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第十六話 最後の審判その九
第十六話 最後の審判その九
「それもとても汚いね」
「言ってくれたな、おい」
「そこまで言ったら覚悟できてるんだろうな」
「手前の目の前でその女弄んでやるからな、また」
「そうしてやるからな」
「できればいいね。そんなことが」
猛はすごまれてもだ。今は態度を変えなかった。
そのうえで対峙しながらだ。こうも言うのだった。
「君達みたいなのにね」
「言ってくれたな、それじゃあな」
「痛い目に遭わせてやるからな」
四人はそれぞれ棒やナイフも出した。そのうえで猛と雅に迫る。その彼等を見てだ。
雅は極めて冷静にだ。自分の左隣にいる猛にこう言った。
「四人で。しかも武器を持ってるから」
「雅もやるの?」
「念の為にね。それにね」
雅も四人を見据えていた。その顔には復讐の念があった。
その顔でだ。こう猛に言ったのである。
「私もこの連中には借りがあるから」
「そうだったね。僕よりもずっとね」
「それを帰させてもらうから」
「じゃあ今から二人でね」
「ええ、倒しましょう」
こう言い合ってだ。そのうえでだった。
二人でその武器を持ち自分達に向かう四人に向かった。最初は。
猛はナイフを持っている鳩山のその右手を蹴り上げた。それで彼のナイフを弾き。
それからすっと前に出てみぞおちに拳を入れた。続いてだ。
右にいた菅の首に手刀を入れ背中に回り蹴りを入れた。その攻撃を受けて菅は手に持っていた鉄パイプを放してしまった。猛はそのパイプをすぐに遠くに投げた。
雅は二段式特殊警棒を持っている山岡の肩に一撃を浴びせ胸を蹴った。それからだ。
木刀を持つ一川の急所を蹴った。こうしてだ。
二人で四人を瞬く間に倒した。そうしてから倒れ伏す彼等に言うのだった。
「これから。何があってもね」
「私達は負けないから」
「僕達はずっと二人でいるよ」
「もう貴方達になんか邪魔させないから」
こう言ってそのうえで体育館裏を去るのだった。四人はダメージの為暫くは動けなかった。
猛と雅は体育館裏を出るとだ。何もなかった様に二人で笑顔でこう話した。
「じゃあね」
「今から部活ね」
「まずはランニングだけれど」
「猛の走り方はちょっと駄目ね」
完全に先程の喧嘩のことを置いてだ。雅は猛に笑顔でこう言った。
「もっと。力を入れないで走る方がいいわ」
「えっ、力入れないと駄目なんじゃ」
「力の入れ方よ。猛のはね」
「どんな感じになってるのかな」
「上半身、肩に力が入ってるのよ」
「そうなんだ」
「確かに腕を振ればそれだけ勢いが出るけれど」
雅はその猛の一見すると弱々しい肩を見て述べた。
「それに腹筋だって使うけれど」
「走るのは全身で走るよね」
「そうだよ。けれどね」
「僕の場合は肩に力が入り過ぎてるんだ」
「それよりむしろ腹筋使った方がいいのよ」
「腹筋なんだ」
「そう、腹筋ね」
二人で学校の空手部道場に向かって歩いている。その中でだ。
雅は猛のその腹を見る。制服の上からだとただ痩せているだけの腹だ。だが実際はどうなのかを雅は遂に知ったのである。あの夜に。
だからこそ猛のその腹をいとおしげに見ながらだ。こう言うのだった。
「猛は腹筋はしっかりしてるから」
「そこを使えば」
「そう。よくなるから」
「じゃあこれからは」
「腹筋をもっと使ってね。肩よりもね」
そうして走ればいいというのだ。
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