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生命の実

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第二章

「ここに石榴の木はありますか?」
「あるがどうしたのじゃ」
「はい、実は住んでいる街の傍に川が流れていまして」 
 そうしてとだ、ヘロデは話した。
「そこにです」
「石榴の実が流れていたのか」
「それを持って来ました」
「そうなのか」
「実はです」
 ヘロデは老人にさらに話した。
「亡くなった父から自分ものでないものは絶対に取るなとです」
「言われたのか」
「はい、それでなのです」 
 老人に率直な顔と声で答えた。
「それでここまで来ました。ただ途中です」
「街というとここから遠いな」
「三日三晩かかりました」
「そこを歩いてきたのか」
「それで傷んでいるからも知れません」
「それはいい、しかしあんたは実に誠実で真面目だな」
 老人は石榴を受け取ってから述べた。
「あんたなら娘をやれる」
「娘さんをですか」
「うむ、しかしその娘は手足がなくな」
 そうしてというのだ。
「丸い球の様な身体をしておるがよいか」
「そう言われることも運命ですから」
 それでとだ、ヘロデは応えた。
「喜んで」
「受けてくれるか」
「はい、ただ母にそのことを話していいですね」
「当然のことだ、親が子の結婚のことを知らずして誰が知るか」
「そうですね、では一旦街に戻ります」
 こう言ってだった。 
 ヘロデは一旦街に戻って母に話した、すると母マグダ髪を切らず質素な服を着た痩せた女である彼女はこう言った。
「それもお父さんの考えね」
「パンのことからの」
「この申し出は受けるべきよ」
 息子に答えた。
「是非」
「お母さんがそう言うなら」
「ええ、受けましょう」
「そう答えるよ」 
 ヘロデはここでも率直に述べた、そしてだった。
 果樹園に戻ってだ、老人に結婚の申し出を受けると答えた。すると老人はヘロデに対して笑顔で話した。
「ではこちらで用意をだ」
「整えて下さいますか」
「娘の方はな」
「では私達は私達で」
「そうしてくれ、用意が整えば行こう」
 街にというのだ。
 ヘロデは老人の言葉を受けて街に戻って式の準備をした、そして。
 老人が多くの人と共に来たが。
 その中に布ぬくるまった丸いものが見えてヘロデの周りの者達が話した。
「あれがだな」
「娘さんだな」
「噂に聞いた」
「手足がないという」
「丸い身体の」
「式が終わってからじゃ」
 式に合わせて整った服を着た老人が言ってきた。
「娘を見せよう」
「わかりました」
 ヘロデは老人の言葉に頷いたが。
 周りはそんな彼を見て話した。
「ここでもヘロデらしい」
「実に誠実だ」
「言われることをありのまま受ける」
「我々ならまず娘さんに会わせてくれと言うが」
「それをしないとは」
「ヘロデは何と誠実な男だ」
 こう言ってだった。
 ヘロデの率直で真面目な姿を見て感心した、そしてだった。
 祝宴が行われた、駱駝に婚礼の品と土産にだった。 
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