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試しに車椅子に乗ると

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第二章

「こちらはよけられないですし」
「身体全体ではね」
「はい、それに」
 克美はさらに話した。
「中々進めないです」
「遅いわね」
「かろうじてという位です」
「その状態でなのよ」
 どうかとだ、弥美は克美に穏やかな声で話した。
「バスに乗ったりするのよ」
「これでは階段も進めないですが」
「それでもよ」
「バスに乗ったりですか」
「するのよ、大変でしょ」
「はい」
 克美は心から答えた。
「本当に」
「これがね」 
 まさにというのだ。
「車椅子に乗るということよ」
「足腰が動けなかくなって」
「どれだけ大変かわかるわね」
「わかりました」
 克美はまた心から答えた。
「車椅子に乗るってこうしたことなんですね」
「そうよ、だからね」
 それでというのだ。
「そうした人のことをね」
「わかって」
「そしてね」 
 それでというのだ。
「私達の活動をね」
「していくことですね」
「ええ、そうしてね」
「わかりました」
 確かな声でだった。
 克美は頷いた、そしてそれ以降尚更だった。
 克美はボランティア活動に真摯に向き合うことになった、若し障害者に偏見を見せる人がいるとこう言う様になった。
「じゃあ試しに車椅子に乗って下さい」
「車椅子に?」
「そうしたらどれだけ大変かわかります」
「一体どれだけ大変なんだ」
「その時にです」
 こう言ってだ、その人が乗ると言うのなら乗せた。そうして実際にわかってもらう様にした。障害というものがどんなものか。


試しに車椅子に乗ると   完


                   2023・1・16 
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