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魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編

作者:blueocean
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第9話 不吉な事件

『そうなんだ………』
「かなり驚いたよ、みんなの前で思わず動揺しちゃったし………」

八神家での食事の後、家に帰り、ある人物に電話を掛ける。

『でも零治って違う世界でヴィヴィオに会ったんでしょ?』
「だけど今日会ったのは3歳児頃のヴィヴィオだぞ?流石に驚くだろう………」
『まあね、俺もその場に居たら同じ反応だったかも………』
「なあ神崎、どう思う?」
『どう思うも何もそれこそあまり気にしなくて良いんじゃないか?スカリエッティは零治と仲が良いし、彼以外ゆりかごを使う事を思うつく人なんて居ないだろうし………』
「………まあ1人を覗いてな」
『クレイン博士の事?彼はバリアアーマーの開発に付きっきりでそんな暇は無いと思うけど………』
「バリアアーマーか………あれって結局どうなったんだ?」
『一応配備部隊は決定して後は量産するだけみたい。先ずは陸中心で成果があれば空戦専用のバリアアーマーも開発して展開していく予定だって聞いている』
「これじゃあ魔装少女リリカルなのはだな!!」
『完全に別アニメだよね………』

バリアアーマーか………
自分の発想で生まれた物であるが故に何か事件が起きたら罪悪感を感じそうだな………

「まあいいや。なのはの直ぐ近くに居るって事はそこまで気にしなくてもいいだろ」
『俺はむしろそっちが気になるよ。こんな早い時期にヴィヴィオと一緒に居るって普通の人間じゃ起きない事でしょ?そう考えると………』
「俺達と同じ転生者って事か?」
『零治、神様と話出来ないの?』
「願いを全部叶えてもらってからはさっぱりだ」
『だよね………ちょっと俺も調べてみるよ。やっぱり重要なだけに気を付けなきゃいけないし』
「頼むな。………それとあまり加奈に好き放題されるなよ?」
『………頑張る』

そう返事を聞いて電話を切った。

「頑張るって………既に手遅れって事か………浮気でもしたら半殺しにされそうだな………」

正式に付き合うと言われたのは去年の冬。
まあ元々付き合っている様な関係にはなっていたので驚きは無かったのだが、兄としては神崎のストレスが心配である。

「しかしヴィヴィオの面倒を見ているのって一体………」










新暦73年7月………


「大悟、何してるのよ?」
「ちょっと調べもの」

7月の夜の武装隊隊舎のオフィス。パソコン型の端末で調べものをしていた大悟に後ろから声を掛ける加奈。
その両手には2つのマグカップがあった。

「はい」
「ありがとう」
「で、内容は?」
「6月の中頃、零治がヴィヴィオを見つけてね」
「ヴィヴィオ?………確か聖王のクローンの女の子だっけ?」
「正解。本当なら後1年か2年後に現れる筈だったんだけど………」
「今現れたって事ね」
「そう、一応ゆりかごを動かせる人物だし、一緒に住んでいる人をチェックしておこうかなって」
「うわっ、ストーカーみたい………」
「仮にも彼氏にそれは酷くない!?」

と言いつつも動かす手を止めない大悟。

「何よリアクションがつまらないわね………」
「いや、リアクションとか求められてもね………」
「しかも個人情報覗くのって犯罪じゃないの?」
「執務官が上から許可貰わないと出来ない事」
「………エース・オブ・エースが何してんのよ」
「内密にね。武装隊も結構危ない橋を渡ってる時もあるって事」
「要請があるまで動かない部隊だと思ってた………」
「それは部隊長も歯がゆい思いをしてるんだ………前に起きた空港火災の時も上にかなり直訴してたんだけど『本局にもしもの事があったらどうする!!』って言われて、状況確認が済むまで本局で待機しろって言われて動けなかったんだ」
「やっぱり色々あるのね………」

そんな事を話していると大悟の使っていたパソコン型の端末がポンと音を鳴らした。

「検索完了っと………なのはの隣に住んでいるのは………バルト・ベルバイン24歳独身。結婚経歴無しで1人子供がいる、養子扱いになっているな。そしてその子がヴィヴィオか………」

画面にはバルトの顔写真と経歴が表れる。

「第47管理世界出身で移住してまだ1年経って無いみたいだ。現在職業は特に無し。………まあこんなものか。取り敢えずデータを移して、足がつかないようにこのプログラムを使って………」
「プログラム流して大丈夫なの………?」
「まあ部隊長もよく使ってるし大丈夫だよ。だけどこの人を見る限り、転生者って線は無さそうだな………ちゃんと管理世界出身ってデータもあるし。取り敢えず零治にこのデータを送っておくか」
「まあ見つけた本人だしね………ってあれ?」
「どうしたの加奈?」
「何かこの写真の人、どこかで見たこと無かったっけ?」
「えっ?………俺は見たこと無いと思うけど………」
「そうかしら………」

写真に載っている褐色の白髪の若い男を見ながら加奈は暫く1人で唸っていたのだった………











「なるほど、今のヴィヴィオの家族はこの人か………」

神崎から送られた資料を見て、1人唸る。

「………こうやってちゃんと資料に出るし、どうしても転生者っぽく無いんだよな………」

典型的な転生者はメインキャラと同年代な事が多いと思っている。それはそっちの話に詳しい神崎も同じ考えだ。
しかし資料のベルバインさんは24歳、それに褐色の白髪とあまり好まない身なりの気がする。

まあこれは個人的な考察だけど………

「しかし………」

どっかで見たことあるんだよなこの人………

「零治、メールだぞ~」

布団の上に寝っ転がりながら漫画を読んでいるアギトが俺に携帯を投げ渡す。
漫画を読む時は小さいままだと面倒なのでよく子供サイズに変わっている。

「えっと………先輩から?」

我が学園が誇る美人生徒会長、水無月会長からのメールだった。

『零治君、明日放課後生徒会室に集合ね』
「ええ………」

中学の頃とは違い、メンバーも充実している高校の生徒会のおかげで、余り呼ばれずに済んでいるが、相変わらず呼ばれる事が度々ある。
メンバーは同じで俺と桐谷、そして夜美とすずか。この4人が呼ばれる場合が多い。

「分かりましたっと………」

取り敢えず断るにしても用事が無く、その辺りも考慮してメールを送っているだろう会長の誘いを断るのは勇気がいるので渋々メールを返した。

「はぁ………」
「何だ?何かあったのか?」
「まあ会長からの呼び出し………」
「ふ~ん」

学校に行ってないアギトにとってそんな話は退屈であるのか再び漫画を読み始めた。

「………アギトも学校に行きたいか?」
「アタシは別に………メガーヌの所に行くのも楽しいからな」

因みにアルピーノ家は正式に結婚しました。
まあその話はキャロの方で………

「ゼストさんの仕事は順調?」
「ああ。毎日頑張っているって言ってたぞ」

ゼストさんは結婚を機に工事現場など、肉体を使う仕事をやり始めた。
一番の理由は体がなまって仕方がないと言う理由が大きいのだが、周りの近所の目が一番の理由だったり。
本人も体を動かせて結構充実しているみたいだ。

「それにチビッ子達に合わせるのって結構疲れそうだろ?」
「だけどキャロのグループ………と言うよりエローシュ君のグループは精神年齢高いだろ?」
「だけど、何か同じくらいに思われるのはあんまり………」

アギトにも色々と思うことがあるのだろう。
あまり無理強いする事も無いか………

「分かった、アギトがそれでいいならそれでいい。ただ寂しく無いかと思ってな」
「アタシは大丈夫だ。もしそう思ったらスカさんが作った『フェイドシルエット』で零治達に付いていくもの良いし」

フェイドシルエットとは姿を認識されないようにするための機械だ。
バッテリーが効いてる間は登録された人以外には認識されないといったかなりの優れものである。
ただ欠点もあり、小人のアギトサイズ位が限界でバッテリーも10時間程で切れてしまう。

しかしアギトや、普段ボールに入っているフリードにとっては元のサイズで自由に行動することができ、こちらとしてはかなり使える物だったりする。
………まあフリードは滅多に出たがらないのだが。

「そうか、分かった」
「うん、ありがとう零治」
「それじゃあいい加減寝るか」
「うん、流石のアタシも眠いや………」

部屋の電気を消し、元の姿に戻ったアギトは自分の寝床に戻り、そして直ぐに眠りについた………













「で、話って何ですか?」
「あのね実はちょっと厄介な案件があってね………」

会長の話はこうだ。
近頃、この海鳴市に大きな不良グループが出来てて、問題になっているらしい。
何でも不思議な鎧を使うらしく、警察も手に負えなくなりつつあり、ここも例外ではなく被害が出ていた。
そして会長は独自のルートで彼らの居所をつかんでいた。

それって何なんだろう………

「それで俺達ですか………」

そう答えたのは桐谷だ。
桐谷も俺と同じように会長に呼ばれていた。

「ええ。もしかしたらはやてちゃん達の世界の話が関係してくるかもしれないから………」

会長は俺達の秘密を知っている。
きっかけは家に居候しているセッテが原因で、以前に偏った正義で暴れまわっていた時、不意に使ってしまったブーメランブレードをたまたま通りかかった会長が見てしまったのだ。
見られてしまったからには秘密にするのも悪いと思い、俺達の秘密を会長には話したのだ。

最初こそ驚いていた会長だが、俺の話を真摯に受け止め、完全にでは無いが理解してくれた。
対応も変わらず、いつも通り接してくれる。

本当に頭が上がらない………

「分かりました、俺達が探ってみますよ」
「だな。メンバーは俺と零治だけでいいか」
「だな、一応不良が大勢居る場所に星達を連れて行きたく無いからな………」

「ごめんね2人共、気を付けて………」
「「はい」」

こうして俺と桐谷はその噂になっている不良グループについて調べる事にした………











「なのに何でいるのかね………」
「師匠のいるところ私アリです!!」
「ディード………オットー………」
「ごめんなさい………」
「むしろ頑張ったほう」
「零治、2人のせいじゃ無いだろうが………」

「分かってるよ………はぁ………」

星達にも内緒にしてあり、誰も知らない筈なのにこの3人は俺と桐谷を校門前で待ち伏せしていたのだ。

『私と師匠は見えない糸で繋がれているんです!!』

以前言われた事を思い出した。
本気でスカさんに身体検査を受けるべきかもしれない………

「いいからお前達は帰れ。不良の中にお前達みたいな女の子を連れていくわけにはいかない」
「むしろセッテがいると更に面倒になりそうだから勘弁してくれ」
「いえ!!及ばずながら連れていってもらいます!!!」
「ディード、オットー………」
「何奢ってくれる?」

オットーは何か頼むごとに見返りを求めてくる。
決して悪いことは無いのだが、たまには求めないでほしい。

「………翠屋のケーキ」
「プレミアムスペシャル3つずつ」
「なっ!?あのバカ高い上に予約殺到のケーキか!?俺だって滅多に食えないのにそれを3つも………」
「どうする?」
「ちょっとオットー、流石に悪いよ………」

だが、セッテを連れていって面倒な事になるよりはマシか………

「桐谷………」
「お前担当だろ?」
「くそ………ウェンディが何かやらかしても協力しないからな………」
「大丈夫だ、明人に全て行くから」

いい奴捕まえやがって………

「どうするレイ兄?」
「………お願いします」
「まいど」

そう言うと気合入れて屈伸しているセッテの首に手刀を叩き込み、気絶させた。
そして軽々と持ち上げる。
低身長のオットーが女子だけでなく、男子の中でも大きいセッテを持ち上げている。

何てアンバランス………

「………手馴れてるな」
「中学校では何度もある光景なので………セッテはああやってテンションが高すぎると結構隙だらけなんですよ」
「おい、その弱点不味いだろ………」
「そう思うならどうにかしろ師匠」

桐谷、テメェ………

「じゃあレイ兄、約束忘れずにね」
「あの………ご迷惑だったら無理しなくてもいいので………」
「いいや、ちゃんと準備しておくから、ディードも楽しみにしとけ」
「あっ、はい………ありがとうございます………」

そう言ってディードはオットーについていき、2人+気絶してる1人は静かに帰っていった。

「………さて、それじゃあ行くか」
「ああ………」

「何処へだ?」
「何処へって不良グループの溜まり場らしき場所に………って、あれ?」

後ろから不意に声が聞こえ、振り向くとそこには両手を組んで仁王立ちする夜美とライ。
そしてその横で、桐谷を睨むフェリアとノーヴェがそこにいた………











「全く、また2人は………」
「本当に懲りないな………」

夜美とフェリアを筆頭に4人から説教を受ける俺と桐谷。
その後ろにライとノーヴェと言った具合だ。

内容は当然、2人で危険な事をしようとした事についてだ。
歩きながらも話は終わらず、俺と桐谷は黙って聞いている。
そんな中30分ほど歩き着いたのが、いかもに溜まり場っぽい工場跡だ。

しかし中は意外にも広く、大きな話し声が聞こえてきたのは予想以上に時間がかかってしまった。
目的地に着いた事もあり、説教をしていた2人も黙り、空気が変わる。

「みんな油断するなよ………」

そう言って俺達は中に順番に入っていった………








「土門さん、そのスーパースーツの追加ってまだなんすか?仲間を増やしてもっと暴れたいっすっよ………」
「悪いな、あの男現れるのはいつもいきなりでよ………」
「でもこれはいいっすよね、全身隠れるから誰だか分からないし、喧嘩だって傷ひとつ負わずに勝てるし、警察もまだコスプレと思って本格的な調査はしないし。上ともめてるんじゃないっすか今頃?」
「ありそうありそう!!『鎧着た奴がいて銃も効かなくて!!』って言っても普通『こいつバカじゃねえの?』って思うだけだもんな!!」
「最高だよ本当に。誰が考えたか知らねえが最高傑作だよ」

そう言って土門と呼ばれた男は手のひらサイズの電子器機を見つめる。

(後は、奴との約束の蒼い宝石って奴を探すだけだな………まあ期間は特に指定されてねえし急がなくてもいいか………だがもっと追加も欲しいし………)

「誰だてめぇ!!」

土門の仲間内の1人が大声をあげた。
それによって土門も我に返る。

「いやぁ、ちょっとウチの学校の生徒が絡まれたからお礼参りしにきた」

と慣れ親しんだ友達に言うように言った。
そんな零治の行動に呆気にとられる不良達。

そして………

「「「「「わははははは!!!!」」」」」

不良達の笑い声でその場が包まれた。

「バカじゃねえのか!!たった2人に何が出来んだよ!!」

そう言って向かってくる不良を桐谷が回し蹴りで吹っ飛ばした。

「卓!!………てめぇ………」
「取り敢えず全員動けなくして警察につきだしてやるよ」
「この野郎………!!」
「いいぜ、舐めてやれるのも今のうちだ………セットアップ!!」

そう言うと土門の男の体が光だし、その体全体に装甲が展開される。

「バリアアーマー!?」
「何で地球に!?」

「ほう、これを知っているって事はお前逹魔導師って奴だな………この町に居るとは聞いていたが………ならば話が早い。この中に『ベヒモス』って奴を知っている奴はいるか?」
「お前、何でベヒモスを!?」
「お前だな………俺はついている………データを渡してもらおうか。それがあれば更にこのアーマーを手に入れる事が出来る」

そんな言葉に零治は混乱してばかりだ。

(データ………?まさかあのベヒモスのデータが流出しているのか!?)

「零治………」
「ああ、更に見逃せない事態になってきたな………ラグナル!!」
「セレン」
「「セットアップ!!」」

そんな桐谷との会話の後、それぞれバリアジャケットを展開する。

「な、何だ!?」
「服が変わった!?」
「刀や剣持ってるぞ奴等!!」
「ビビるな!!こっちは全身装甲だ!!お前逹もさっさと展開しろ!!」

土門がそう言うと取り巻き達もそれぞれバリアアーマーを展開する。

「まだ管理局でも配備前なのに………」
「これもクレインの影響か?」
「いや、多分違うと思う………クレインならブラックサレナを使うだろうし、このバリアアーマーは神崎に見せてもらったデータと似通った箇所が多くある。そのデータはあの模擬戦のデータだから………」
「その時のアーマーで独自に改造したって事か………」
「そしてベヒモスを手に入れようとしている………」
「もしかして前に言った冥王教会か………だけどそれはシャイデ先生が昔に現最高責任者を捕縛したんだよな?」
「ああ。だけどその残党がいたら………?」
「立て直しの為に再びベヒモスをか………」

そんな話をしていると準備が整ったのか、武器を構える不良達。

「色んな疑問はあるにせよ、今、この事態を乗り切るぞ」
「………まあそんなに問題無いだろう。ある意味俺達より怖い奴等が今日はいるしな………」

桐谷がそう言った後、空間が変わる。封時結界だ。

「何だこれは!?」

直ぐにでも攻撃しようとした不良グループはその光景に驚く。しかしその後直ぐに紫の巨大な魔力弾が降り注いだ。

「先ずはインフェルノで………」
「極光………ざーん!!!」

その後青い巨大な剣が降り下ろされ………

「吹き飛べ、ランブルデトネイター!!」

爆発が彼らを覆い………

「行くぞ………スマッシュインパクト!!」

ノーヴェのガンナックルの拳による大きな衝撃を装甲にぶつけた。

「て、テメェら………」

その結果、零治と桐谷が手を出す前に彼らはボロボロの姿になっていた。

「………改造というか劣化版って感じだな」
「まあじゃないと量産もままならないだろう………」

と冷静に分析する2人。
そんな余裕な2人を見て、更に怒りが上がっていく。

「このおおおお!!!」

一番ダメージの軽かったリーダー格の土門が大きな声を上げながら装甲の所々を扉の様に開いた。

「ミサイル!?」
「そんなの発射したらこの工場が持たない!!」

驚くライと夜美だが、零治と桐谷は違った。

「零治!!」
「ああ!!」

発射される前に同時に駆け出す。

「空牙絶咬!!」
「風刃閃!!」

零治はいつもながら高速の突きを、桐谷は高速で相手の懐に潜り込み、3回ほど斬り付ける。

「うぐっ!?」

攻撃を受け、動きを止められた土門はミサイルの発射を出来ず、衝撃で動きが止まってしまった。

「桐谷!!」
「ああ!!」

そのまま順番に交互に連撃を加えていく。

「「双連刃・封撃斬!!」」

そのままスピードを上げていき、最後に左右から斬り抜けた。

「ぐあ………!!」

呻き声をあげ、思わず膝を着く。
装甲は既にボロボロでミサイルも発射口がへこんだ影響で発射出来ない状態になっていた。

「もう終わりだ、諦めろ」
「くそっ………まだ諦めてたまるか………このアーマーさえあれば何でも思いのままなんだ…このまま諦めて……あべべべべべべ!?」

会話の途中なのだが、土門が変な声を上げて白目のまま気絶した。

「もういいよ、どっちにしたって警察にお世話になるんだからね」

ライがすかさず近づき電気を流す。

(ピOチュウだなライ………)

口には出さずそんな事を思う零治だった。

「少し話を聞いて起きたかったが………恐らく誰からもらったかは知らないだろうな………後でスカさんに連絡を取るか」
「それにしても見事な連携だったな」
「そうだね。フェリア姉、私達も何か連携技作らない?いざって時に役に立つと思うんだけど………」
「確かに………私の爆破でダメージを与えながら相手の視界を奪い、それに乗じてノーヴェが必殺の一撃を加えるってのはどうだ?」

そんな会話を始める姉妹。

「おい、そんな話をするのは後で………何の音だ?」

桐谷が2人を注意しようとした時、不審な音に気がつく。

「セレン、一体何から音がなっている!?」
『………!!彼らが使っていたデバイスらしき物からです!!もしかしたら爆発物じゃ………!!』
「くっ、零治!!」
「分かってる!!みんな早くこの場から避難を!!」
「レイ、不良の皆は!?」
「残酷かもしれないけど自分達の命を優先しろ!!恐らく時間が無い!!」
「夜美、早く!!」
「分かってる………なっ!?」

逃げようとした夜美だったが何かに足を引っ掛けたのかその場に転んだ。

「夜美!?」
「くっ、我としたことが………一体………」
「逃がさねえよ………お前等も道連れだ………」

不良の1人に足を掴まれれ、夜美は転んでしまった。
足を使って振り払おうとするが、振り払うのに苦労している。

「レイ!?」
「ブラックサレナで転移する、他の皆は早くここから出ろ!!ラグナル!!」
『イエス、マスター!!』

ブラックサレナに変わった俺は、その場から転移し、夜美の所へやって来る。

「レイ!!」
「転移するぞ!!ついでにコイツも事情を話してもらうために………」
『ま、マスター!!AMFです!!』
「このタイミングでか!?」
『濃度が強すぎて転移は無理です!!』
「くそっ………」
「レ、レイ………」

不安そうに見る夜美に俺は頭を働かせる。

「アーベントのフルドライブで一点突破すれば………」
『ですがこの工場は広いです!!直ぐに爆発するかもしれない今の状態じゃ間に合いません!!だったらフィールドを最大出力で展開する方が………』
「いや、一つあるさ………」








「零治達は!?」
「まだ姿が見えない!!」

最後に出てきたフェリアに聞くが、返ってきた答えは最悪な回答だった。

「桐谷………」

そう俺の名前を呼びながら頭を胸に当ててきた。
俺を見上げる顔は不安で目頭に涙を貯めている。

「大丈夫だ、零治には転移もあるし問題無い………それよりライは?」
「ライなら………」

そう言って指を指した先にはその場にうずくまっているライがいた。

「ライ………」
「ライが不良達を気絶させたでしょ?それが逆に死なせる事になっちゃって………」
「あんな状況になるなんて誰も分かるわけ無いんだ、ライは悪くない………」
「私もそう思うけど………」

そんな話をしていた直ぐ後だった。

「爆発………」
「何て威力だ………」

その後、直ぐに爆発が巻き起こり、工場全てを飲み込んだ。
あまりの威力に結界も破壊され、実際の工場跡も吹き飛んだ。

「レイーーーーーー!!!夜美ーーーーーー!!」

ライが大きく叫ぶが返事が無い………

「レイ………夜美………」

涙声になりながら名前を呼ぶライ。
そんなライに声を掛ける言葉が見つからない。

「ライ………」

フェリアがゆっくり近づき、声をかけようとしたその時………

「何泣いているんだよライ?」

そんな零治の声が聞こえたのだ。












「そうか、上か!!」

夜美がそう叫ぶ。
そう。この工場、中は結構広いのだが2階建てでは無く、高い天井があるだけなのだ。
その天井を破壊して外に出れば間に合う。

『マスター、音がかなり早まってきました!!』
「ラグナル、アーベント!!」
『はい!!』
「フルドライブ!!」

アーベントになった後、直ぐにフルドライブを発動、赤いラインが青くなる。

「夜美、抱きつけ!!」
「ああ!!」

直ぐに夜美を抱きつかせ、バルチザンブラスターを背中の背中のホルスターに収め、片腕で夜美を離れない様にしっかり固定した。

「まて………俺も………」
「悪いが、お前を持ち上げて抜け出せる余裕は無い」
「ふざけるな………置き去りにするつもりかよ………」
「自業自得だ、来世ではこんな事すんなよ」
「待て………この人殺し!!」
「………まああながち間違いじゃないがな」
「お、おい!!ま、待てって………!!わ、悪かった、だから助け………」

俺は最後まで話を聞かず、その場から上に向かって飛んだ。

「ぐううっ………」

超高速で上へと飛んでいく。
それと同時に下から大きな爆発音が聞こえ、爆風が迫ってくる。

『マスター!!』
「インパクトステーク!!」

天井にステークを突き刺し、粉砕する。

「うおおおおおおおお!!!!」

叫び声を上げながら爆風と追いかけっこを続け………

『抜けました!!』
「よし!!」

何とか逃げ切ったのだった………








「レイ………夜美………」

フラフラになりながら俺と夜美に抱きつくライ。

「全く、俺が家族を残して死ぬわけ無いだろうが………」

抱きつき涙を流すライに優しく撫でながらそう呟く。

「心配かけたな」

夜美も同様に優しく声をかける。

「レイ、夜美………僕、僕………」
「ライは悪くない」
「ああ。間違っていない」

夜美がそう言うと静かに泣き出すライ。
それを夜美と共にしっかり抱きしめた。

「零治、一体どうしたんだ?ブラックサレナだったから転移するものだと思っていたが………」
「いきなりAMFが発動して転移が使えなくなった。だから天井を突き抜けて逃げたんだが………」
「AMFだと………?」
「一体誰………?」

フェリアとノーヴェが考えるが当然答えなんて出る筈も無い。
だが………

「まあいい、取り敢えずこの場を早く離れよう………話を帰ってからでも出来る」
「………だな」

パトカーのサイレン音が遠くから聞こえ、俺達は見つからない様に取り敢えず家の近くの公園へと向かった………










さて、公園で一度落ち着いた俺達は有栖家、加藤家、アルピーノ家が集まり、有栖家で今回の話をすることにした。
それに加え、一応その事件に一番詳しいシャイデとその娘のリンスも呼んだ。
少々大所帯で狭苦しいが、基本的に話の中心になりそうな俺とシャイデがキッチンから話す事にした。

「取り敢えず今回の事件だけど、分かった事が2つある」
「2つ?」
「先ず、あの不良にバリアアーマーを預けた奴の目的がベヒモスを探している事が分かっている。そしてそのデータが何故かこの地球にあるみたいだ」
「あれってレイとウォーレンさんとシャイデの活躍で解決したんだよね?」
「まあそうなんだが、その事件を起こそうとした犯人は捕まえただけなんだ」
「あの事件で冥王教会のトップは捕まえたけど、開発者を捕まえたとは聞いていないわ」

シャイデが補足してくれるので詳しく皆も知ることが出来る。

「それもクレイン・アルゲイルなのですか?」

手を上げて質問するキャロ。相変わらずの真面目さである。

「それは分からない。あの時の事件じゃクレインの事は知らなかったし何とも言えないわ」
「じゃあやっぱり………」
「いや星、恐らく今回はクレインは関わってないと思う」
「えっ?じゃあ誰なんスか?」
「それは分からないが俺の予想は冥王教会の残党だと思っている」
「残党………?」

セインが不思議そうに首をかしげたが、皆も反応も同じみたくゼストさんとメガーヌさん以外は不思議そうな顔をしていた。

「恐らく、トップだけがいないだけで教会事態は潰れては居ないのだろう」
「むしろ過去に大粛清があっても存在し続ける教会がそう簡単に潰れるとは思えないわね」

元管理局の2人の意見は正論であり、俺もシャイデもそれは分かっていた。

「そう。まあ流石にトップが退いて活動は出来なかったみたいだけどね………」
「じゃあまた活動を再開したと言う事か?」
「まあ恐らくね」
「クレインがやったって事じゃないの?前みたいにさ」

ライの言う事は最もだが、違うと言える証拠がある。

「クレインなら既にデータなんて手に入れてるだろう。リンスの事件の時だってベヒモス並みの爆発を持ちマリアージュを街に放とうとしていたんだし………」
「確かに準備してました………」
「リンスが言うなら間違い無いよね。だったらデータなんて必要無いよね………」

セインの言った言葉に皆が頷いた。

「それで、これからどうするんだ?」
「これから、そのデータを彼らより早く回収してそれを破壊したいと思っている。それも地球、恐らく海鳴市にあると奴等も踏んでいたのだろう。だからこそ今回は間接的に仕掛けた。そして失敗して証拠隠滅に出た」
「そうなると今度はまた違う手で仕掛けてくる可能性もあるって事だね」
「ああ。今回戦ったメンバーは確実に顔を覚えられただろうし、今度はもっと激しい事をしてくるかもしれないからな。悪いけど協力してほしい」

そう言うと皆が頷いてくれた。
ただ疑問をもったのか黙って聞いていたオットーが口を開いた。

「これほどの事件なら管理局に任せた方がいいんじゃないの?」

因みにセッテに関しては喋り出すと話が脱線しそうなので体をぐるぐる巻きにし、動けなくして、喋れないように布で口も縛っている。暴れているがディードが抑えてくれるため静かだ。
それに突っ込む者も誰もいない。
リンスもである。

慌ててた頃が懐かしいな………

「駄目だ。いくらスカさんが活動して無いとしても次元犯罪者なんだ。万が一バレたらスカさんに会わせる顔がない。それに俺達が魔導師だってバレるのもできれば避けたい」
「そうですね………ゼストさんやメガーヌさんが管理局に見つかるのも不味いですからね………」

星の言う通りゼストさんやメガーヌさんは既に亡くなっている事になっているのでそれがバレるのも不味い。

「となるとあまり表だって行動するもの出来るだけ避けた方が良さそうだな」
「ああ、夜美の言う通り出来るだけ目立たないようにしなくちゃいけない」
「………私達とナンバーズのみんなは出来るだけ戦闘は避けた方がよさそうね」
「えっ!?」
「私達もっスか!?」

メガーヌさんの意見にダメっ子の2人、ノーヴェとウェンディが不満そうに言う。

「………目立っちゃ駄目って言われてるでしょ?レイ達だったら登録してない魔導師って形で言われるかもしれないけど、私達は戦闘機人だよ?表立って行動したら危険だよ」
「そうだけどさ………」
「私達っていつもこうっス………」
「仕方がないさ、だがそれでも出来る事はあるだろう………?」

フェリアに言われて渋々納得する2人。
姉強しである。

「と、言うことでデータ探しは難しいかもしれないけどスカさんとも協力してもらって探ってみる。何かあったら協力お願いします!」

話はそう締めて終わりとなった………













「キャロ………」
「うん、大変な事になったね………」
「レイ兄には言った方が良くない?」
「ううん………みんなで秘密にするって約束したし………」
「だけど冥王教会が出てきてあんなバリアアーマーみたいな敵が現れたら私達じゃ対応出来ないわよ?」
「そうだけど………でも気がついてないみたいだし………一度相談しようみんなで」
「………そうだね」

そんなキャロとルーテシアの会話を聞いている者は誰もいなかった………  
 

 
後書き
ゼストさんとの結婚の話はキャロの方で投稿します。
先に話を進めてしまって申し訳無いです………

 
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