おっちょこちょいのかよちゃん
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269 魔女と公爵夫人
前書き
《前回》
黒魔術で精製された偽の杉山を撃破したかよ子達はラ・ヴォワザンという女が使用した黒魔術の脅威を思い出す。そしてフローレンスは現時点での戦争主義の世界と平和主義の世界の境界地点にて赤軍の到着を待ち、西川と佐々木を解放する代わりに全ての領土から撤退し、平和主義の世界の領土として返還するという条件だったが、赤軍の長・重信房子はその条件を反故にし、トロツキーを召喚してフローレンスの抹殺を図る。だが、フローレンスも赤軍が約束を守らないと既に読んでおり、本部守備班を集結させて赤軍やトロツキーを強制的にその場から撤退させる事に成功させた!!
一人の女性が針金を持って進んでいた。
(ふ、あの小娘・・・。強くなったようだが、杖はその分取りがいがある・・・。今度こそ杖は私の物にさせてもらうわよ・・・!!)
彼女の名はラ・ヴォワザン。持っている針金である人物達を探知していたのだった。
藤木は昼食後はりえと遊びたかったのだが、りえの体調も考慮したのと、明日のスケートで風邪を引かせてはならないと見て、引き続き彼女を寝台に休ませていた。藤木はその後は遊女と遊んだが、それからはりえが部屋で寝ている中、一人で部屋にいた。
(りえちゃん、か・・・。またピアノ弾いてくれるかな・・・?)
そしてりえが起きた。
「・・・、藤木君、そこにいたの?」
「あ、うん、りえちゃんが心配でね。明日スケートする姿を見せられるかなって思って。折角僕の唯一の取り柄を見せたくって・・・」
「ありがとう。もう大丈夫よ」
「あ、そうだ・・・。またピアノ弾いてくれたらって思って」
「うん、いいわよっ!私のピアノ応援してくれて嬉しいわっ!」
りえはピアノを弾き始めた。藤木はりえが弾くピアノの音色の虜となっていた。
(ピアノ、か・・・。やっぱり、ピアノが上手な子って可愛いな・・・)
藤木は嘗て好きだった女子とりえの姿が重なる。だが、昔の事を思い出すんじゃないと己を叱った。
(なんで笹山さんの事を・・・!!)
藤木はりえのピアノに集中した。
「りえちゃん、やっぱりピアノのお姫様だよ!」
「ピアノのお姫様?藤木君ったら面白い事言ってっ・・・!」
りえはピアノの椅子から離れると藤木に抱き着いた。
(りえちゃん・・・!!)
藤木は更にりえに照れるのだった。
夕方となった。かよ子達藤木救出班はある古城がある近くに来ていた。
「おお、凄い城じゃのお〜」
友蔵は呑気に城に感心していた。
「でも、あのお城って誰かがいるんじゃないかな?」
「でも誰かいる様子はねえぜ」
大野の見聞の能力を以ってしても敵の気配を感じ取る事はできなかった。
「なら〜、アタシゃこのお城で過ごしたいよお〜。なんだかお姫様になった気分でさあ〜」
「生憎だが、辞めておけ。罠を感じる」
石松が諫めた。
「ぶー・・・」
まる子は不貞腐れた。かよ子は偽の杉山との戦いを思い出していた。
(杉山君・・・)
今本物の杉山の近況が気になる。もし今無事であるならばできれば赤軍や戦争主義の世界の人間達から手を切って戻ってきて欲しいとばかり願うのだった。
紂王の屋敷での夜。りえの咳は既に収まっていた。藤木は彼女を明日のスケートに連れて行けると思えるとホッとした。
「りえちゃん、咳が止まって良かったね」
「うん、私喘息気味なんだ・・・」
「そっか、風邪ひかないようにしないとね」
「そうだ。藤木君って唇紫だけど、大丈夫なの?」
「え?ああ、これは生まれつきなんだ」
「そっか、顔色いつも悪いのかなと思ったけど、そうじゃないのね」
「いやあ・・・」
そして二人は一緒に眠るのだった。
そして翌朝。一人の僧と三人の高校生が進んでいた。高校生の名は島あけみ、高崎ゆり子、中本遥人。彼らは岡山県から来た高校生で領土攻撃班に割り当てられていた。高崎には杖を持っているのだが、それには様々な雲を精製する能力があり、飛行可能な雲を出して皆を乗せて飛行していた。
「法然さん、ここに敵が来とるノ?」
島が聞いた。
「ええ、その通りです。皆さん、心の準備をよろしくお願いいたします」
法然。嘗て平安後期から鎌倉時代までの上人として生きていた僧は敵を察知していた。
「おうよ」
中本はポケットから勾玉を取り出した。この勾玉は遠距離攻撃および特殊な防御を行う事が可能である。また彼は見聞の能力を有している為、敵の気配も察知可能だった。
「向こうの方角だな!」
四人はやや東寄りの方角へと向かう。
ラ・ヴォワザンは針金が示す方角と共に進む。
「おお、こちらにも近づいているのか・・・。嬉しい話だな」
そして別の女性と遭遇する。
「やあ、おはよう、ラ・ヴォワザン」
「ああ、これはモンテスパン公爵夫人。おはようございます」
「レーニンの命を受けてまた杖の所有者を捜索しているようだが」
「ああ、今その所ですが、順調ですよ。何しろ私が用意した人形を戦わせてその人形に探知能力をつけておいたのです」
「そうか、なら易々と探し出せるわね。私にも手伝わせておくれよ」
「ええ、勿論」
二人は杖の所有者を討伐すべく進みだす。しかし、途中でラ・ヴォワザンが怪しげな気配を感じ取った。
「どうしたのか?」
「向こうの方から邪魔が入ったようです。返り討ちにしましょう」
そこに僧が一名、そして少年少女三名が雲の上に乗って近づいて来ていた。
「おい、そこのあんたら!」
「何よ、邪魔ね。消えて貰おうかしら」
モンテスパン公爵夫人は攻撃した。しかし、結果が発動されて防御された。
「ふ、極東の宗教の力ね」
モンテスパン公爵夫人はそう呼んだ。
「左様。この浄土の力で防がせて貰った」
僧は答えた。
「我が名は法然。貴方方を成敗させていただく!」
「ふ、やれるものならやってみな!」
一人の男子が光線の遠距離攻撃を仕掛けた。
「甘い!」
モンテスパン公爵夫人はその光線を防御した。それを歪曲させて跳ね返す。
「南無阿弥陀仏!」
僧が念仏を唱えて光線を消滅させた。
「次は貴方方の番ですぞ」
「やれるものならやってみな!」
ラ・ヴォワザンは毒入の瓶を大量に投げた。
「危ない!」
一人の女子がブレスレットを外し、盾に変化させた。毒瓶を防ぐ事に成功した。
「やるね!ならこれはどうかな?」
ラ・ヴォワザンはもう一個、瓶を投げた。盾に命中した。そして盾は元のブレスレットに戻ってしまう。
「なぬ!?」
「ホラホラ、それだけじゃ突破できないわよ!」
モンテスパン公爵夫人が熱の衝撃波を放った。
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・」
法然と名乗った僧は必死で唱えて結界を張った。衝撃波の防御には成功したが、モンテスパン公爵夫人の衝撃波が止まる様子もない。
「その結界、消させて貰うよ!」
ラ・ヴォワザンが毒瓶を投げた。だが、どこからか雷雲が現れた。雲が落雷させ、毒瓶を破壊したのだった。
「ふ、毒瓶は無限にあるのさ!」
ラ・ヴォワザンは毒瓶を投げた。
「そしていつまでも結界で守れるとは思わない事よ!」
モンテスパン公爵夫人は急に衝撃波を放つのをやめたと思うと、今度は念動力を発した。結界が強引に公爵夫人の元に持っていかれる。
「終わりだね!」
ラ・ヴォワザンは大量の毒瓶を投げた。雷雲が溶かされ、一人の僧と三人組の高校生に毒を浴びせる。だが、何とか彼等には武装の能力を持つ者がおり、防がれた。
「異能の能力か!」
ラ・ヴォワザンは別の毒を振り撒いた。煙が舞い、異能の能力が無効化された。
「もう何もできんよ!」
「な、南無阿弥陀仏・・・!!」
法然はもう一度結界を発動させるが、公爵夫人がそれを念動力で奪ってしまう。
「纏めて吸い込まれるかいい!!」
ラ・ヴォワザンは手から黒い穴を出して纏めて吸い込もうとした。だが、その時、何らかの刃が飛んできてラ・ヴォワザンの腕を切り落とした。
「あああ!!」
ラ・ヴォワザンは痛みに呻いた。そして周りを確認した。そこには別の集団がいた。
「あ、貴女は・・・!!」
お待ちかねの杖の所有者が駆け付けていた。
後書き
次回は・・・
「黒魔術と法力」
藤木は己の唯一の取り柄であるスケートをする姿をりえに見せようとするべく、雪山へと出発する。一方、ラ・ヴォワザンとモンテスパン公爵夫人の前にかよ子達が到着した。法然と岡山の三人の高校生と協力してかよ子達はラ・ヴォワザンとモンテスパン公爵夫人の討伐を図る・・・!!
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