助けた女性が何と
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第一章
助けた女性が何と
南郷英寿はこの時会社の取引先に向かっていた、会社を出る時彼は課長にくれぐれもという口調で言われた。
「今回は八条グループの系列だからね」
「若し失敗したらですね」
「今後八条グループの企業と取引が出来なくなるかも知れない」
課長は南郷に真剣な面持ちで話した。
「そうなるとだ」
「会社にとってどれだけまずいか」
「だからだよ、いいね」
「はい、粗相のない様にします」
「だから君に行ってもらうんだ」
課長は南郷にこうも言った、きりっとした精悍な顔立ちで口元が特に引き締まり清潔な短めの黒髪にすらりとした長身の彼に。
「うちの営業で一番だから」
「それで、ですか」
「うん、くれぐれもね」
「はい、取引を成功させます」
南郷も誓った、そうしてだった。
彼は出発した、だがその途中で。
苦しんでいる妊婦の人と出会った、それでだった。
その女性を助けたがその時に課長にスマートフォンで連絡した。
「あの、蹲っている妊婦さんがいまして」
「助けているのか」
「はい、取引には何とか間に合わせますが」
「わかった、君はそこにいろ」
課長は即断で答えた。
「妊婦さんは放っておくな」
「命に係わるからですか」
「赤ちゃんのこともあるだろ」
こうも言うのだった。
「そこで放っておくとだ」
「駄目ですね」
「人命優先だ、私が行く」
取引にというのだ。
「今行けば間に合う、君はそこにいろ」
「わかりました、お願いします」
「むしろ放っておく方が駄目だ」
課長はさらに言った。
「だからだ」
「ここはですね」
「妊婦さんを頼むぞ」
課長は南郷に告げるとだった。
社員達に事情を話してすぐに取引先に向かった、社の者達もそれならと頷いて留守は任せて下さいと答えた。
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