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木の葉詰め合わせ

作者:半月
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本編番外編
入れ替わりシリーズ
  入れ替わりの話・参

 
前書き
続きです。どれくらいまでの延びるかな……? 

 

 惚れ惚れする様なフォームで振り下ろされた花瓶は山中殿の脳天を直撃した。
 おかげさまでこの幸の薄いお人は現在、苦悶の表情を浮かべたままうんうん唸っている。

「いいか。過ぎたことをいつまでもうだうだ言っていた所でもうどうにもならん。ならば為すべきことはただ一つ――わかっているな?」
「わ、分かっています。分かっているから、その、首に突きつけている刃物をどかしてくれないかな~って、すみません冗談です」

 今の私の状況を簡潔に説明するならば、床にほぼ押し倒される形で刃物を突きつけられています。喉を動かす度に磨き抜かれた刃が当たって、すごい怖い。今にもスパッ、とやられそうで超怖い。
 一応、私の今の外見はというか体は“うちはマダラ”その物なんだけどなぁ……容赦がないと言うか、なんというか。

「はあ……。中身が別人だと分かっていても、オレの顔で情けない表情をされると、なんというか、こう……イラっとくるな」
「返す言葉もございません」

 素直に頭を下げたら、椅子に座る形で静観していたミト(ただし外見以下略)に微妙な表情をされた。気持ちは分かるよ、情けない表情で頭を下げているうちはマダラとか誰だってみたくないだろう――私も含めて。

「……随分と余裕だな」
「ヒッ! ふ、不意打ちは止めてくれ、金属冷たい! ぞっとした!!」

 ツー、と金属の冷たさが肌を伝って背筋が凍る。そーっと視線を動かせば、至近距離で嗜虐的な光を灯した灰鼠色の瞳と目が合った。こいつ、本当にドSだなぁ……。外見ミトなせいかお姉ちゃんは滅茶苦茶切ない。

「オレはいつまでもこの状態を続けておく気はさらさら無い――分かっているな?」
「重々承知しておりますとも」
「――……死ね」

 張り付いた空気を霧散させるためにわざと戯けた口調で返事してみたら、とんでもない目付きで睨まれた。ミトじゃあ絶対にしない表情に別人なんだぁ……と再認識させられる。

「……おい、人の話を聞いているのか?」
「聞いてます、聞いてます。いやあ、中身は別人でもオレの妹は美人だな~と――って、ジョークだから! やめて、許して!」

 どうやってコイツ殺してやろうかな、と考えていることが丸分かりな眼差しを向けられて、姿勢を正す。

「しっかし、どうする? オレはこの後、風の国に新設された隠れ里との間に会見があるんだけど、このままだとなぁ……」
「致し方ありませんわね。私が代打を務めるしかありません」
「オレの方とて、うちはとの間で同盟を結んでいた他所の一族の長との会見があった……だからこそ一刻も早く元の体に戻りたいのだが」

 うん。マダラの悩みは分かったよ。分かったら、遊ぶ様に人様の首筋を撫でている刃物をいい加減どかしてはくれないかしら。寒気でゾクゾクするので。

「――――それで? あなたはいつまで私の体でそのようなはしたない姿勢を取るのですか。うちはマダラ?」
「あー、それはオレも思った。あのさあ、元は兎も角、今のお前はミトの姿なんだからもう少し……恥じらいを持った方が、って、痛い! 脇腹に手刀を打ち込まないで!」

 覆い被さる様な体勢をとっているミトの姿ははっきり言って目の毒だ。
 ――特に、真っ白な太ももが着物の隙間から覗いているし。純真な青少年が顔を真っ赤にしそうですよ、ホント。

 ごす、と爪先が脇腹にヒットする。
 繰り返す様だが今の私の体は、うちはマダラなんですよ。
 なのになんでしょう、この自らの身に対しての酷い扱いは。

「いいかい、マダラ? 今の君はミトで、認めたくないだろうけど女の子なんだ。それなのに、こうやって人様の上にのしかかって、裾をそんなに広げていたらだな……」
「柱間様~。頼まれていた書類が……って、え?」

 懇々と説教しようかと思っていたら、不意に扉が開かれて知り合いの少年達の姿が視界に映る。――あ、デジャブ。

「み、ミト様が!?」
「マダラ頭領に対して!?」
「刃物を突きつけてるぅっ!?」

 上からヒルゼン君、ダンゾウ君、カガミ君の順番である。君達仲いいね……。

「ああ。貴様達、丁度良い所に来た」
「き、貴様!?」
「どうしたんですか、ミト様! それにその格好、あわわわわ」
「――黙れ。反論など許さん、今すぐこの場に千手扉間とうちはヒカク……とついでに猿飛佐助を連れて来い」
「ひぇっ! わ、わかりました!」
「りょ、了解です!」
「畏まりましたぁ!!」

 ピョン、と背筋を正して敬礼している様は非常に可愛らしいが、それにしてもマダラ……ミトの姿であるって事を忘れてない? 軍隊の上官みたいだ――これで中身もミトだったら絶対目の保養だったのに。

「いつまでぐずぐずしている。さっさと奴らを連れて来い」
「は、はい!」

 一言だけいわせてもらおう。光り輝いているよ、今のお前……。 
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