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できものを侮るな

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第一章

                できものを侮るな
 高校の部活がはじまる前に更衣室で着替える時にだ。
 前久保唯、波がかった黒髪を肩の長さで切り揃えはっきりした大きな目を持ち色白ですっきりした頬と顎それに赤い小さな唇と一六〇位の見事なスタイルの彼女は後輩の一人にこう言われた。
「先輩背中にできもの出来てますよ」
「えっ、そうなの?」
「ちょっと大きな」
「そんなの出来てたの」
「はい、今気付いたんですが」
「そうなのね」
 制服を脱ぎ部活の練習の時に着るジャージに着替える為に白のブラとショーツだけの恰好で応えた。
「どんなのかしら」
「ええ、ご覧になられた方がいいですよ」
「そうするわね」
 後輩に言われるままそのできものを更衣室にある鏡の前に背を向けて立ってそこから振り向いて自分の背中を見た、すると白い背中の右の肩甲骨の下辺りにだ。
 直径二センチ位のできものがあった、それでだ。
 唯は自分で確認して眉を顰めさせて言った。
「赤いし先に腫れてる感じだし」
「痛くないですか?」
「別にね」
「あっ、触らない方がいいです」
 後輩はできものに手をやろうとした唯を止めた。
「そういうのは」
「そうね、こういうのって触るとね」
「下手に潰したらバイ菌とか入りますから」
「そうよね」
「お医者さんに診てもらった方がいいです」
「そうした方がいいわね」
 部長も言ってきた。
「まだ時間あるからね」
「病院にですか」
「今すぐにでも行って来たら?学校のすぐ傍に市立病院あるでしょ」
「あそこに行って」
「そしてね」
「診てもらうことですか」
「ええ、そうしたらいいわ」
 こう唯に言うのあった。
「とりあえず今日の部活は休んで」
「それで、ですか」
「診てもらいなさい」
「大丈夫じゃないですか?」
 唯は首を傾げさせつつこう返した。
「できもの位」
「いや、何か大きいですし」
「形もおかしいし」
 後輩も部長も言ってきた。
「診てもらった方がいいわ」
「これはね」
「それじゃあ」
 二人に言われてだった、咲も診てもらうことにした。それで制服を着直して病院に行って実際にだった。 
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