癇癪持ちの老女が

　その子犬母親そっくりの白い柴犬で雌の彼女はミニと名付けられてだった。
　夫婦で家族として一緒に暮らす様になったが。
「ミニ、ご飯よ」
「ミニ、ブラッシングするわね」
「ミニ、お散歩行きましょう」
「ワンッ」
　ミニは治子によく懐いてだった。
　彼女の世話にいつも嬉しそうに尻尾を振って元気に応えた、そして。
　常に彼女の傍にいてだ、彼女によく懐いて彼女を癒した。すると癇癪もなくなった。善積はそれを見て姉に話した。
「感謝雲なくなったよ」
「そう、よかったわね」
「やっぱり環境が変わってな」
「そのストレスでね」
「癇癪起こす様になってな」
「それで癒されると」
「ああ、癇癪もな」
　これもというのだ。
「なくなってな」
「元の治子さんになったわね」
「何でもない様で」
「急に環境が変わるとね」
「ストレスになるんだな」
「そしてそれが溜まるとね」
「変わるんだな」
「そうね」
　由里は弟の言葉に頷いた。
「穏やかな人も」
「だからそうした人にはストレスを解消するな」
「そうした風にしないとね」
「そだな、じゃあな」
「これからもね」
「ミニにはお世話になるよ、俺も一緒にいて嬉しいし」
　善積は自分もと笑顔で話した。
「奥さんとミニの散歩に行って運動や気分転換になって見てるだけで癒されて」
「いいのね」
「ああ、だからな」　
　それでというのだ。
「これからもな」
「治子さんとミニと一緒になのね」
「楽しく過ごすよ」　
　見れば彼もストレスはなかった、そうしてその顔で自宅に帰って妻とミニに笑顔で挨拶をした。そのうえで笑顔のまま過ごしたのだった。


癇癪持ちの老女が　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　２０２３・２・２０