展覧会の絵
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第十七話 死の島その十四
意味がわからなかった。それでだった。
警官達は首を捻りながら由人の無残な骸を検死した。その結果わかったことは。
「急所はどっちも握り潰されてたらしいぞ」
「で、両腕と両脚は何か重いもので潰されててな」
「内臓小さい生き物に食い破られてたってよ」
「どうやったらそんなえげつない殺人ができるんだよ」
「普通そこまでしねえよ」
八条学園の中でもだ。その惨たらしい殺し方が話題になっていた。
「何か普通の殺し方じゃないよな」
「あれか?シリアルキラーか?」
「山岡達を殺した奴と同じじゃないのか?」
「藤会殺して回った奴ともな」
「ああ、殺し方そっくりだよな」
「えげつないところがな」
藤会のことも思い出される。それで話が為されるのだった。
「これってどうなんだろうな」
「人間か?本当に」
「化け物か悪魔かよ」
「そういう奴がやってるのかよ」
こうした疑問の声も出て来ていた。果たして人間がしたことかとだ。
「人間じゃなかったら何だよ」
「藤会とかあの四人だったら殺されてもわかるけれどな」
「ああ、ヤクザに不良だしな」
「いなくて清々するよ」
ヤクザ者は言うまでもなくだ。あの四人にしても学園内で悪事を繰り返してきていた。それで嫌われるのも当然なのだ。だから殺されても誰も悲しんではいなかった。
だがそれでもだった。問題はその殺し方だった。
「本当に誰だ?」
「何処の誰がやったんだ」
「藤会から絶対に同じ犯人だろ」
「マジで頭いかれてる奴か?」
「キチガイじゃねえのかよ」
その殺し方に明らかな狂気があるのではというのだ。だが。
猛は雅にこっそりとだ。こう囁いていた。今二人は校舎の屋上に二人でいる。そこで二人でいてだ。そのうえでこう囁いたのである。
「理事長が殺されたのは」
「ええ、あの四人もね」
雅も猛の言葉に応える。
「正直なところね」
「ほっとしてる?」
「それで嬉しくもあるわ」
そうだというのだ。そう考えていると。
「だって。私にあんなことしてくれたから」
「だよね。ところでお薬は」
「禁断症状のこと?」
「うん。それは大丈夫なの?」
「最初はね」
どうだったかというのだ。その時は。
「酷かったわ」
「やっぱりそうだったんだ」
「ずっと。お家の中に引き篭もっていた時に」
その時にだというのだ。
「苦しかったわ。けれどね」
「けれどって?」
「それ以上に」
禁断症状、それ以上に辛かったことがあったというのだ。
そしてそれは何かもだ。雅は猛に話した。
「猛の前であの姿を見せたことが」
「辛かったんだ」
「心も身体も」
そのどちらもだというのだ。
「辛かったわ。だからああして」
「線路に身を投げようとしたんだ」
「そうだったの。けれどね」
だがそれでもだというのだ。
「今は大丈夫だから」
「そうなんだ。それは何よりだよ」
「ええ。それで理事長もあの四人もいなくなって」
それでだと。雅は上を見上げた。そのうえで猛に言うことは。
「ほっとしてるわ」
「もう雅を苦しませる人達はいないね」
「ええ、いなくなったわ」
そしてそのことがだというのだ。
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