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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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第148話

 
前書き
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。 

 
~鳳翼館・ロビー~



「え――――――」

「な――――――」

「ユ、ユーゲント皇帝陛下への”処罰”だって!?」

「……何故皇帝陛下は”処罰”を受けなければならないのでしょうか?」

エイドスが口にした驚愕の条件にその場にいる全員が血相を変えている中セドリックは呆け、ミュラーは絶句し、マキアスは信じられない表情で声を上げ、アルゼイド子爵は真剣な表情で訊ねた。

「彼の皇帝は”ハーメルの惨劇”を碌に捜査する事なくエレボニアの皇帝としてリベールとの戦争を決断した事もそうですが、”ハーメルの惨劇”の真実を知った後は隠蔽した挙句リベールにも隠蔽の強要を盾に賠償する事なく和解する事を決めたのですから、それらに対する”処罰”です。」

「陛下がリベールとの戦争を決断せざるを得なかったのは”ハーメル”の件での証拠が揃っていない状況で主戦派の愚か者達にリベールとの開戦を迫られたからであって、陛下自身は今でも”百日戦役”でご自身の判断によってリベールに甚大な被害を与えてしまった事を後悔しているのだぞ!?」

「それに”ハーメルの惨劇”を隠蔽する事を決めた理由はエレボニアを守る為であって、決して陛下御自身の私欲や保身等ではないのですが………」

エイドスの答えに対してユーシスは真剣な表情で、アンゼリカは複雑そうな表情でそれぞれ反論した。



「では逆に聞かせてもらいますが”百日戦役”の事を後悔しているのならば、エレボニアが今回の戦争で敗戦するまでユーゲント皇帝はリベールに”百日戦役”の件に関する賠償に関して国内で反対の声があったとしても、皇帝が持つ”強権”を発動してでも何故リベールへの賠償を自ら申し出なかったのですか?」

「……ッ!」

「それと”ハーメルの惨劇”を隠蔽する理由は”エレボニアを守る為”と仰っていましたが、それのどこに私が求める虐殺されたハーメルの民達に対する”償い”があるのですか?国の為にハーメルの存在を国から……いえ、世界から抹消したのですから償いどころか、逆に更なる”罪”を犯しているのではありませんか?」

「………それは………」

呆れた表情を浮かべたエイドスの指摘に対してそれぞれ反論できないユーシスは辛そうな表情で唇を噛み締め、アンゼリカは複雑そうな表情で答えを濁し

「―――――それと私からも貴方達からすれば厳しい事を言わせてもらうけど、ユーゲント皇帝の”罪”は他にも一国の”王”として”ハーメルの惨劇と向き合わなかった事”よ。」

「クレハさんの仰る通りです。”ハーメルの惨劇を公表する事を決めたのはオリヴァルト皇子達であって、ユーゲント皇帝ではありませんよね?”そしてオリヴァルト皇子達も、今回の戦争の件がなければ”ハーメルの惨劇”を公表するつもりは無かったのでしょう?―――――先に言っておきますが、『今回の戦争の件がなくてもいつか必ず公表するつもりだった』みたいな後付けの答えで私を謀る事ができませんよ。」

「ハハ…………”空の女神”であるエイドス様を謀るなんて、そんな冗談抜きでケビン神父達に”外法認定”されるような愚かな事なんてできませんよ…………要するにエイドス様が父上に処罰を求めている理由は”ハーメルの惨劇”を隠蔽する事を決めた事もそうですが、”ハーメルの惨劇”に深く関わる”百日戦役”の件でのリベールへの賠償を自ら申し出なかった事を後悔させ、そして反省させる為の父上――――――いえ、”アルノール皇家が負うべき痛み”という事でしょうか?」

静かな表情で指摘したクレハに続くように答えたエイドスの指摘と忠告に対して疲れた表情で答えたオリヴァルト皇子は辛そうな表情でエイドスに確認した。



「そうなりますね。”皇帝自身も例外なく処罰を受ける”という”前例”があれば、皇子達もそうですが皇子達の子孫も2度と同じような愚かな所業を行わないと心の奥底に刻み込む”戒め”にもなるでしょう?」

「つまりは”ユーゲント皇帝への処罰はアルノール皇家にハーメルのような件を2度と繰り返させない為の見せしめ”も兼ねているって事ね………」

「その……エイドス様は陛下にどのような”処罰”を求めていらっしゃるのでしょうか?」

エイドスの話を聞いてエイドスの考えを悟ったセリーヌは疲れた表情で呟き、エマは悲しそうな表情でエイドスに訊ねた。

「まずユーゲント皇帝がエレボニア皇帝退位後ユーゲント皇帝を”廃嫡”する事です。」

「皇帝陛下を”廃嫡”するだと!?」

「は、”廃嫡”って確か内戦の件でのご自身の責任を取ったアルフィン皇女殿下の件と同じ………」

「貴族や皇族――――――”上流階級の身分を失い、平民”になる事か……」

「しかも”廃嫡がまず”という事は”ユーゲント皇帝陛下への処罰は他にもまだある”という事ですよね……?」

エイドスが口にした驚愕の条件にその場にいる全員が血相を変えている中ミュラーは厳しい表情で声を上げ、不安そうな表情で呟いたエリオットに続くようにガイウスは複雑そうな表情で答えを口にし、エレインは複雑そうな表情でエイドスに確認した。



「ええ。ユーゲント皇帝を廃嫡後、ユーゲント皇帝を”一定の期間”を除きハーメル村に生涯幽閉し、死後のユーゲント皇帝の遺体は皇家代々の墓に入れず、ハーメル村に建てたユーゲント皇帝自身の墓に入れる事です。」

「へ、陛下を”廃嫡”した上、ハーメル村に生涯幽閉した挙句、死後はアルノール皇家代々の墓で眠ることすら許されず、ハーメル村に建てた墓に眠ってもらうって……!」

「確かに陛下―――――”ハーメルの惨劇が起こった当時のエレボニア皇帝の末路”がそのような厳しいものであれば皇太子殿下やオリヴァルト殿下の子孫達――――――未来のアルノール皇家の子孫達に代々伝われば、2度とハーメルの惨劇のような事を起こさせない為の”見せしめ”にはなるでしょうが……」

「……ッ!不敬を承知で申し上げますが、幾ら”ハーメル”の件があるとは言え何故”ハーメルの惨劇”を起こす事を指示した訳でもない陛下がそのような惨い処罰を受けなければならないのですか……!?」

エイドスの説明を聞いたアリサが悲痛そうな表情を浮かべている中シャロンは複雑そうな表情で呟き、ラウラは怒りの表情を浮かべて反論した。

「何故も何もそれが”私個人の感覚からすれば、当然と判断した処罰”だからですよ。………というか私の時代の感覚からすれば、”かなり甘めの処罰”にしてあげているのですよ、ユーゲント皇帝への処罰は。」

「い、今言った処罰内容はエイドスさんの時代の感覚からすれば”かなり甘めの処罰”だなんて……」

「話を聞いた感じエイドスさんの時代の慣習や文化等はディル=リフィーナに似ている事から察するに、仮にエイドスさんの時代で”ハーメル”の件でユーゲント陛下を裁く処罰内容はやはり”処刑”なのかしら?」

ラウラの反論を軽く流した後ジト目になって答えたエイドスの答えを聞いたティータは信じられない表情を浮かべ、シェラザードは複雑そうな表情でエイドスに確認した。



「ええ。処刑方法はよくて”毒杯による自害”、最悪は”火刑”もしくは”斬首刑”でかの皇帝を処刑する事ですね。」

「ちなみに僕達の時代で貴族階級の人達が”重犯罪”を犯した場合、男性はエイドスが今言ったような処罰で、女性は厳しい立地にある修道院に生涯幽閉される事だから、多分エイドスは処罰方法が男性と比べてまだ穏便な女性の処罰方法を参考にしたんだと思うよ。」

「確かに”特定の場所に生涯幽閉する処罰方法”は”命を奪うよりはマシな処罰方法”ではあるが………」

「そういえばエイドスさん。先程幽閉の件で”一定の期間を除き”と言っていましたけど、その”一定の期間”とはどのような”期間”で、その期間は”何を行わせる”ものなのですか?」

エイドスが答えた後アドルが自身が推測したエイドスの意図を説明し、二人の説明を聞いたアガットが複雑そうな表情を浮かべて呟いた後ある事が気になったエレナは不思議そうな表情で訊ねた。

「”一定の期間とは百日戦役が勃発し、終戦するまでの期間”であり、廃嫡後のユーゲント皇帝は自身が命を失うもしくは身体が不自由になるその時まで毎年その期間はリベール全土を放浪して、各地の”百日戦役”で亡くなったリベールの民達の追悼を行う事です。ちなみに放浪の際は飛行船や車等と言った近代機械の使用はリベールへの来訪までは許可しますが、リベール全土の放浪は禁止します。」

「毎年”百日戦役が勃発してから終戦するまでの日の期間”は陛下はリベール全土を放浪して追悼するって………ハーメルに幽閉する期間以外の期間も別の処罰を行わなきゃならないのかよ、陛下は………」

「しかもリベール全土の放浪の際は飛行船みたいな近代機械の使用は禁止って事は陛下に徒歩でリベール全土を放浪しろとか、さすがに酷いと思うんだけど~。」

エイドスの説明を聞いたクロウは疲れた表情で溜息を吐き、ミリアムは疲れた表情でエイドスに指摘した。

「えっと……リベール全土を放浪する際”近代機械の使用は禁止する”ってエイドス様が仰っていた事からして、”近代機械以外の方法で移動する事”は許可してくださるという意味でもあると思うよ。」

「あん?”近代機械以外の方法で移動する”とか徒歩以外に何があるんだよ?」

「”近代機械以外の移動方法”…………―――――!”馬”ならばそれに当てはまるな。」

「馬がアリなら後は異世界の生き物の天馬(ペガサス)鷲獅子(グリフィン)みたいな”飛行騎獣”もありになるよね。」

「そうね………まあ、エレボニアが”飛行騎獣”を手に入れられるかどうかはメンフィルとの交渉次第だから、現状確実に使用可能な移動方法は”馬”のみになるわね。」

エイドスの説明を聞いてある事に気づいていたトワがミリアムの指摘に対して答え、トワの話の意味が理解できていないアッシュが眉を顰めている中近代文明がほとんどない自然豊かなノルド高原で生活していたガイウスは逸早くトワの意図に気づき、ガイウスの話を聞いて更なる提案をしたフィーの言葉に頷いたサラは静かな表情で答えた。



「その通りです。ユーゲント皇帝は皇族なのですから、馬術くらいはできるでしょう?」

「は、はい。父上に限らず、アルノール皇家は全員馬術は嗜んでいます。」

「……リベールの国土の広さを考えたら、馬を駆れば100日以内にリベール全土を放浪する事も容易でしょうね。」

「そういえば……エステルさん達は準遊撃士時代徒歩でリベール全土を旅したとの事ですが……その時はどのくらいかかったのですか?」

「確かロレントでの空賊騒ぎの翌日から大佐達によるクーデターの前くらいだったから……恐らく約3ヶ月くらいね。」

「リベール全土を旅するのに徒歩でも約3ヶ月なのだから、馬を使えばもっと余裕なの。」

「いやいや、遊撃士のエステルちゃん達のペースを比較対象にするのはちょっとおかしいやろ。」

サラの言葉に頷いた後問いかけたエイドスの問いかけにセドリックは頷いて答え、ルフィナは静かな表情で推測し、ある事が気になったナユタの疑問に答えたシェラザードの答えを聞いて静かな表情で答えたノイにケビンは疲れた表情で指摘した。



「話が逸れてきたので、話をユーゲント皇帝への処罰の件について戻しますが………そもそも一国の王は普段は王宮に引きこもって政務を行っている――――――つまり自分から幽閉状態を行っているようなものですから、ハーメル村への幽閉の件も同じようなものでしょう?」

「クク、確かに言われてみれば一国の王が国どころか王宮の外に出る事等”稀”だからある意味王宮に幽閉されているも同然だな。」

「むしろリウイ陛下達もそうですがヴァイスさん達のような皇族の方が”稀”と言うべきでしょうね。」

「しかもエイドスが要求したユーゲント皇帝の処罰方法はハーメルに引きこもるだけでなく、1年の約3分の1はリベール全土を旅する――――――つまり外の空気を吸って気分転換を行う事も許されているのだから、”かなり甘めの処罰”である事には違いないね。」

「バルヘイム宮で政務を行う事とハーメルに幽閉されることは全然一緒じゃないですよ!?」

「その………ハーメル村って襲撃の跡から何も復興されていない状態なのですから、幽閉された陛下がハーメル村に住む事は不可能ですし、幽閉された陛下はどうやって生活をしていけばいいんですか……?」

エイドスの指摘に静かな笑みを浮かべて同意したセルナート総長に続くようにリースは苦笑しながら答え、ある事に気づいたワジは口元に笑みを浮かべて呟き、マキアスはセルナート総長に疲れた表情で指摘し、エリオットは辛そうな表情でエイドスに訊ねた。

「幽閉されたかの皇帝が生活をする為にハーメル村に新たに家を建てればいいだけで、食事の用意もそうですがライフラインの設備の建造もエレボニアが行えばいいだけです。――――――ただし、かの皇帝の為に建てる家を華美にすることもそうですが、用意する食事も豪華にすることは当然禁止します。ハーメルの民達に対して償いをしなければならないかの皇帝が生活する家を華美にし、豪華な食事を取る――――――まさに皇族や貴族のような生活をする等、ハーメルの民達に対して何の償いにもなっていませんからね。」

「つまりはハーメルに幽閉された父上はハーメルの民達と同じように質素な暮らしをしなければならないという事ですか………ちなみに父上は死後ハーメルの地に葬らなければならない理由を伺ってもよろしいでしょうか?」

エイドスの説明を聞いたオリヴァルト皇子は重々しい様子を纏って呟いた後エイドスにある事を訊ねた。



「既に何度か口にしましたが”ハーメルの惨劇”は当時のエレボニア皇帝――――ユーゲント・ライゼ・アルノールにも当然責任があります。彼の皇帝が亡くなったハーメルの民達に対して唯一できる贖罪は惨劇が起こった地に彼の皇帝の遺体を眠らせる事で、ハーメルに眠る虐殺されたハーメルの民達と共に眠らせる事しかないと判断したからです。」

「それは………」

「……確かに死者に対してする贖罪はある意味その方法が一番いいかもしれませんわね。」

エイドスの説明を聞いたミュラーが複雑そうな表情を浮かべている中シャロンは静かな表情で呟いた。

「……その、ハーメルの惨劇に対する償いは大きく分けて4つとの事ですが、最後の償いはどのような内容なのでしょうか?」

「最後の内容は……――――――”エレボニアが帝国の名を捨てる事です。”」

「ええっ!?」

「”エレボニアが帝国の名を捨てる”だと!?それのどこが”ハーメルの惨劇に対する償い”になるというのだ……!?」」

セドリックの疑問に答えたエイドスの驚愕の答えに再び仲間達が血相を変えている中アリサは驚きの声を上げ、ユーシスは厳しい表情で声を上げて自身の疑問を問いかけた。



「”ハーメルの惨劇”を隠蔽した理由の一つは”ハーメルの惨劇というエレボニアという国を揺るがしかねない不祥事”――――――つまり、異世界からメンフィル帝国がゼムリア大陸に進出するまで”ゼムリア大陸では唯一の帝国というエレボニアの誇り”を守る為でもあったのでしょう?その”エレボニアの誇り”を自ら穢したエレボニアにはもはや”帝国の名を語る資格”はないと空の女神(わたし)が判断したからです。」

「そ、それは………ですが、”ハーメルの惨劇”は主戦派――――――エレボニアでも極一部の人達によるものですし、そこに加えて遥か昔からエレボニアに蝕み続けている”全ての元凶”である”呪い”も関係しているのですから、”ハーメルの惨劇”とは無関係のエレボニアの人々まで”ハーメルの惨劇”に対する償いに巻き込むのは酷だと思うのですが……」

エイドスの説明を聞いて一瞬辛そうな表情で答えを濁したトワはすぐに気を取り直してある指摘をした。

「”ハーメルの惨劇”を起こした”主戦派”とやらもエレボニア人なのでしょう?でしたら、無関係のエレボニアの人々も”その主戦派とやらと同じエレボニア人”なのですから”連帯責任”がありますし、その”全ての元凶”にしても元を正せば貴方達エレボニアの人々の先祖が争い、その先祖の望みを聞き届けた”焔の至宝(アークルージュ)”と”大地の至宝(ロストゼウム)”がぶつかり合う事によって生まれたのですから、”ハーメルの惨劇”に対する償いとしてエレボニアの人々が”祖国が帝国であるという誇り”を自ら捨てる事も自業自得ではありませんか。」

「”焔の至宝(アークルージュ)”と大地の至宝(ロストゼウム)”。その名前は確か………」

「空の女神(エイドス)が人々に授けた七の至宝(セプト=テリオン)にして、遥か昔の人々の争いによって”全ての元凶”が生まれる元にもなった”至宝”ね……」

「”エレボニアが帝国の名を捨てるという償い”は遥か昔のエレボニアの人々の先祖達が犯した”罪”の償いも兼ねているという事ですか………」

「……”焔の眷属”を先祖に持つ”魔女(アタシたち)”にとっては耳が痛い話ね……」

「やれやれ……遥か昔の先祖達の尻拭いの件まで出されてしまったら、その子孫であるエレボニア人の私達も反論の余地はないね……」

「しかも”空の女神”自身の要求でもあるんだから、”空の女神”を崇めているゼムリア人でもあるエレボニア人にとっては受け入れざるをえないだろうな。」

エイドスの話を聞いたガイウスとサラは重々しい様子を纏って呟き、エイドスの意図を察したエマとセリーヌはそれぞれ複雑そうな表情で呟き、アンゼリカは疲れた表情で溜息を吐き、クロウは複雑そうな表情で呟いた。

「……エレボニアが”帝国の名を捨てる”事によって起こりうるエレボニアの人々が受けるショックはカルバード(おれたち)にとっても他人事ではないな……」

「はい……カルバードの人々にとってはシーナ・ディルク達による革命によって”王政を打ち倒し、共和国を建国した事が誇り”でしたのに、連合によってその共和国は滅ぼされ、それぞれの領土として併合された事でカルバードが再び王政に戻ってしまった事はカルバードの人々にとってはショックでしょうからね……」

重々しい様子を纏って呟いたジンの言葉に同意したエレインは複雑そうな表情で呟いた。



「――――――以上が”ハーメルの惨劇”公表後に私が行うエレボニアの皇家・政府を庇う声明を出す為にエレボニアが承諾しなければならない”償い”です。先に私が宣言した通り処刑や賠償金が発生はしませんが、皆さんにとっては厳しい内容の”償い”ですが、どうされますか?」

「クク、確かにエイドスの宣言通りどれも当然の事しか要求していない上、賠償金や処刑等もないな。」

「それでいて、戦後のメンフィルに対する賠償すらも厳しい内容だと感じている放蕩皇子達にとっては受け入れる事が厳しい”償い”だねぇ?」

「……だけどそれらは本来は”百日戦役”終結後すぐに実行しなければならなかった”エレボニアの痛み”でもありますから、13年も”ハーメルの惨劇”を隠蔽した事による”超過分の償い”まではエイドス様は求められていませんから、エイドス様も既にエレボニアに対しての寛大なお心遣いも考慮されていますね。」

エイドスがオリヴァルト皇子達に問いかけるとセルナート総長とワジは静かな笑みを浮かべてそれぞれエイドスの意見に同意し、リースは静かな表情で答えた。

「ハッ、空の女神の”犬”の七耀教会(テメェら)が言っても何の説得力もねぇっつーの。」

「まあ、七耀教会(オレら)がエイドスさんの”下僕”や”犬”と貶される事に関しては否定せえへんけど…………君らも”ハーメルの惨劇”公表後のエレボニアの状況を自分達にとって都合のいい形で治める為にエレボニアだけでなくゼムリア大陸全土の人々の大半が信仰している”空の女神”であるエイドスさんの”威光”を頼ろうとしてんねんから、相応の”代償”が必要なのはわかるやろ?」

「ましてやエイドス様は現代のゼムリア大陸の(まつりごと)への不干渉を貫く意向でしたのに、その意向をエイドス様の寛大なお心遣いによってエイドス様は曲げようとされている事も理解されているのですか?」

「そ、それは…………」

「……エイドス様が仰られた4つの”償い”の件、いかがされますか、両殿下。ここは一端エイドス様達との会談を中断して、皇帝陛下も交えて検討すべきかと愚考致しますが。」

鼻を鳴らして自分達星杯騎士を睨んで皮肉を口にしたアッシュの言葉に対して静かな表情で答えたケビンは表情を引き締めて真剣な表情を浮かべたルフィナと共にアリサ達に問いかけ、ケビン達の言葉に反論できないトワが辛そうな表情で答えを濁している中アルゼイド子爵は複雑そうな表情でオリヴァルト皇子とセドリックにある提案をした。



「……いえ、その必要はありません。―――――そうですよね、兄上。」

「ああ。………――――――”ハーメルの惨劇”公表後エイドス様に皇家と政府を庇う声明を出して頂く為の代償は今エイドス様が仰った4つの”償い”との事です、”父上”。」

「へ。」

「ち、”父上”って事はもしかして……」

「まさか……皇帝陛下が今までの自分達と空の女神達との会談を拝聴されているのですか……!?」

アルゼイド子爵の提案は必要ない事を答えたセドリックはオリヴァルト皇子に視線を向け、セドリックの言葉に頷いた後口にしたオリヴァルト皇子のある言葉を聞いたアリサは呆けた声を出し、ある事を察したエリオットは目を丸くし、ユーシスは信じられない表情でオリヴァルト皇子に訊ねた。

「―――――その通りだ。」

するとその時男性――――――ユーゲント皇帝の声が聞こえるとオリヴァルト皇子は懐から取り出した自身のARCUS(アークス)をエイドス達に見せた。するとARCUSの映像にユーゲント皇帝が映った。

「へ、陛下……!?」

「まさか空の女神達との会談の前に陛下にお繋ぎしたのか?」

「ああ。”ハーメル”の件でエイドス様がどのような”償い”をエレボニアに求めるにせよ、どの道父上には話を通しておくべきだとセドリックと相談して決めたんだ。」

オリヴァルト皇子のARCUS(アークス)に映る病衣姿のユーゲント皇帝を目にしたラウラは驚きの表情で声を上げ、事情を察したミュラーの問いかけにオリヴァルト皇子は静かな表情で頷いて答えた。

「お初にお目にかかる、”空の女神”エイドスよ。私が現エレボニア皇帝ユーゲント・ライゼ・アルノール三世だ。本来であれば私も息子達と共に貴女に面会に向かうべきだったのだが、私自身の不徳によって今は療養中の身の上、通信映像越しの挨拶になり、誠に申し訳ない。」

「貴方の事情も七耀教会から教えてもらって理解していますから、お気になさらないでください。それで…………オリヴァルト皇子達の私に対する依頼内容の一つである”ハーメルの惨劇”公表後空の女神(わたし)がエレボニアの皇家・政府を庇う声明を出す事に対して承諾して頂かなければならない”4つの償い”は通信越しで聞いていたようですが……返事はオリヴァルト皇子達ではなく、貴方がするという事でよろしいのですか?」

「うむ。早速ではあるが”償い”の件についての回答をさせて頂く。――――――女神が仰った”ハーメル”に対する”4つの償い”をエレボニアは必ず全て実行する事を現エレボニア皇帝ユーゲント・ライゼ・アルノール三世の名において約束する。」

「陛下………」

「…………本当によろしいのですか?陛下の代でエレボニアが”帝国”の名を捨てる事は陛下御自身にとっても後の歴史に語られる不名誉な出来事になるでしょうし、何よりも陛下が退位なされば陛下は………」

エイドスの問いかけに対して答えたユーゲント皇帝の答えを聞いたトワが辛そうな表情を浮かべている中アンゼリカは複雑そうな表情でユーゲント皇帝に確認した。



「よい。”ハーメルの惨劇”を公表する事で”百日戦役”もそうだが、今回の戦争の敗戦の件で後の歴史で私が”愚帝”であると語り継がれていく事は確実なのだから私にとっての不名誉等今更な上、”エレボニア皇帝”として百日戦役もそうだが”全て”をギリアスに委ねた事によって去年の内戦や今回の世界大戦の勃発を止める事ができなかった結果エレボニアに多くのものを失わせた私には”皇帝どころか、皇族としての資格”すらもないのだからな。」

「陛下………」

アンゼリカの問いかけに対して答えたユーゲント皇帝の様子をユーゲント皇帝の傍で見守っていたプリシラ皇妃は心配そうな表情でユーゲント皇帝を見つめた。

「そしてこんな愚かな私一人が裁かれる事によって”ハーメルの惨劇”公表後に起こりうる事が考えられるエレボニアの混乱を最小限に抑える事ができるのならば、エレボニア皇帝として望む所の上それが私が”エレボニア皇帝として行わなければならない最後にして唯一の義務”でもあろう。」

「……………………既に陛下は御覚悟を決められたのですか………」

「…………………………」

ユーゲント皇帝の決意を知ったアルゼイド子爵は重々しい様子を纏って呟き、ミュラーは複雑そうな表情で黙り込んだ。

「―――――だからどうか、”ハーメルの惨劇”公表後によって起こりうる事が考えられるエレボニアの混乱を最小限に抑える為に、空の女神(あなた)の慈悲に縋らせて欲しい。――――――この通りだ。」

そしてユーゲント皇帝は通信越しに頭を深く下げ、その様子を見たアリサ達はそれぞれ血相を変えた。

「……………………――――――いいでしょう。アインさん、後で七耀教会の教皇を含めた上層部の方達に空の女神(わたし)がエレボニア帝国からの依頼――――――”ハーメルの惨劇”公表後のリベール、エレボニアの皇家・政府を庇う声明を実行する事を了承した事とその”代償”として私がエレボニア帝国に要求した”ハーメルの惨劇”を行ったエレボニア帝国が実行しなければならない”4つの償い”の件を伝えておいて下さい。」

「―――――承知。」

「あ………」

「まずはこれで一つ目の依頼にして、今後のエレボニアの運命を左右する事になる依頼を請けて頂く事ができましたわね。」

「でも、その”代償”は滅茶苦茶大きいけど。」

「……陛下が決められた以上、俺達も受け入れるしかあるまい。」

「問題は”もう一つの依頼”を請けて頂く際にエイドス様が要求してくるかもしれない”代償”だな………」

少しの間頭を深く下げ続けるユーゲント皇帝を見つめたエイドスは承諾の答えを口にした後アインに視線を向けて指示をし、エイドスの指示にアインは会釈をして答え、その様子を見たアリサは呆けた声を出し、シャロンは静かな表情で呟き、厳しい表情で呟いたフィーにユーシスは静かな表情で指摘し、ラウラは複雑そうな表情で考え込みながらエイドスヲ見つめた。



「貴女の御慈悲にエレボニアの全国民、そして祖先達を代表して心から感謝する、空の女神エイドスよ。セドリック、オリヴァルト。アリシア女王から託された”空の女神へのもう一つの依頼”の件は其方達の判断に任せる。」

「はい、父上……!」

「どうかお大事になさってください、父上。」

ユーゲント皇帝はセドリックとオリヴァルト皇子に声をかけるとオリヴァルト皇子のARCUS(アークス)との通信を切った。

「さて、もう一つの依頼――――――”ゼムリア連合”の調印式に空の女神(わたし)が立ち会う件についてですが………貴方達が空の女神(わたし)による”試練”を乗り越える事ができれば承諾致します。」

そしてエイドスはアリサ達に”もう一つの依頼であるゼムリア連合の調印式に空の女神自身も立ち会う事”についての条件を口にした――――――



 
 

 
後書き

今年はいよいよ閃2と閃3の空白の間にあった”北方戦役”が判明すると思われるノーザンブリア篇のアニメが放映される上、イース新作も発売するとの事ですから今年もファルコム系列の作品が今から楽しみです。そして恐らく今年に灰の騎士の成り上がりは完結できると思います。 
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