンテの励ましにも効果が有ったのか、次の日にはボルトは立ち直ったようだった。



「今日は休日~」

モンテは一人、久しぶりに修行もない休日を木ノ葉の里を散策する事で満喫していた。

「実はこの世界、ラーメンやハンバーガーも有るし、テレビやネットもある~」

ルルルと鼻歌を歌いながら歩く。

「進化のレベルが異常~、ビルはあるのにトラックは無い~電車はあるのに~車は無い~」

ラララと続けた。

「あー…スマホ欲しい…」

一気にテンションが下がった。

テンションの下がったモンテはとぼとぼといつの間にかあ・んの門の近くへと来ていた。

見上げる程に大きな門である。

有事の際にはこの扉は閉められて厳戒態勢が敷かれる。

大事な扉だった。

「あ、モンテ。丁度いい所に」

と言って走り寄って来たのはチョウチョウだ。

「どうし…たぁーーーーーーっ!?」

駆けて来た勢いそのまま腕を取られて引きずられるモンテ。

「あちしのパパを探しに行くのよ。モンテもつき合って」

「パッパ…っおっ!!」

意味がわからないっ!

だが止まらないチョウチョウに引きずられあ・んの門を出る。

「あれ、モンテじゃんどうしたの?」

門の外でチョウチョウを待っていたのはサラダだ。

「どうせならモンテも連れて行こうと思って。モンテって結構便利なのよね」

「忍術も使えないモンテが?」

「ちょっとサラダっ」

「ご、ごめん。バカにしている訳じゃ無いのっ!」

とチョウチョウに睨まれ弁明するサラダ。

「別に良いけど」

ん、あれは七代目?

里を出てどこかに行くようだ。

「ちぇ、やっぱ間に合わなかったか」

一歩遅れてボルトが弁当を持って現れた。

どうやらナルトに弁当を届けに来たようだが間に合わなかったらしい。

それをどうせ外に行くからとサラダが届けると言い出してひと悶着。

しかしサラダが押し切る形でボルトか弁当を受け取った。

「それじゃ行くわよ」

「あちしのパパを探しに行くのにどうしてサラダが仕切ってるの?」

「って言うかわたしが付いて行く意味はっ!!」

しばらく林道を走る。

「はぁっはぁっ…ちょっとモンテ、それ卑怯じゃね?」

枝に飛び移って移動しているチョウチョウが息を切らせてモンテに言った。

「卑怯と言われても。テンテン小母さんに貰ったんだ、良いでしょう」

モンテの手首に装着された忍具。

それはチャクラ糸を撃ちだす忍具だった。

腕にアームバンドの様に付け、手のひらに伸びたボタンを押すと糸が飛び出る。

糸は伸縮性を持っていて、また粘度も高い。蜘蛛の糸の様。

その糸を高い木や枝に正確に投擲し、スイングするように移動する。

どこかの世界ならばウェブシューターと呼ばれる物で化学忍具の一種だった。

「それより七代目は」

「はぁ…はぁ…それよりってサラダっ!!」

疲れ始めているチョウチョウ。

「えーっと…うん、そんなに離されてないかな」

白眼で遠視すれば森の中を駆けるナルトの姿を捉えた。

「ほんと、白眼って便利ね」

羨ましいわとサラダが言う。

そんなサラダをモンテはジロリと睨んだ。

「な、何よ…」

「べっつにー。ただうちはには言われたくないわぁ」

はぁとため息を吐いた。

森を抜けるタイミングでモンテたちの前に一人の少年が現れた。

「あなた…誰なの…?」

誰何するサラダ。

「な…写輪眼…?」

モンテが呟いた。

真っ赤に染まるその双眸には基本巴の勾玉が浮かんでいた。

「うちはシン」

そう答えた少年はサラダを連れて行くと言う。

突如として襲い来るシン。

口寄せした大きな手裏剣のような忍具を投擲する。

アカデミー生とは言え忍者の教育を小さい頃から受けているサラダは軽々とかわしてクナイを投擲して反撃。

サラダが牽制した所にチョウチョウが部分倍化術で腕を巨大化させて叩き付ける。

かわされたがそこをモンテがインファイト。

「はっ!」

「がはっ!」

力強い一撃に吹き飛ぶシン。

「遅れちまったか?」

そこに誰かに追われていることに気が付いたナルトが引き返して来てサラダたちを守る様に立つ。

シンの瞳が万華鏡写輪眼に変わる。

「万華鏡写輪眼まで」

投げつけられ弾かれた巨大な手裏剣は仕込み忍具だったようで、刃が分裂したと思ったら何かの力で操られるようにモンテ達を襲う。

ガッガッガ

投擲された忍具の全てがナルトの体から腕のように伸びたチャクラで弾かれ危機を脱した。

「なにあれ、キモイんだけど…」

態勢を立て直したシンの近くにいる写輪眼を持った小さなミニオンズみたいな生物は言葉を発しシンを連れて時空間忍術で消えた。

「時空間忍術まで…」

これで一応の襲撃の危機は脱した。

サラダがボルトから請け負ったお弁当ミッションはこれで終了のはずだが、どうやらあのうちはシンが狙ったのはサラダのようでこのままナルトと同行する事に。

どうやら年中里外にいるうちはサスケにサラダを合わせたやりたいらしい。

あれ?チョウチョウのパパを探しているはずでは?

お腹も減ったからとみんなで昼食。

勿論急きょ連れて来られたわたしにはそんな持ち合わせは無い。

「しょうがないなぁ、あちしのを分けてあげるから」

「おい、チョウチョウてめぇ」

お前がわたしを無理やりに連れて来たんだろうが。

どうやら最初からサラダはナルトがサスケに会いに行く事を知っていてサスケに会うために里を出たようだ。

昼食を終えると再びサスケに会うために駆ける。

「あちし…もうだめ…少し休憩しよう」

はぁはぁと肩で息をするチョウチョウ。

「すこしは痩せろデブ」

「あんたは…はぁ…すこしは…はぁ…走りなさいよね」

スイングで楽をしていたモンテにチョウチョウが言い返す。

しかし合流場所を目の前に少し休憩する事に。

「あれ、サラダは?」

「あれ、どこだろ」

「まさか先に行っちまったか?」

ナルトの言葉で塔へと急ぐ。

扉を開けて中に入るとサラダと大人の男性が言い争っているのが見えた。

片目を隠している彼が恐らくうちはサスケだろう。

遠巻きに話を聞いているとサラダがいつも家にいないサスケに不信感を抱いているらしい。

実際10年以上も会った事が無いらしい。

「ネグレクト…」

何が有ったか分からないけど…

「ダメ男ね…」

「顔はイケメンなんだけど、あちしのパパにはちょっと」

いや、あんたの父親はどう見てもチョウジさんですから。

言い争いの末塔を出ていくサラダとそれを追うナルト。

少し遅れてサスケも出ていく。

「いやぁ想像以上に複雑な家庭環境なんだねサラダって。うちも結構複雑な方だけど…」

「まぁね。あちしも流石に一度も会った事が無いとは思ってもみなかったわ」

「しかし、実の娘にも会えずに長期に里を出る程の任務っていったい」

「さあ、あちしたちが分かる訳ないわ」

「そうだね」

「あーそれにしてもお腹減った。そろそろ外はまとまったかしら」

「どうだろう。サスケさんって口下手っぽいからね」

そう言って二人でそっと扉を開ける。

「あれ?どういう状況…?」

どうやら二人が塔の中で休憩していた間にひと悶着あったらしい。

うちはシンと名乗る親子がナルト達を襲撃し、駆けつけたサクラと一緒に退けたは良いが時空間忍術で撤退。

その撤退にサクラが巻き込まれたらいい。

「えー…ややこしい事になってる…」

ため息をつくモンテ。

襲って来たうちはシンを名乗る大人には多数の実験の後が見受けられたらしい。

うちはの写輪眼を持っている実験体となると一番怪しいのは大蛇丸と言う事になるようだ。

ナルトとサスケは大蛇丸のアジトへと向かう。

「え、わたしも行くの?」

「ここで返す方が危ない」

面倒そうにサスケが言う。

「行くぞ」

あ、さようで。

大蛇丸のアジトで話を聞けばどうやらうちはシンは過去の実験体であり、うちはを名乗ってはいるがうちは一族では無いようす。

シンは移植された細胞に拒絶反応を起こさない特異体質で、その為に移植された写輪眼を使えるのだという。

さらに悪い事にクローニング技術の実験体でもあったと言う。

「つまりあの子供も大人も同一人物」

「あら、理解が早いわね」

大蛇丸が嫌らしい目つきでモンテを見つめる。

「こっちみんな」

ゾゾと鳥肌が立ちさするモンテ。

そのシンは大蛇丸が廃棄した実験場に居るだろうと言う。



「完成体須佐能乎がただの飛行機に…」

モンテ達は今サスケの須佐能乎の頭襟(ときん)の中で空中を移動している。

風圧など感じない安全な空の旅…なのだが、それがサスケの完成体須佐能乎の中と言うのがモンテにはどう受け止めれば良いのか分からなくなっていた。

「どうして…こんな事に…」

モンテは初めて見る完成体須佐能乎に感動しているはずなのに、その使い方がシュールだった。

「おーい、モンテ、大丈夫?」

「チョウチョウ…大丈夫じゃない…」

「ちょっとモンテまで思いつめないでよ。思いつめているのはサラダだけで十分よ」

サラダは大蛇丸のアジトを出てからさらにふさぎ込んだ様子だ。

空での移動は速くあっと言う間にシンのアジトへと到着。

入り口らしき石碑に降り立つと中からぞろぞろと現れるうちはシン達。

「同じ顔がいっぱい」

「クローンとかすごい技術力だよね。すこし頭が痛いわ」

そう驚いたチョウチョウにモンテは額に手を当てて頭痛を堪える。

「ママ…まってて」

「こら、サラダ、先行するな」

「先行は二人ともだってばよっ!」

三人でうちはシンを蹴散らしながら隙をついてアジトへと侵入する。

一応ナルトの影分身が数体モンテとチョウチョウを守っているが完全に置いて行かれた感じだ。

「どうする、チョウチョウ」

「当然、やっちゃうっ」

「油断すんじゃねーぞ二人とも」

ナルトの激が飛ぶ。

「それじゃあ数が多いし、ちょっと本気だしちゃう」

『久しぶりに暴れられるのか』

モンテの中の四尾の声。

『さすがに尾獣化は無しっ!』

『ちぇ、つまらん』

『もう、そう拗ねないで。力を貸して』

『しゃーねぇ、行くぞモンテ』

『行くわよ、悟空くん』

湧き上がる四尾のチャクラ。

四尾のチャクラがマントの様にモンテに纏わり付いた。

マントの先は四本に別れ、まるで尻尾の様。

チョウチョウを見ればその姿は今のモンテに似ていた。

違いを上げるならばマントの先が七つに分かれているくらいか。

「な、二人とも尾獣チャクラをっ!」

「いくよ、モンテ」

「おーけい、チョウチョウ」

「鱗粉隠れの術」

チョウチョウが息を吸い込むとキラキラ光る粒子を吐き出しモンテ達の姿を隠す。

「よっはっ!」

その霧の中、モンテはチャクラを感知してまるで見えているかのようにシン達を殴り倒していく。

「部分倍化の術っ!」

チョウチョウも大きくなった両腕を使い圧倒的な質量でシンたちを気絶させていく。

「二人ともつえーってばよ」

「七代目もサボって無いで戦ってください」

「りょ、了解だってばよ…はぁ」

ため息を吐いたナルトも参戦。

一流の忍者なら視界を奪われたくらい問題なく対処するものだが、大勢いるとは言え相手は生まれたばかりのクローン体。その戦闘経験までは引き継いでいないようで、幾ら万華鏡写輪眼が強力であっても視界を奪われたこの状況に対応出来ず、一方的に倒されてしまった。

「これで、終わりっ!」

地上に居たシンたちを倒し終えると尾獣チャクラモードを解除するモンテとチョウチョウ。

チョウチョウが何故七尾の人柱力になっているのかはまた今度説明するとして、どうやらアジトの中の方も終わったらしい。

サラダがサクラとサスケを連れて出て来た。

どうやら仲直りは出来たらしい。仲の良い親子その物の感じで寄り添っていた。

「結局なんでわたしここに居るんだろう…」

特の無い事に徒労感を感じてしまうモンテだった。

「おーい、サラダー」

チョウチョウがサラダに手を振った。

「チョウチョウ、モンテ」

駆け寄って来たサラダと合流。

「わたし決めたの」

「何を?」

きょとんと聞き返すチョウチョウとモンテ。

「わたし、火影になるっ!」

何がどうしてそうなった?

「ふふ、絶対火影になるんだ」

しかし無邪気な表情で笑うサラダに何も言えないモンテとチョウチョウだった。


その後、水の国への修学旅行を経て卒業試験。

筆記試験は何とかなったが。

「実技試験、変化の術だって」

うん、無理。

「どうするの、モンテ」

「チョウチョウ…まぁ、わたしは無理だ…留年だ…がく…」

モンテは忍術を使えないのだ。

「て言うか、留年したって卒業できなくね?」

「そ、そうだね。来年も実技試験はあるんだしね」

言い辛そうにサラダもチョウチョウに同意した。

「がーん…」

「あちし、がーんて口で言う人初めて見た」

「わたしも」

「神は死んだっ!!!」

いや、だがこれは逆にチャンスでは?

「そうだっ!わたしは普通科に転科するっ!」

これで物騒な忍者なんかにならないで済むっ!

あ、やっぱどうしよう。母様が怖い…プルプル。父様は味方になってくれないからなぁ。

「忍術の使えない生徒には別の試験を用意しているので安心するように」

シノ先生が教壇でそう言って出席簿を叩く。

「そう言う事は早くいってっ!」



さて、問題なく卒業試験を合格したモンテ。

額あてを付けて最後のアカデミーへ。

教室で待機しているとシノ先生を筆頭に幾人もの上忍が入室して来た。

次々に名前を呼ばれ教室を出ていくクラスメイト。

「やっぱ蝶鹿猪かぁ」

そこは猪鹿蝶じゃ無いの?

心の中でモンテはチョウチョウに突っ込んだ。

そして残ったのはボルト、サラダ、そしてモンテの三人。

「必然的に残りが第3班のメンバーだ。コレ」

担当上忍は猿飛木ノ葉丸。

しかしここでひと悶着。

サラダがボルトとのチームを拒否したのだ。

ボルトの実力は認めているが自分とは相性が悪いので変更して欲しいらしい。

毎年の事で教師陣も慣れているようで、直訴状を今日中に火影に届けられれば再検討も有り得るとの事。

サラダは巻物を受け取ると早速火影を探して飛び出していった。

モンテはサラダの後をムキになって追うボルトを眺めつつ教室に残った。

「モンテは一緒に行かないのかコレ」

「これは協調性とかの以前の問題ですからね」

面倒ですとモンテ。

「そ、そうか…」

紆余曲折の後、班の番号を七班に変えてくれるように直訴して来たらしい。

七班というのは以前ナルト達が拝命していた班番号で意外と人気の高い数字なのだと言う。


チーム結成後は担当上忍が師匠を兼ねるのが通例なのだが、日向家の白眼やうちは写輪眼を教えられるわけもなく。

木ノ葉丸先生は上忍としてはまず間違いのない実力の持ち主で多くの遁術をマスターしているのだが、モンテは遁術は使えない。

実際モンテは忍者の心得以外木ノ葉丸から師事される事は無かった。

結局修行は親か自主練となる。

ここ最近は両親が共に仕事で忙しいサラダの修行に付き合う頻度が高かった。

練習場で手裏剣術の修行をするサラダ。

「はぁ…はぁ…はぁ…」

既に何百と投げ、肩で息をしていた。

「サラダー、頑張りすぎないようにね」

モンテが心配でサラダに声を掛けた。

「わたしは、ぜったい、火影になるの。休んでなんていられないわ」

と言って再び手裏剣を投げるサラダ。

「それにこの眼ももっと使いこなせるようにならないと」

そう言ったサラダの目は赤く染まり勾玉が一つずつ浮かんでいた。

「写輪眼かー…羨ましいわ」

「あなたには白眼があるじゃないっ」

「白眼で須佐能乎は使えないからね」

「え、パパの須佐能乎って写輪眼の能力だったの?」

びっくりして手元が狂ったのか明後日の方向へと手裏剣が飛んでいく。

「なんでサラダが知らないのよ」

「し…しょうがないでしょっ!パパは普段木ノ葉に居ないし、ママはもともとうちはじゃ無いんだから」

サクラの旧姓は春野。うちは一族では無いので写輪眼がどう言う物かは知っているが、娘に教えられるものでも無かった。

「どうしてうちは一族はことごとく全滅してしまったの…」

それはあんたの伯父さんの所為とは言えない。

「カカシさんも木ノ葉に居ないし」

写輪眼の代名詞と言えば一時期有名だったのははたけカカシだ。

しかしカカシもしばらく里を離れているようだった。

「誰かわたしに写輪眼を教えてくれる人はいないの…?」

「え?そう言えばサラダって知らなかったっけ?」

「………?」

「わたしのママの旧姓ってうちはだよ?」

タタタタ、ガシ。

勢いよく駆けつけたサラダがモンテの手を取った。

「紹介してっ!」

ギューと掴む手に力が込められた。

「いたいいたいいたい」

「ね、お・ね・が・い」

「ちょ、それはお願いする力量じゃないよ」

「力量を熱量だと思って、ね?」

お願いとサラダ。

「わかった、分かったから、手はなしてっ!」

「あ、ありがとうっ!」

ようやく放してもらえた手を冷ますようににふーと息を掛けるモンテ。

「でも覚悟してね。ママって結構スパルタだから」

「へ?」



……

………


日向家の門の外、緊張の面持ちで立っているサラダ。

「さすが日向本家、デカい屋敷だわ」

最近諸事情で一軒家からアパートに引っ越したサラダが門を見上げてつぶやいた。

「えーっと呼び鈴は…無いわね」

立派な門に呼び鈴などは付いて無い様で意を決して門を潜る。

門を潜ると母屋が見えて来て扉の前で一呼吸。

そして少し大きめの声で誰何する。

「すみませーん。誰か居ませんか」

「あ、はーい」

現れたのはお仕着せを着た女性。一目でお手伝いさんだと分かる出で立ちだ。

「わたし、うちはサラダと言います。モンテさんいらっしゃいますでしょうか」

「お嬢様ですね。少々お待ちください」

と言って一度奥へと下がる女性。

「かは~、緊張した」

待つ事数分。

奥からパタパタと足音を立ててモンテがやって来た。

「あ、サラダ、いらっしゃい」

「モンテ~」

「どうしたの?情けない声を出して」

「お手伝いさんが居るなんて聞いてないよ」

実は前世でもお金持ちだったモンテ。

「え、そう?普通でしょ」

「いや、普通じゃ無いから」

「まぁ良いじゃない。ママも待ってるから修練場へ行きましょう」

「ちょ、ちょっと待ってよ。まだ心の準備が」

「心の準備?」

こくりと頷くサラダ。

「うちのママにモンテのママに写輪眼の修行を付けてもらって来るって話したら、骨は拾ってやるって。それって娘に言う言葉じゃ無くない?」

「あはは…骨は拾ってあげるわ」

「も、モンテまで」

案内された修練場は屋外で、ここなら多少の遁術でも被害はないような造りをしている。

そこに待っていたのは薄紫色の虹彩をした一人の女性。

「ママ、サラダちゃん連れて来たよ」

「あら、いらっしゃい」

「え、白眼?」

旧姓がうちはだと聞いていたサラダが驚きの声を上げた。

「ああ、この眼?ちょっと昔に、ね」

そう言って笑った女性。見た所20歳前後と言った感じだ。

「若作りだけどもうアラフォーだから」

こそとモンテがサラダに耳打ち。

「ま、マジ…?」

「モンテちゃーん、聞こえているわよ?」

「ひぇっ!」

真っ赤な瞳がモンテを睨む。

「写輪眼っ!?やはりうちはの…」

「どうしてうちの家族は瞳術で睨むのよ~怖いんだからねっ!」

まあ良いわ、とその女性は睨むのを止めた。

「うちのママ。日向イズミさん。ミツキのお母さんです」

「旧姓はうちはイズミって言うのよ」

と本人からの紹介。どうやら結婚して苗字が変わった様だ。

「ママ、ミツキは?」

「ナツさんに預けてあるから大丈夫よ」

日向ナツさんは本家のお手伝いをしてくれている分家の人間だ。

じゃあわたしもそっちに…

「一緒に居て。怖いのよ」

サラダに止められました。

「えー…」

脱力するモンテ。

「さてと」

とイズミがサラダをまっすぐに見つめた。

「それじゃあ、早速だけど写輪眼の修行ね」

「は、はいっ!」

緊張気味のサラダはイズミに促されて修練場の中央へと移動する。

「使ってみせて」

と言われたサラダは静かに目の前で印を組んだ。

そして目をつむり、再び開くとその双眸が真っ赤に染まっていた。

「一つ巴の写輪眼ね。まだ開眼したての」

イズミがのぞき込んだその瞳には左右に一対の勾玉が浮かんでいる。

サラダが覗き返したイズミの写輪眼は三つの勾玉が浮かぶ基本巴になっていた。

「昔誰かが言っていたわね。その状態ではまだ出来る事が少ないって」

「誰が言ったの?」

とモンテ。

「パパよ」

「うへぇ」

聞くんじゃなかったとモンテ。

「まだわたしの瞳力が弱いって事ですか?」

「こればっかりはしょうがないわ。実際基本巴にまで成長させることが出来るのも稀なのよ」

「どう言う事ですか?」

と言うサラダの質問にイズミは肩をすくませるだけで答えなかった。

写輪眼の成長は自己の喪失にともなうストレスが要因だからね。

そうモンテは心の中でひとりごちる。

「でもその状態でも基本的な能力は備わっているはずよ。模擬戦、してみましょうか」

「はいっ!」

そう言ったサラダは体を半身に開いてクナイを手に取った。

相手は写輪眼の使い手で木ノ葉でも屈指の上忍だ。

アカデミーを卒業したばかりのサラダでは全力で当たってもダメージが通るかどうかだろう。

故にサラダは全力でイズミに挑むつもりだ。

「行きますっ!」

地面を蹴ってクナイを突く。

キィンキィンとクナイどうしがぶつかる甲高い音と鉄が火花となって削られる。

サラダ渾身の突きだったがイズミはその写輪眼で見切り難なく攻撃をさばいている。

「くっ」

一度サラダは距離を取りクナイを投擲。

投げたクナイの刃先に当たるほど正確に投げられたイズミのクナイがサラダのクナイを弾いた。

サラダはその隙にとポーチから三枚の手裏剣を持ち投擲。

しかしこの攻撃にイズミは一枚の手裏剣で三枚を落とした。

「ええっ!」

しかし驚いたままではいられない。

すぐさまイズミは印を組み上げた。

「雷遁・雷球」

サラダのそれは以前水の国で巻き込まれた騒動で敵からコピーした忍術で、最近のサラダの得意忍術になっている。

雷の球体を四つ程浮かべ敵に投射する技だ。

「雷遁・雷球」

しかしイズミも流石の写輪眼。すぐさまその技をコピーして相殺。

ならばと再び印を組み上げるサラダ。

「火遁・豪火球の術」

ボウと吐き出される大きな火球。

「火遁・豪火球の術」

やはりイズミは同じ技で相殺させる。

「はぁっ!」

相殺された炎が消えるよりも速く地面を蹴ったサラダがイズミに迫る。

迫るサラダのクナイを手首を掴んで捻り飛ばすイズミ。

しかしそのサラダの姿がボワンと煙となって消える。

「影分身」

いつの間にとイズミ。

サラダは豪火球の術を目くらましに影分身の術を使っていたのだ。

「雷遁・雷球」

再び撃ちだされるサラダの雷遁。

今度はイズミも相殺するタイミングを失い後ろに下がって避けた。

しかしイズミは今度はこちらからと印を組む。

「「火遁・火龍弾」」

イズミの印をすぐにコピーしてサラダも相殺させる。

「やるわね。でもこれならどうかしら」

そう言って再び印を組むイズミ。

「火遁・豪龍火の術」

ボウと吐き出される火龍をサラダは途中まで印を組んだがコピーする事が出来ず。

「くっ…」

写輪眼で見切り避ける事が精いっぱいだった。

術がコピーできなかった原因は使用チャクラ量が多いためにサラダの残りチャクラ量では術が発動出来なかったからだ。

イズミは体勢を崩しているサラダの隙を突きさらに印を組み術をディレイさせると手裏剣を一枚取ってサラダに投げる。

サラダも写輪眼で飛来する手裏剣をしっかりとらえていたのだが…

イズミが最後の印を組む。

「手裏剣影分身の術」

十重二十重に分身する手裏剣。

幻術を見切る写輪眼でも見切れない?

まさか実体?

そんなっ!

「なんてインチキっ!」

それは全てが実体を持つ物質影分身だった。

極限が意識を加速させる。

わたしは火影になるのっ!こんな所で立ち止まれないっ!

サラダは写輪眼が捉えた手裏剣の雨に臆さずにクナイを持ち最小の動きで避け、また避けられないものはクナイで弾いた。

だが…

「しまっ…!」

弾く事も避ける事も出来なかった手裏剣がサラダを襲う。

「解っ!」

ボボンと煙を上げて全ての手裏剣が消える。イズミが影分身を解除したからだ。

「はぁ…はぁ…はぁ…」

「サラダっ!」

ふら付くサラダにモンテが駆け寄り倒れ込む前に抱きとめる。

「気絶しちゃったか」

「写輪眼の使用に慣れてないせいね。他の忍術との併用によるチャクラ切れよ」

イズミが気絶したサラダを抱き上げて言った。

「少し休めば気が付くわ」

イズミはそのまま縁側へと移動するとモンテに枕を持ってこさせゆっくりと横たえる。


しばらく気を失っていたサラダは、はっとして起き上がる。

「ここは…」

「あ、サラダ気が付いた?」

モンテがサラダをのぞき込んだ。

「わたし、気を失ってた」

くっと頭痛を覚えふら付くサラダ。

「チャクラ切れよ。もう少し休んでいなさい」

イズミが気が付いたサラダの様子を見ていた。

「あの、どうでしたか?」

とサラダが不安そうにイズミを見つめていた。

「開眼したてにしては上手に使えていたわ。術のコピーなんかもね」

ただ、とイズミ。

「慣れてないせいかまだチャクラ使用量が多いわね。使い続けていればすぐにバテてしまうわ」

「はい…」

それに、と。

「ただでさえチャクラ消費が激しい写輪眼を使いながらで遁術を使うんだもの。当然、戦闘継続時間は短くなるわ」

いくらうちは一族とは言ってもね、とイズミが言う。

「写輪眼の使用に慣れるか、チャクラ量を増やさないと…ですね」

聡明なサラダには自分の弱点がよく分かっていた。

「出来ればどっちもね」

「ただでさえサラダのチャクラは少ないのだし」

「え、モンテ。わたしってチャクラ量少ない方なの?」

モンテの何気ない一言でショックを受けるサラダ。

「通常時のわたしがこの位なら」

と言ってモンテが縁側を降りて地面に線を引いた。

「サラダはこの位」

「え、マジっ!?」

それはサラダの十分の一ほどだった。

「じゃ、じゃあ七代目様は?」

「ナルトさんかぁ…そうだなぁ…」

これくらいと線を引くモンテ。

「うっそだぁ」

それはモンテよりも低かった。

「ナルトさん本人のチャクラ量はね。それで仙人化するとこれくらいで」

スススとグラフを上に伸ばす。

「さらに人柱力として九尾のチャクラを加えるとこれくらい」

天元突破したナルトのチャクラ量。モンテが数歩歩かなければグラフが完成しなかった。

「わたしってミジンコ以下ね…しゃーんなろぉ」

どんよりと肩を落とすサラダ。今にも泣きそうだ。

「まぁ、成長すれば自然と増えていくものだけど、適切な修行をすればもっと増やせるわ」

ただ、小さい時からの方が望ましいとイズミが言う。

「わたしってまだ間に合いますかね…」

ミジンコと言われて流石に焦るサラダ。

「木ノ葉丸くんには教えてあるんだけど」

「うちの班ってボルト、あんまりやる気ないから」

「やる気をモンテちゃんに言われるって相当ね」

実際ボルトが修行している所を見た事が無かった。

「どうなんですか」

再度サラダが声を張って問う。

「今から修行しても良くてモンテちゃんの七割くらいね」

体が青年になるまでが勝負だった。サラダは今からでは十分な時間を取れない。

「え?」

「ショックかしら?」

「いえ…逆です。今の七倍になれるかもしれないんですね」

ぐっと両手を握り込むサラダ。

「修行する気が有るのならハナビを訪ねなさい。わたしから言っとくから」

「はい?」

どう言う事、とサラダ。

「あー」

納得顔のモンテ。

モンテが困った顔でサラダを見て説明する。

「たぶん十五班の皆にチャクラコントロールの修行を付けているはずだからね」

「写輪眼の方は暇なときにわたしが見てあげる。いつでも訪ねて来なさい」

「あ、ありがとうございます?」



数日後。

サラダに呼び出されたモンテは待ち合わせ場所の公園に居た。

「あれ、モンテじゃん。何、モンテもサラダに呼ばれた?」

待ち合わせ場所に居たのはチョウチョウだ。

「そんな所。で、サラダは?」

「それがまだ来てないんだよね」

チョウチョウは手に持ったポテトチップスの袋を流し込んで答えた。

「あ、いたいた、チョウチョウ、モンテ」

「いたいたじゃなーい。むしろサラダが最後だし」

「ごめんチョウチョウ」

手を合わせて謝るサラダ。

「まぁ良いけど」

「で、何の用事?」

とモンテが問いかけた。

「ちょっとつき合って欲しい所があって」



……

………


「いーやーだーっ!」

「かーえーるーっ!」

「おねがいっ!親友を助けると思ってっ!」

修練場の入り口で逃げ出そうとしたモンテとチョウチョウを必死に抑えるサラダ。

「どうして任務の休みの日に修行しなきゃなんないんだしっ」

「そうだよっ!わたしはもうダラダラと生きる為に生まれて来たはずなのにっ!」

モンテはそう言う星の下には生まれていない…可哀そうではあるが面倒事には巻き込まれる運命だ。

この先は十五班が貸し切りの修行場となっていた。

「お・ね・が・いっ!最近のスミレたちを見てたらやつれていて怖いのよっ!」

「知ってるしっ!」

「だから行きたくないんだってっ!…あっ!」

「きゃぁ」「うわぁ」

火事場のバカ力かサラダの母親からの遺伝か、サラダの引っ張る力が勝ち三人で転がる。

コロコロと転がった先。

「あら、あなた達」

地面に寝転んだ三人をのぞき込む様に見下ろす薄紫色の虹彩をした女性。

「ぎゃー」「か、帰るしっ!あちし関係ないしっ!」

「あ、そう言えばイズミが言っていたわね」

蛇に睨まれた蛙の様に縮こまるモンテとチョウチョウ。

「はいっ!えっとチャクラコントロールの修行を付けて欲しくてっ!」

居住まいを正し正座をしたサラダが目的を告げた。



サラダは自発的に歩いて、モンテとチョウチョウはハナビに引きずられて修行場を移動する。

その林に囲まれた空き地に十五班の三人が力尽いたように屍を晒していた。

「な、なにが…」

おののくサラダ。

「ようこそサラダ。そしてモンテとチョウチョウも逃げられるとは思わない事だ…」

先に修練場で修行していた伊豆野ワサビがプルプルとした体を無理やり起こして言った。

筧スミレと雀乃なみだは声を上げる事も出来ない。

「がくがく」「ぷるぷる」

チョウチョウとモンテも絶望に震えている。

「急にすごく不安になって来たわ…」

サラダの背中に冷汗が流れた。

ハナビの修行はスパルタと言う国はこの世界には無いがスパルタと言っても過言では無い苛烈っぷり。

「血霧だ…がく…」

「サラダーっ!しっかりっ!まだ気絶するには早いよっ!」

血霧と書いてスパルタと読む。

そんな容赦のない様子を例えた言葉だ。

「うぇへっへ、新しい仲間が出来て嬉しい」

「そうだね、スミレちゃん…ふふふ」

「あー…だめだ。スミレとなみだが壊れている…」

逆にハナビの修行に耐性があるのはワサビだ。

「どうしてワサビはそんなに元気なのよ」

とサラダ。

「元気な訳ねーって、そんな感じだとハナビ先生の熱意も上がるだろうが、ガクガク」

ただ、とワサビ。

「ちょっと訳があってハナビ先生の修行はこれが初めてって訳じゃねーんだ。チョウチョウやモンテと一緒でな」

「うぅ…」「し、しぬ…いっそ殺して…」

「ほら、そこっ!サボらない」

ハナビの激が飛ぶ。

「あはは…」

二人を見て愛想笑いをするサラダ。

サラダにとって初日の修行だったが、はっきりとレベルの違いを見せられる結果となった。

サラダはスミレとなみだが居る初級講座で、ワサビ、モンテ、チョウチョウはさらにずっと先の修行をしている。

チャクラ量はわたしとスミレたちは殆ど差は無いはず。でもワサビとチョウチョウはモンテ並みなんだわ…

もっと頑張らないと。

冷静に観察した結果自身がどれだけ出遅れているかを悟る結果となった。


「最近修行の調子はどうなの?」

リビングのダイニングテーブルに突っ伏す様にして椅子に座るサラダに心配になったサクラが料理のついでに問いかけた。

修行を始めてから早数か月。

「あー、…うん。ハナビ先生はスパルタだし、イズミさんは心を抉って来るわ」

顔を上げる気力も無いのかサラダは突っ伏したまま答えた。

「そ、そうなんだ…」

「ねぇ」

と首を横に曲げることが精いっぱいのサラダが続けた。

「そう言えば、パパとママってハナビ先生の修行を受けた事って無いの?」

単純な疑問だった。

「えっと、ハナビ先生やイズミ先生からは殆ど無いかな」

「先生?」

「あー…わたしが下忍だった頃の担当上忍はイズミ先生の旦那さんだったから」

二人と同じチームを組んでいたのよとサクラ。

「へぇ、それって六代目?って事はパパも?」

「そうよ」

だけど、と続けるサクラ。

「ちょっと事情があってわたしもパパも先生に師事してもらった事は殆ど無いのよ」

「どうして?七代目に付きっ切りだったとか?」

「んー…ナルトの師匠は自来也さまかな」

「じゃぁどうして?」

子供ゆえのただの疑問。

「まぁいろいろとね」

そう言ってこの話はお終いとサクラは出来上がった料理をテーブルに置いた。

「でねでね、見て」

と起き上がるサラダ。

「なになに、なによ」

「じゃーん」

一度瞳を閉じて再び開いたその双眸。

「写輪眼が二つ巴になったの」

「そ…そう。わぁ…今日はお祝いかしら」

「別にいつもと同じで良いよ。もう作ってるんだし」

「う、うん…そうね…」

サクラの表情は不安そうだった。

「どうしたの、ママ」

「ううん、何でもない。別の日にお祝いしようか。何が食べたい?」

「え、そう?それじゃぁねぇ」

サクラは高まる不安を押し殺して笑っていた。





今日の任務は害獣被害にあっている村でターゲットの捕獲または排除だった。

「えっと、クマ…?…パンダ…?」

まぁパンダはクマか。

目の前に横たわる巨体。

「楽勝だったってばさ」

「ちょっとボルト。あんたはもう一度チームワークって言葉を辞書で引くべき」

「そう怒るなってサラダ」

独断先行したボルト。しかし実力の高さは誰もが認める所で、大体の事は卆なくこなすタイプの天才だ。

「そう言えば、さっきの術って影縛りの術じゃ無かったですか?木ノ葉丸先生って使えたんですね」

「え、ああ。あれなぁ」

巨大なクマを拘束した忍術は奈良一族が得意とする影縛りの術だ。

「実は今日の任務はこれのテストも兼ねていたんだ、コレ」

どれ?

そう言って木ノ葉丸先生が見せたのは小手の様に装着された忍具だ。

「なんですか、それ」

サラダも興味が向いたのかメガネをくいと持ち上げる。

「なんだってばさ、木ノ葉丸のにーちゃん」

「これは化学忍具だ」

ボルトに促されて実演する木ノ葉丸先生は、巻物に螺旋丸を封じ込めるとその巻物が縮小し、その巻物を小手にセットするとまるで砲弾のように螺旋丸が飛んでいく。

「すげー」

驚くボルト。

「へぇ、モンテのウェブシューターみたいなものですか?」

「ウェブシューターってなんだってばさ」

そう言えばボルトの前では使った事が無かったかもしれない。

「これ」

モンテは手首を持ち上げ裾を捲った。

「何々?ちょっとかっけーんだけど」

「はい、ちょっと黙って」

「んーんー」

手のひらにあるボタンを押すと飛び出るチャクラ粘糸がボルトの口元に張り付く。

「似ているが、少し違う。モンテのそれは自分のチャクラを変換している物だが、この化学忍具は自身のチャクラを使用していない。なので…」

ドーンと粉塵を巻き上げて民家が倒壊した。

「…こんな事になる」

まだまだ制御が甘い様だ。

木ノ葉丸先生は蒼白な顔をして謝りに行った。

「でもいいなぁ、あれならわたしも忍術が使えるって事だから」

「何か使いたい忍術でもあるの」

そうサラダが言う。

「んーんー」

「そうだなぁ…」

影分身とか使ってみたいかな。

あ、でも自分のチャクラと関係が無いのなら経験値の還元は?

ならば他の遁術…は、その殆どは放出系だし、気弾で相殺出来る。

「強いて言えば土遁…?」

「へぇ、渋いわね」

「土遁って偶に訳の分からない忍術があるじゃない?物を軽くするとか」

「んーんーんー」

「ボルト、うるさい」

「ぷはぁ、これ全然取れないってばさ、これ」

ようやく口元の粘糸を取り払ったボルトが肩で息をしながら文句を言った。

「コレは木ノ葉丸先生だけで十分よっ!」

「コレはこれの事でコレじゃねーってばさ」

「コレコレうるさいっ!」

「あー、もうっ!どーすればいいんだってばさーーーーーーーっ!」

ボルトの絶叫が木霊した。





「中忍試験?」

「そうだ。今度五里合同で行われる中忍試験の推薦状だ」

と木ノ葉丸先生から渡された一枚の紙。

「えー…めんどくさい」

「ちょっとモンテっ!中忍試験はスリーマンセルなんだからねっ!」

サラダがすごくやる気だ。

「オレもパス」

「ちょっとボルトっ!」

「三人の推薦状が揃わなければ中忍試験は受けられない」

「ほら、木ノ葉丸先生もこう言ってるし」

「そんなの知らねーってばさ」

逆切れしたボルトはそのまま跳躍して駆けていく。

「あの腐れポンツクがーっ!まったくしゃーんなろぉだよ」

キっと目を細めたサラダがモンテを貫く。

「モンテは出るわよね、いーえ出るべきよ。出ないなんてありえないわ」

「ちょサラダ、近い近い…」

「でーるーわーよーね」

「わ、分かったから」

モンテが諦めて降参すると途端に笑顔で離れるサラダ。

「あとはボルトだけね。絶対説得してみせるんだから。火影を目指しているわたしはこんな所でつまずく訳にはいかないの」

「目標の為に努力するのは良い事だけど…だけどぉ…とほほ」

とモンテはため息を吐いた。



雷バーガーの店内飲食のテーブルを囲むサラダとモンテ。

「ボルトが…んぁ……なんだって……?」

モンテはハンバーガーを片手にちゅうちゅうとコーラを流し込んでいた。

「喋るか食べるかどっちかにしなさいよ」

「もぐもぐもぐもぐ」

「はぁ…」

食べる事を優先したモンテに呆れるサラダ。

「それが、ボルトが最近おかしいの。真面目に修行しているのよ。木ノ葉丸先生に修行を付けてもらっているみたい」

「へぇ、良い事じゃない」

「ね、ちょっと二人で見に行こうよ」

「ちょちょっとサラダっ!」

サラダに強引に連れ出されたモンテはボルトが修行している練習場に生えている木の上からその修行を盗み見る。

「わ、本当だ」

「ね、凄いでしょう。あれはきっと七代目の螺旋丸ね」

モンテの視線の先でゴムボールにチャクラを送り割ろうと努力しているボルトの姿があった。

「ボルトが螺旋丸を習得出来たらすごい事だわ。うちのメンバーの戦力も上がるし…って、どうでもよさそうねモンテは」

ジト目で睨むサラダ。

「いやだってわたし螺旋丸使えるし」

突き出した掌でフォンと乱回転するチャクラの塊。

「…え?」

「何だったら大きくも出来るし」

大玉螺旋丸がモンテの掌で回転していた。

「わたしって遁術はさっぱり出来ないけど、チャクラコントロールだけは自信が有るから」

「それ、ボルトの前では使わないでやってね」

真剣な表情でサラダが言う。

「わたしの前で遁術を使うなって言ってくれたら考える」

モンテが眠たげに答えた。

「ボルトの心が折れちゃうでしょうっ!中忍試験を受けれなくなったらどうするのよっ!せっかくやる気出しているってのにさっ」

「ギブギブ…首がもげる…」

がくがくと揺らされたモンテが両手を上げて降参の意を示した。

「はぁ、まったく…どうなる事やら」



うちは家のダイニングで、サラダは久しぶりに両親そろって夕飯を食べていた。

「どうなの、ボルトは」

ボルトを師事しているサスケにサラダが聞いた。

ボルトが最近木ノ葉丸先生に螺旋丸の修行を付けてもらっていたのはサスケが弟子入りの条件として螺旋丸習得を指示したためだ。

短期間でその課題をクリアしたボルトは晴れてサスケの弟子になったのだった。

「才能はあるな。ナルトと違ってな」

今日見ていた手裏剣術もナルトなんかとは比べ物にならない位のみ込みが良かった。

「え、七代目様?」

どう言う事、とサラダ。

「ふふ、ナルトってアカデミーでは落ちこぼれだったから。パパと違ってね」

そうサクラも笑った。

「うそだー。全然信じられないよ」

サクラの冗談だと思ったサラダだが、サスケの表情を見て悟る。

「マ…マジ…?」

「ナルトはアカデミーの成績は良い方では無かった。だが、努力で克服して今はこの里の為に頑張っている」

「パパってさ」

一度言葉を溜めて続ける。

「七代目様の事好きだよね」

「ぐっ」

サラダの言葉にご飯を詰まらせるサスケ。

「ふふ」

サクラは笑っていた。

「バカな事を言うな」

慌てて取り繕うサスケ。

「それより、サラダの方はどうなんだ。修行付けてやれなくてすまない」

「本当にそこはしゃーんなろぉだよ」

娘に対する時間は無いのかとサラダ。

「まぁでもわたしは大丈夫。ハナビ先生とイズミさんに修行を見てもらってるから」

「誰と誰だって?」

「ハナビ先生とイズミさん」

ガタと立ち上がるサスケ。

「ちょとサスケくん」

「ぱ、パパっ」

いきなりどうしたの、とサクラとサラダ。

「ちょっと出かけてくる」

「いきなりどうしちゃったのよ、パパ」

「サクラもどうして止めなかったっ」

「それは、そうなんだけど…」

「ちょっと二人ともわたしの分からない話をしないで」

「サラダ…」

サラダの声にサスケは落ち着いたのか席に座りなおした。

「その…大丈夫か?体を壊したりしていないか?」

「えっと…大丈夫…二人とも本当に死ぬ一歩手前までで止めるから…」

そこでようやくサラダはサスケが自分の心配をしている事に気が付いた。

「すぅ…ふぅーーー」

深呼吸を一つ。落ち着いた声でサスケが続ける。

「確かに得難い師匠を得たな…親としては化け物の弟子にはなって欲しくは無かったのだが…」

「化け物って…」

否定しようとして否定出来る所のない事実にサラダも詰まった。

「俺なんかあっと言う間に追い抜くのだろうな」

「そんな事ないよぉ」

サスケに褒められて照れ笑うサラダ。

「それでどんな修行を付けてもらっているんだ」

「それはね」

とサラダが語る内容にサスケの表情がどんどん険しくなって行ったのは仕方のない事だろう。



……

………

そうして迎えた中忍試験の一次試験日。

会場は木ノ葉の里。

今回は合同中忍試験と言う事もあり他里の下忍も多くいる。

「ボルト、モンテ。準備は良い?」

「当然だってばさ」

「忍具の忘れ物は?」

「えっと、大丈夫」

サラダの注意にモンテは手首を持ち上げた。

「あーっ!モンテ」

「な、なに?」

「それって化学忍具なんじゃないの?」

そのサラダの声にボルトはさっと手首を引いた。

「へ?」

「今回の中忍試験は化学忍具禁止なの。しっかり読まなかったの?」

「でも、これは結構前から有るし…」

「はぁ、もう…じゃあ一応試験管に聞いてこようか」

「う、うん」

「ダメだったら外すのよ」

「はぁい」

試験管に問い合わせた所、自分のチャクラを用いた忍具の使用は可能との事。

実用化してから十年以上経っている事も一つの要因で、さらにはモンテのウェブシューターを禁止にしてしまうと他里でも持ち込んだ忍具に禁止忍具が出てしまうらしい。

一次試験は何と〇×問題。

正解だと思う方のパネルの上に班ごと移動するように、と。

その問題は勉強家のサラダでも分からない問題だった。

結局最後は勘で選ぶことに。

サラダが選んだ理由なんて自分の父親が選ばなそうと言うだけで〇を選んだくらいだ。

正解発表の巨大モニターに答えが映し出されるのを待つ。

「不正解者は真っ黒になって失格です」

と言う試験管の言葉の後で写される回答。

『〇×』

「………?」

パンと音を立てて足元のパネルが消失。

受験生の全員が深く掘った穴へと落ちていく。

「ふっ」

モンテは左手のウェブシューターを穴の上部の縁へと撃ち、右手のウェブシューターでサラダを捕まえる。

「ボルトっ」

「うゎあ」

サラダが投げたワイヤークナイがボルトを捕まえてギリギリで墨汁のプールへの落下を免れた。

この問題の正解は穴に落ちなければクリアと言う引っかけ問題で、問題自体に正解は無かったよう。


二次試験は旧市街の廃墟で行われるチーム対抗戦。

両陣地に旗があり、相手の旗を取った方の勝ちだ。

「わたしとボルトがオフェンス。モンテがディフェンスね」

「了解」

とモンテ。

写輪眼と機動力のあるサラダ、遊撃のボルト、白眼を持つモンテはその視野を活かしての防御と無駄のない布陣。

「遁術の使えねぇモンテより俺が守った方が良くねぇか」

「ボルト、勝手な事を言わない。遁術だけが忍術じゃ無いわよ」

「へーへー、分かりました。…なんだよ、俺の凄さがアピール出来ねぇってばさ」


モンテは一人自然体で旗を守っている。

白眼の視界はほぼ360度見渡せる。

ビルの上にある旗は障害物は無く、どこから攻めて来たとしても見落とす事は無い。

唯一ビルの隙間を縫うような下方向に死角がある様に感じるかもしれないが、白眼の透視能力は伊達じゃない。

実質感知されずに旗に近付く事は不可能だった。

さらに言えば、モンテは試合開始前から相手のスタート地点を白眼で遠視していた。

遠視と透視で相手の動きを見て無線でボルト達に伝える。

「敵はBブロックに進行中」

『俺が行く。サラダは旗を頼むってばさ』

『ちょっと、ボルト勝手な事をしないで…ってもうっ!』

通信機の先で言い争う声。

しかしボルトは言い出したら聞かないのでサラダが諦めて旗へと先行するらしい。

対峙するボルトと対戦相手の水の国の下忍三人。

三人全員で攻めてきて取られる前に取る作戦のようだ。

『くそっ行かせるかよっ!』

数的不利を持ち前の天才的な忍術で切り抜けるボルト。

「水遁と雷遁?ボルトにあんな規模の忍術が撃てるチャクラが有ったかな?」

『サラダっ!』

『分かってるっ!』

サラダの方へと眼を向けるとそこには幻術で数を増やした旗がはためいている。

一個ずつ確かめていたら時間のかかるそれを写輪眼の幻術破りの効果で見破りサラダが旗を掴んだことで二次試験勝ち抜けを決めた。


日を置いた三次試験は個人トーナメント戦だ。

残った12名の内半数の6人が木ノ葉の忍、それも新人下忍だ。

観戦型武闘場に集められた受験者達。

「モンテ、トーナメントで当たったら手加減しないんだからね」

とチョウチョウ。

木ノ葉で残ったのはモンテ達7班とチョウチョウ達10班だった。

「あ、うん…わたしも今日は母様が見てるからね」

不甲斐ない試合なんてすれば家に帰れないよ…

「あー…ね。お互いがんばろうね」

そう言ってチョウチョウと拳を合わせた。


ボルト、サラダと一回戦を突破し、モンテの一回戦目が始まる。

モンテの一回戦の相手は砂隠れの里のシンキと言う忍。

舞台の上で対峙したモンテは相手を観察する。

砂鉄、かな?

シンキの周りをマントの様に覆う黒い何か。それはどうやら砂鉄の集合体のようだった。

土遁…いや、まさか磁遁?

「それでは、始めてください」

審判であるロック・リーの言葉で両者動き出す。

「まぁ、考えても仕方ないかな」

モンテは舞台を蹴って一直線にシンキへと向かう。

ザザザとシンキを覆っていた砂鉄がモンテの前を塞いだ。

「はっ!」

様子見と殴った拳。

中々硬い…砂鉄だから?

モンテの死角を突いて砂鉄を固めた鉄の拳が襲う。

「白眼に死角はないよ」

常人ならば死角だが、モンテには見えている。

一度下がって再び方向を変えて殴りかかるモンテ。

しかし、その攻撃も砂鉄で出来た壁に阻まれた。

再び距離を取るモンテ。

「無駄だ。体術主体のお前では俺は倒せん。降参しろ」

とシンキ。

「降参かぁ…出来れば良いんだけど……ひぃっ!!」

観客席から殺気を感じる。

「仕方ないから少しだけ本気出すね」

「本気だと?」

距離を取ったモンテの掌で回転するチャクラ。

そのチャクラを極限まで薄く延ばしていく。

「気円斬っ」

フリスビーの様に撃ちだされる回転するノコギリのような気弾。

「くっ」

そのモンテの技に何かを感じたのか、厚く砂鉄の壁を形成するシンキ。

キィーーンと一瞬火花を散らした後切断される鉄壁。

あわや直撃と言う寸前でシンキは気円斬をかわした。

「はぁ…はぁ…」

肩で息をするシンキ。

気円斬は観客席手前で霧散する。

「あぶない…殺しちゃう所だった。うん、この技はやめよう」

シンキがかわしたのではなく、モンテが操って軌道をかえたのだ。

シンキとモンテの立場が逆転した瞬間だった。

シンキは下忍離れした実力を持っていて、並の上忍でもシンキに敵う者はいない。

シンキより強いのは風影であり自身の義父である我愛羅くらいのもだと思っていた。

それ故にこの中忍試験も斜に構え、どこかつまらない態度を取っていた。

だが…

モンテは気円斬を使うのを止めると言う。

つまり手加減されているのは自分だと言う事をここで初めて自覚したのだ。

「すまない」

突然シンキがモンテに謝る。

「…?」

「驕っていた自分を恥じている」

とシンキ。

「ここからは手加減などと言う失礼はしない。全力で挑ませて頂く」

自分が挑戦者だと気合を入れ直すシンキ。

シンキが右手を伸ばすと、それに呼応するように砂鉄が流動してモンテへと延びる。

「く…」

密度の薄い攻撃に不利を悟ったモンテが舞台を蹴った。

それを陽動に鉄の拳がモンテを襲う。

振り下ろされた鉄の拳は舞台を砕く威力だったが、モンテには当たらず。

「はっ」

苦し紛れに撃ちだされた気弾。

それをガードせずにシンキは避けた。攻撃に砂鉄を使いすぎていたからだ。

通り過ぎた気弾だが、モンテが指を立てて引くような動作の後再びシンキを襲う。

「繰気弾」

「くっ」

今度は裂けずに砂鉄を叩き付けた。

その威力に気弾の形を維持できず消失する。

一瞬視線をモンテから外したシンキが再び戻したその瞬間…

「太陽拳っ」

モンテの両手が頭部を囲う様に構えられ、モンテの体から放たれたチャクラが発光する。

「がぁっ!」

まさかの攻撃にシンキや観客も含め大人数の目を眩ませた。

「くっ…」

視力を奪われたシンキだが、しかし彼の判断も早い。

すぐに砂鉄を操り自身を包み込んでいる。

攻撃するには不利で防御を固めたのだ。

その判断は正しい。

正しいのだが…

「はっ!」

ドンとシンキの体をモンテの拳が打ち抜いていた。

戻した砂鉄よりもモンテの動きの方が速かったのだ。

「ぐぅ…」

空中に撃ちあげられるシンキ。

だが、シンキは空中で砂鉄を操り浮遊。ようやく回復して来た視力でモンテを探した。

「かー…」

モンテの声が聞こえる方を見る。

「めー…」

するとそこには半身を引いてチャクラを掌に溜めているモンテの姿がった。

「はー…めー…」

シンキの忍術の中で殺傷能力の高い忍術である磁遁・鉄の翼。

しかし態勢の崩されたこの一瞬で使う事は難しい。

撃ちだしたとしてもモンテの攻撃の方が速い。

シンキはすぐに砂鉄を操り絶対防御の姿勢を取る。

「波ーーーーーーーーっ!」

モンテの掌から撃ちだされたチャクラの衝撃波は寸分たがわずシンキを捉える。

「くっ…」

シンキは球形では耐えられないとモンテのかめはめ波に対して円錐のように形を変え、ドリルの様に回転を加える事でモンテのかめはめ波をいなす。

「うおおおおおおおおおおおおっ!」

チャクラを振り絞り耐えるシンキ。一瞬でも気を抜けばすぐさま吹き飛ばされてしまいそうだ。

モンテは地面を蹴るとかめはめ波に乗ってシンキへと迫る。

「龍拳爆発っ!」

撃ちだされた拳がシンキの砂鉄を打ち破る。

ドンと音を立ててシンキの砂鉄が制御を外れて舞台へと散らばった。

チャクラを振り絞り意識を失ったシンキは力なく落下。

その落下を止めたのはどこからか流れ込んできた砂だ。

観客席の貴賓席にいる我愛羅が右手を突き出していた。

それはボクシングで言えばタオルを投げるようなもの。

スタと降り立つモンテ。

「勝者、モンテ」

ワーーーワーーーーーッ!

リーの勝利宣言に会場が沸いた。


舞台を降りるモンテ。

「おかえり、モンテ」

軽い感じで出迎えたのはチョウチョウだ。

「ただいま」

「分かってたつもりだけど、モンテって強かったのね」

とサラダ。

「かめはめ波って…ぷぷ」

ネーミングがツボにはまったのだろう、ボルトが笑い転げていた。

ゴチン

「てぇなっ!」

「かめはめ波を侮辱したら殺す」

モンテの圧に屈したボルトが首を高速で縦に振った。

「二回戦はあちしとだね。正々堂々」

「全力で」

こつんと右手を合わせるモンテとチョウチョウ。

二回戦目からは同里対決も仕方がない。



「シンキ」

「ここは……父上…オレは負けたのですね」

シンキが目を覚ましたのは医務室のベッドの上だ。

「ああ」

付き添っていた我愛羅が答える。

「どうだった?」

「強かったです。とても」

「世界は広いだろう」

「はい。自分がまだまだだと感じ、恥じ入るばかりです」

「そう畏まるな。これから経験してゆっくり大人になって行けば良い」

我愛羅がそう優しく声を掛けた。

「はい…」

そこでふたたびシンキは眠りに落ちた。









二回戦。

ボルトとシカダイの試合が始まった。

ボルトは得意の影分身で攻め、シカダイも影縛りの術のチャンスを伺っている。

奈良一族の影縛りの術は厄介で、一度捕まってしまえば抜けだすのが難しい。

術者を叩くか影を無くせば解けるのだが。

今気が付いた、太陽拳なら完勝じゃね?

モンテがううむと唸った。

自分が発光しているので影が出来ないのだ。

試合はボルトの機動力をシカダイの頭脳が上回り影縛りの術でボルトを拘束、決着がついたかに思えた。

「え?」

ボンボンボンと数を増やすボルトの影分身。

それはシカダイをぐるりと取り囲むほど。

「多重影分身…?」

ボルトのチャクラ量では出来る訳が無かった。

これにはシカダイもギブアップ。

会場はボルトの勝利に沸いていたが、その舞台に降り立つ七代目火影ナルト。

喜んでこぶしを突き上げたボルトにモンテとチョウチョウがした様に拳を合わせるかと思った瞬間、捻り上げられるボルトの腕。

カメラでクローズアップされスクリーンに映し出されたのは使用禁止忍具である化学忍具だった。

これによりボルトは失格。

「ボルト…」

心配そうに声を上げるサラダ。

「え?もしかして二次試験とかもボルトが失格扱いになったらわたしも失格になるんだけど…」

「そーよねー」

重大な事に気が付いたモンテとどうでも良さそうにポテチを食べているチョウチョウ。

この混乱の中、化学忍具班の主任を務めている遠野カタスケが舞台に乱入し、化学忍具の売り込みを始めた。

どうやらボルトはこのカタスケに良いように利用されたようだ。

良い感じに中忍試験が混乱している中、更に混乱させる存在が空中から現れた。

「なに、この嫌な感じ」

とチョウチョウ。

「白眼」

白眼で空中に止まる二人組を見ると白い肌に薄紫の虹彩をした目、頭には角が生えていた。

「大筒木…カグ…ヤ?」

「モンテなんて?」

それはNARUTOのラスボスであった大筒木カグヤによく似ていた。

その彼らから無慈悲に振り下ろされる攻撃は試験会場を倒壊させる。


ちょっとっ!聞いてないんだけどっ!

降りかかる攻撃を避けながら一般人を逃がすモンテ達。

まさかカグヤはラディッツだったとでも言うの!?

一年後にやって来たナッパとベジータ的なかんじかっ!?

冗談じゃ無いわよっ!

折角忍界大戦とは無縁の時代だと思っていたのにぃっ!

あの二人組がナッパとベジータなら最悪の事態である。

なぜならナッパですらラディッツの二倍以上強いのだから。

ついでにベジータなら十倍だよ。いや、誰に言っているんだろうわたし…

「わははは、わはははははは」

高笑いしつつ会場を破壊する大筒木モモシキと名乗った誰か。

手のひらに輪廻眼っ!?キモイんだけどっ!

大筒木モモシキの両手には輪廻眼が埋め込まれ、輪廻眼の能力だろうか遁術の類を吸収、増幅して撃ちだしている。

モンテは観客席にいた一般人を会場外へと避難させる。

他の下忍も自分に出来る事を精いっぱいやっていた。

ナルトを一番に襲っている所を見るに目的は尾獣で間違いないだろう。

ドンと空気が震え、会場の上空に巨大なチャクラが渦巻く。それは尾獣玉もかくやと言う規模の攻撃だ。

その攻撃を会場へと無慈悲に振り下ろすモモシキ。

モンテはそれを会場の外から見ていた。

あれが爆発すれば木ノ葉一体ただじゃすまないじゃない、もうっ!

面倒だけどどうにかしないとと身構えた時、会場から現れるのは九尾のシルエット。

「七代目」

九尾のチャクラがその巨大な球体を包み込み、爆発を抑えたが、収まった爆風の後に白眼で見れば倒れ込むナルトが見えた。

スタと巨漢がモンテの前に降り立つ。

大筒木キンシキとモモシキが言っていたか。

「お前にも来てもらうぞ」

「なるほど、目的が尾獣ならそりゃ来るよね」

モンテの中には四尾が封印されている。

「でも」

とモンテ。

「一番にわたしのところに来てくれて良かった」

「何を言っている?」

「チョウチョウやワサビの所じゃ無くて、本当に…」

『おう、やるのか』

『もちろん。力をかして』

周りの人間の避難は完了しているし、人の目も少ない。

『しょうがねーな。全力で行くぞ』

『うん』

四尾と協力してモンテは人柱変化。

「はぁっ!」

膨れ上がる紅いチャクラがその体を包み込む。

するとモンテの体に変化が現れた。

体は所々紅い体毛に覆われ、臀部からは尻尾が一本生えていた。

目の周りを紅い隈取が覆い、あふれ出たチャクラがスパークしている。

それは一つの人柱変化の究極。

巨大化する尾獣の力を人の身にまで圧縮したものだ。

「な、なんだそれは」

見た事のない禍々しさにキンシキが慌てる。自然と体も下がったようだ。

「怯えている…のか…?」

「超サイヤ人4…」

『がははは、1や2がある訳じゃねえがなっ』

『う、うるさいよ。悟空くん』

さて、と。

地面を蹴ったモンテの姿がブレる。

「消えた?…がはっ!!」

次の瞬間モモシキの懐に入ったモンテの肘うちに体をくの字に歪ませた。

打ち上がるキンシキの巨体。

その巨体よりも地面を蹴ったモンテが速く上空へ現れ拳を打ち付けた。

「がは…」

キンシキの背中が地面を砕く。

キィーーーン

「気円斬」

空中から撃ち下ろされる円盤。

「なめるなっ!」

キンシキがチャクラ武器で気円斬を受け止める。

ギギギギギと二つがぶつかりチャクラが削れられる。

「今のわたしって忍者なんだよね」

一つ目の気円斬の影から現れたのは二つ目の気円斬だった。

「影気円斬の術、なんちゃって」

「うぉおおおおおおおおっ!」

両手で受け止めていた気円斬を片手で受け止め、開いた手で二つ目の気円斬を受け止めるキンシキ。

どうにか二つの気円斬を受け流したキンシキは肩で息をしていた。

「はぁ…はぁ…なにっ!?」

「はっ!」

いつの間にかキンシキの後ろに回り込んでいたモンテの回し蹴り。

「ぐっ…」

キンシキはくぐもった声を上げて再び空中へと投げ出される。

「かーめー…」

モンテの掌に集まるチャクラ。

「はー…めー…」

その圧はドンと空気を震わせ、シンキとの戦いで使ったそれとは別次元の力を感じる。

「波ーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

真っ直ぐにキンシキへと迫るモンテのかめはめ波。

尾獣玉をも上回る威力の閃光がキンシキを包み込む。

「モモシキさまーーーーーーーっ…」

末期の叫びも閃光に飲み込まれキンシキは消滅。

閃光は宇宙空間まで達してようやく消失した。

「ふぅ」

息を吐いたモンテの姿は元に戻っていた。

人柱変化出来るだけのチャクラが無くなったからだ。

「まだ持続時間が短いかな」

だがナッパはやっつけた。

『おいおい、月すら破壊しかねない威力の攻撃をしてから言うセリフじゃねーな』

悟空がやれやれと肩を竦めた。

『本来なら太陽系くらい破壊できますからー』

と強がるモンテ。

「キンシキを……よくも…」

モンテの目線の先の上空に現れたのは気絶しているナルトを担いだモモシキだ。

「楔(カーマ)を刻む暇もなく消滅するとは…戯けめ」

キンシキを罵るモモシキだが、その眼は白眼を発動し憎々し気に見下ろしている。

まだベジータが居たんだった。

『悟空くん、もう一回は…』

『あー、チャクラが溜まるまではむりだな』

『だよねー』

すぐには人柱変化出来ないらしい。

「父ちゃんっ!」

「ボルトっ!?」

駆け付けて来たボルトが上空を見つめている。

「くっ父ちゃん……大丈夫か、モンテ」

「今、大丈夫じゃなくなった…」

「は?」

何かの術で気絶したナルトを浮かばせると自由になった両手をこちらに向けるモモシキ。

「猿どもめが」

忌々しいと振り下ろされた左手の先から炎を象った巨大な鳥が撃ちだされる。

キーと鷹が鳴くような音を立てて襲い掛かる炎鳥。

「気円斬」

キーンと高速回転するモンテのチャクラ。

「忍術はダメだってばさ、吸収されて返されちまうんだ」

「くっ…」

チャクラを霧散させるモンテの眼前に炎鳥が迫る。

「界王拳っ!…八卦空掌っ!」

モンテのチャクラが膨れ上がり、手のひらで空を切った。

撃ちだされるのは空気圧の拳。

真空の拳が炎鳥を打ち破る。

「す、すげーってばさ」

「感心してないでどっか行ってっ!」

「モンテ?」

「はっきり言って邪魔っ!なんで来たのよっ」

モンテにも今は余り余裕が無かった。

「これならどうだ?これは狐も止められなかったぞ」

と言ってモモシキが出したのは巨大な黒球。

尾獣玉もかくやと言うチャクラの塊だ。

「く…」

モンテだけなら逃げられる。

だがあれが炸裂したら今度こそ木ノ葉の里は全滅だろう。

「あ、ああ…」

ボルトが腰を抜かしている。

「もってよわたしの体……界王拳、10倍だぁっ!」

ドンと赤いチャクラが噴き出すモンテ。

そして腰を引いて両腕を合わせる。

「かーー…」

ぐっと激痛が走るが気力で無視をして更に気を溜めた。

「めーー…」

「あははは、これで終わりだ」

迫りくる黒球。

「はーー…めーーー」

後は撃ちだすと言うタイミングでモンテの目の前にバサリとマントをなびかせた人影が割り込む。

「悪い、遅くなった」

「父様っ!」

驚いたのか、安心したからかモンテの両手からチャクラが霧散していた。

「誰だか知らんが諸共死ね」

高笑いするモモシキ。

モンテの前でかばう様に現れた男性は一度モンテを見ると再び黒球を見上げると右手を突き出した。

男性の額に刻まれた◆模様。

その◆から幾何学模様が全身に走る様に伸びて行き、その右腕も覆った。

次の瞬間、まるでその腕に吸われるようにその黒球は消失した。

「なにっ!?」

驚きの声を上げるモモシキ。

「吸収、した?」

ボルトが信じられないと呟く。

さらに模様が全身に広がり物質化したチャクラがマントの様に靡いていて、その背中に九つの黒い球を浮かばせていた。

それはまるで伝説に聞く六道仙人のようだった。

「楔(カーマ)だと…貴様、大筒木の…」

モモシキの表情が歪んだ。

「アオのにーちゃん…」

そうボルトが男性を呼ぶ。

モンテとアオを庇う様に立つ男性の名前は日向アオ。

日向家に転生したアオの姿だった。

「あいつは忍術を吸収してしまうんだってばさ」

「なるほど、輪廻眼か」

白眼で覗いたモモシキの両手には輪廻眼が見て取れた。

「厄介だな」

と言って取り出したのは四枚の手裏剣。

「父様?」

と疑問の声を上げるモンテをよそにアオはその手裏剣を投擲。

「当たる訳無いってばさっ!」

ボルトの苦言。しかし次の瞬間…

「ぐぁあああああああっ!!!」

両手と両目にいったいどういった軌道を描いたのかも分からない現象で突き刺さる四枚の手裏剣。

「チートヤローが…」

「モンテ、何か言ったか?」

「うーん、何も言ってないよ、父様」

さて、と。

「止めを刺してくるか」

と動き出すアオよりも早く事態は急変していた。

「くそが、くそが、くそが…忌々しい猿どもの分際でっ」

モモシキが手裏剣によって失明した両手の輪廻眼をくり抜くと口に入れた。

「まだ足りないか…白眼もくれてやる」

自身の両眼をくり抜き捕食するとその体に変化が現れた。

角はさらに伸び、纏めていた髪の毛はほどけ、体中を呪印が覆っている。

失ったはずの両目は視力を取り戻し、モモシキの額には金色の輪廻眼を開眼していた。

「存在の格が上がったな…面倒な」

「父様?」

「隠れていろ。すぐにやっつけて来るから」

そう言ったアオはふわりと空中へと飛び上がる。

モンテはアオの言いつけ通り、小さな身を隠せるほどの瓦礫を見つけると白眼を通してアオの姿を追った。

モモシキと対峙するアオ。

「輪廻眼だと…?カグヤめ、面倒な事を」

モモシキの言う様にアオの両目は蒼銀の輪廻写輪眼へと変貌していた。

最初に動いたのはアオだっだ。

まるで瞬間移動したかのように一瞬でモモシキの後ろに現れたアオは刀に形態変化させた求道玉で斬り付ける。

完璧な奇襲のはずだったが、モモシキは体をよじって避ける。

「っ!?」

これにはアオも予想外だったようで驚きの表情を浮かべている。

空中で繰り出される体術戦に空気が震える。

モモシキは正に怪力乱神と別次元の強さを発揮している。しかしアオはそれらをいとも容易く受け流し反撃。

ダメージを負っているのはモモシキだ。

「なるほど、未来が視えているな」

アオがつまらなそうに呟く。

それがアオの攻撃が致命傷にならない理由だった。

「くそ…なぜだっ!なぜこの我が猿なんかに後れを取るっ!」

「それはお前に修練が足りないからだ」

圧倒的な力で他者をねじ伏せて来たが故の実力不足だった。

ドンと殴りつけられるモモシキ。

「くそがっ!」

迫るアオに自爆覚悟で近距離でチャクラを爆発させた。

その隙にモモシキは地表に降りると何かを見つけたようだ。

「ぐぅ…は、放せ…」

「ボルトっ!」

隠れていたボルトを掴み上げ人質でも取るかのようにアオへと向けた。

「……お前の見た未来では次はどうなった?」

「はっ!」

突然音も無く現れたアオがモモシキの腕を切り飛ばしボルトを助け出す。

「ぐぅぅ…」

アオの両目を見れば輪廻写輪眼ではなく、光輝く瞳孔をしていた。

「その眼は、まさかっ!」

「ああ、この眼にはお前の死が見える」

「バカな…」

次の瞬間、一瞬で17に分割されたモモシキは、求道玉の効果で肉片も残さずに消滅していく。

「我を倒しても大筒木の脅威は続く、無意味な事よ」

「大筒木が襲って来るのならその全てを殺しつくすまで」

「ふ、愚かな猿だ…」

「負け惜しみだな」

「そうかもな…選別だ…」

モモシキの額の輪廻眼が一人でに宙を浮きアオの掌に移動する。

「これは?」

「我の呪いだ。精々生き争うがよい。その眼は災いを呼び寄せるだろう」

アオはそんなものは要らないと握り潰そうとしてモモシキに止められる。

「潰さぬ方が良いぞ。無くせばさらに混沌となろう」

「まさに呪いだな…」

「精々頑張ること…だ…神殺し、どの…」

モモシキは不吉な予言を告げるとサァと塵となって消えた。

アオはその輪廻眼を巻物に封印すると地上へと降りた。


「終わったの…?」

「ああ、大筒木は消滅したよ」

近付いて来たモンテの問いにアオが答えた。

「おーい、ボルト、モンテっ!」

遠くからサラダが駆け寄って来た。

一緒に居たサスケは空中で取り残されていたナルトを救出に向かっているようだ。

「はっ、六代目様っ!」

「サスケの娘か」

「う、うちはサラダですっ!」

サラダの背筋が伸びている。

「そんなに緊張する必要は無いわよ。ちょっと料理が上手な若作りのふつーのおっさんだから」

とモンテ。

「ちょっとモンテ、ひとの幻想を壊さないで頂戴。それと料理お上手なんですね」

キラキラした目でアオを見つめるサラダ。


「みんな無事っ!?」

「あれ、ハナビ先生?」

サラダが駆けてくるハナビを見て言った。

「モンテっ!」

ハナビが一番に抱き着いたのはモンテだった。

「ちょっと痛いよ母様」

苦しいと抗議の声を上げるモンテ。

「え、母様?」

理解不能と呟くサラダ。

「あれ?サラダって知らなかったか。ハナビねーちゃんってモンテの母ちゃんだってばさ」

「えーーーーーーーーっ!!」

本当に知らなかったようである。


後で聞いた話だ。

「え、じゃあイズミさんは?継母なんじゃ…」

「何を言ってるってばさ。イズミねーちゃんもハナビねーちゃんもアオのにーちゃんの奥さんだろ」

何を言っているんだとボルト。

「え?」

「あまり利用する奴も居ないけど、木ノ葉の里は重婚認められているぞ」

となんてことない事のように言うボルト。

「え…ええっ!?」

「忍者も昔は早死にだって言ってたからな。そう言う事もあるだろ」

「え、じゃあもしかして香燐さんも…」

「おーい、サラダ大丈夫か?」

「ぱ、パパッ!」

この場に居ないサスケを問い詰める為に全速力で駆けていくサラダ。

と言う話がサラダとボルトの間にあったと言う。


大筒木モモシキ、キンシキの襲来で中忍試験は取りやめ、再試験する事なく皆里に戻った。

「大筒木、何者なんだってばさ」

任務の帰りの雑談にボルトが切り出した。

「どうやらもう一人いるらしいわ」

会場にはもう一人大筒木が現れていたとサラダが言う。

「さあ、ただ父様も忙しそうに…してないわね。何か知っているみたいだけど」

モンテは違和感を感じて黙り込んだ。

「わたし達、強くならなきゃだね」

「ああ、あんな思いはもう二度とごめんだってばさ」

サラダの決意にボルトも頷いた。 
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