おっちょこちょいのかよちゃん
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260 薔薇の花束
前書き
《前回》
レーニンは赤軍の西川と東アジア反日武装戦線の佐々木の奪還を多くの者に指令する。その頃、杯の奪還に向かうゆり達はトロツキーとぶつかり、交戦する。苦戦の末に追い詰めるもトロツキーを取り逃がし、その上、何処からか声が聞こえる。それが戦争主義の世界の長の声であり、杯の場所を突き止めるのは無理だと告げて声は消えるのだった!!
オリジナルキャラ紹介・その26
山元たかし(やまもと たかし)
福岡の小学生で羽井玲衣子の友達。初登場175話。見聞の能力を所有する。水を自在に操って攻撃・防御を行う水鉄砲を所有する。野球が好きらしい。好きな食べ物は焼きそば、豚カツ。
トロツキーは杯を奪還しに向かう者達の猛攻で何とか緊急離脱する事に成功した。
「はあ、手強い奴等だ・・・。レーニン様に連絡しないとな」
トロツキーはトランシーバーを取り出した。
「こちらトロツキー。レーニン様。杯を奪還する女どもとソーグーし、やられそうになった為、何とか逃げ延びました」
『そうか、それだけ大変だったわけか。だが、その移動で貴様は更に平和主義の世界の方角へ進めている筈だ』
「はい、いかにも」
『それなら、そのまま進むが良い。以前、貴様の妹が手にしようとしていた長山治という者がいる。妹の怨みを晴らす好機ともとらえればよい』
「はい、ありがとうございます」
トロツキーは南進した。捕虜となった赤軍の西川、東アジア反日武装戦線の佐々木を奪還するという赤軍の目的に協力しつつ、秀才と言える少年を奪う事を目的に進む。
りえが入浴を終え、部屋に戻って来た。
「りえちゃん、お帰り!」
「只今・・・」
「そうだ、これ見てくれよ!」
「え?」
棚には薔薇が花瓶に生けられていた。
「今日の結婚式に来てくれた人が持ってきてくれたんだ。凄い綺麗だよね」
「え、ええ、そう、ね・・・」
りえはその薔薇に違和感を感じる。そして脳内の記憶がなくなっていく感触を覚えた。
「今度は僕がお風呂入ってくるよ」
「うん、行ってらっしゃい・・・」
(な、何が起きてるのっ・・・?)
藤木が風呂から戻って来た。
「只今」
りえは寝台で寝ていた。
「りえちゃん・・・?」
(そうか、疲れたんだもんな・・・。今日の結婚式、楽しかったよ。ありがとう・・・)
藤木はりえに添い寝した。そして藤木はりえに手を握られていた。
(りえちゃん・・・)
藤木はこの地で再会してからりえに己の行動を不可解に思われていた事はあってもようやく自分に好意を持ってくれたのだと思い少し嬉しくなった。
まだ夜が明けておらず、寒い。煮雪ありは沢に近い所で夫の悠一や杯の所有者の友達、協力者となった高校生達に異世界の人間達と共にその場で休んでいた。
(ここの夜ってこんなに冷えるのね・・・)
ありは温暖な清水に生まれた為、興味を持って移住したとはいえ、北海道の冬を越すのは寒さでとても辛かった。だが、この異世界でも寒い時はあるのだと思うと、やはり寒くて大変である。
(りえちゃん、どうしてるのかしら・・・?)
ありは杯の所有者を早くでも助けないとと思った。そのまま寒さに耐えながらも眠り続けた。
(そう言えば前にも健ちゃんが同じように心配になった事あったっけ・・・?)
ありは自身が北海道の大学へ行く事を目指そうとした時、従弟が家でも学校でも暴れて親によって少年院に送られる話を聞いた事がある。その時は自分の可愛い従弟が犯罪をやったわけでもないのに親によってそのような仕打ちを受ける事があまりにも気の毒すぎて妹と共に泣きたくなってしまった。その時は出所する日が来るまで時折祈っていたものである。
夜が少しずつ開けて行く。かよ子は早めに目が開いた。
「ふあ・・・」
これからまた次へ進まなければならない。自分が杖を奪われてしまって取り返す行為に手間取った為に本来の目的が大幅に遅くなってしまった。
「よし、これからまた行かなくちゃ!!」
かよ子は少しずつ羽根を動かして先へ進むことにした。
「お、かよちゃん、もう起きたんだね」
「あ、関根さん・・・」
「はは、警察の仕事には夜勤もあるから時々早く起きたり、あまり寝れなかったりするものなんだ」
「そうですか・・・」
「まあ、羽根を少し進めてもいいよ。少しでも早くやる事を済ませたいだろうし」
「は、はい・・・」
かよ子は構わず羽根を進めた。
「少しくらいなら、大丈夫だよね・・・?」
かよ子は皆が起きる前に羽根を動かしたが気にしなかった。
「・・・はっ!」
関根が嫌な気配を見聞の能力で感じていた。その時、大野も起きた。
「お、大野君、起きたの・・・!?」
「ああ、嫌な気配を感じちまって起きたんだ」
「ど、どこなんだろ・・・!?」
その時、銃が発砲するような音が聞こえた。
「え!?ど、どこ!?」
そしてかよ子達の羽根に鉱物が飛んできた。幸い、羽根の結界やかよ子の武装の能力が働いた為に無傷ではあったが、このまま逃げても巻けないと思い、杖を取り出して戦闘準備に入った。
「誰なの、どこにいるの・・・!?」
「やれやれ、折角杖をこちらの物にしたのにまた取られるとはな・・・。ヴィクトリアも女王のくせにへまをやってくれたものだ」
髭を生やした男性が近づいて来た。
「私の杖を取りに来たんだね!?」
「その通りだ。杖の所有者・山田かよ子。このゲオルギーがもう一度、その杖を我々の世界の物とさせて貰うのだ」
「な、新しい敵か、ブー!?」
他の皆も次々と起き上がる。
「何奴、杖は渡さんぞ!」
次郎長達も直ぐ様戦闘体制に入った。
「私はもうそんなおっちょこちょいしないよ!」
(私の杖は前よりも強くなったんだから!!)
新生・杖を使用するかよ子の最初の戦いが始まる。
藤木は朝となり、起きた。この日は少し寝坊してしまっていた。隣にりえが眠っていた。
「りえちゃん、おはよう」
丁度りえも起きた。
「あ、藤木君、おはよう」
りえの方は昨日までの表情とは打って変わっていた。藤木を見つめて笑顔だったのだ。
「そうだ、この薔薇、枯れないように毎日水を変えないとね」
「ええ、あの、藤木君」
「え?」
藤木は驚いた。りえが自分の頬にキスしたのだった。
「藤木君と一緒で嬉しいわ。私もそうした方がいいと思うわっ!」
「うん、そうだね!」
藤木は早速遊女の一人を呼出した。
「おはようございます。茂様。そしてりえお嬢様」
「おはよう。早速なんだけど、薔薇の水を変えたいと思うんだ。いいかな?」
「ええ、勿論です。萎れては困りますからね。一日二回、水を変えておきますね」
遊女は花瓶に入った12本の薔薇を持って行った。
「それじゃ、食堂に降りて朝ごはん食べに行こうよ」
「うんっ!」
藤木とりえは身支度を整える。
「そうだ、りえちゃん・・・」
「え?」
「ここであった時、最初は僕に『この世界にいちゃダメだ』って言ってたけど、今日はなんか僕と一緒でなんか嬉しいみたいだね」
「だって折角会えたんだもん。好きになっちゃって・・・」
「そっか、僕、ずっとりえちゃんの事、好きでいるよ!」
「うん!」
二人は朝食を食べに食堂へと降りるのだった。そこには紂王や妲己、他の遊女や衛兵達もいた。
「おはようございます、茂様、りえ様!」
「おはよう!」
「おはよう、それでは食事と行こうか」
皆は食事の席に着く。ここでの食事は朝でも豪華だった。和のものも洋のものも置いてある。
「ところで坊や、お嬢。あの薔薇の花束は如何かね?」
妲己が質問した。
「はい、とても嬉しいです!りえちゃんに相応しいプレゼントだと思いました!」
「そうか、良かった。あの薔薇の意味を送り主のナポレオンから聞いてみたのだが、薔薇は12本あると『私と付き合ってくれ』という意味があるそうだ。そして赤や深紅の類の色は『愛』『恋』という意味も含まれているという」
紂王が説明した。
「そうなんですか!?ありがとうございます!僕、なんかここに来た時のりえちゃんの様子がとても心配だったんです。あの薔薇があって本当によかった!」
藤木は感謝した。
「ホホホ、それはよかった。仲良く楽しく暮らせそうね」
フローレンスは通信機で杯の奪還へ進むゆりと連絡を取っていた。
「そうですか。夜中にトロツキーと戦いましたのですか。お疲れ様でした」
『それでレーニンとかいう人の声が聞こえてね。杯は少なくとも本部にないけど私達が探し当てるのは無理だって言うのよ』
「そうですか。こちらでは安藤りえちゃんを攫いました妲己といいます女が怪しいのですが他の者に譲渡しました可能性もありますからね。こちらでも可能な限り捜索します」
『ありがとう。こっちもくまなく探すわ』
連絡を終了した。フローレンスは考え続ける。
(剣や杖の時はすぐに検討がつきましたのにどうして杯だけは見つかりにくいのでしょうか・・・?)
杉山はレーニンと本部へと進み続ける。
「はて、ゲオルギーが杖の所有者に接近したようだが・・・」
「ああ、そうだな。あいつらにももう一度会ってみてえところだぜ」
杉山は心の中で思う。親友の事、そして、おっちょこちょいの少女の事も。
(大野、見てろよ、俺は大将になってやるからな・・・)
「そこでだ」
「ん?」
「『貴様自身』も利用させて貰いたい」
「俺を?」
杉山はレーニンの言葉に不可解さを感じた。
後書き
次回は・・・
「進化した杖の実力」
かよ子達藤木救出班とゲオルギーの戦いが始まった。かよ子は新たに生まれ変わった杖の実力を試す時だと見たかよ子は杖を早速使用してゲオルギーの撃退を試みる。一方、杉山はレーニンからかよ子や大野の事を聞かれる。そして二人の元にはある人物が呼び出されていた・・・!!
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