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イベリス

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第七十七話 夏休みの勉強その四

「遥かにね」
「健全な考えだけれどな」
「けれどそうじゃない人もいるのね」
「そういうことだ」
 まさにというのだ。
「本当にな」
「世の中そうなの」
「馬鹿もいるんだ」
 父は忌まわし気に言った。
「麻薬やってもいいっていうのがな」
「そうなの」
「テロして人殺したら殺人だな」
「違うの?」 
 咲は問い返した。
「人殺しはね」
「人殺しだな」
「何を言ってもね」
 それでもというのだ。
「テロはテロで」
「殺人は殺人だな」
「ええ」
 咲はその通りだと答えた。
「もうね」
「そうだな、しかしな」
「それでもなの」
「権力に反対してな」
 そうした考えでというのだ。
「テロで幾ら人を殺してもな」
「いいっていうの」
「そうした考えの人いるの」
「お父さんは神戸の大学に行ったな」
「八条大学ね」
「そこで聞いたんだ」
 神戸での大学生活の中でというのだ。
「大阪のお店でそんな人がいたらしい」
「そうなの」
「確か上本町だったか」 
 父は記憶を辿りながら話した。
「そこだったか」
「上本町?」
「大阪も複雑なんだ」
 西のこの街もというのだ。
「何かとな」
「東京みたいに」
「流石に東京程じゃないがな」 
 それでもというのだ。
「複雑でな」
「それでなの」
「上本町とかいう町もあってな」
 父は大阪の地名も出して話した。
「そこにハイタイタウンってあるらしいんだ」
「ハイハイ?」
「ああ、上本町に百貨店みたいなのがあってな」
「東京にもある感じ?」
「そんなのがあってな」
 それでというのだ。
「そこに昔ゲームグッズとか売ってるお店があったんだ」
「そうしたお店あったの」
「そこでオウムのテロがあってな」
「あのサリン使った」
「他にも色々やったな」
「多くの人を殺したな」
「私も知ってるけれど」 
 それでもとだ、咲は嫌そうに語った。
「最悪よね」
「テロとしてもな」
「そうよね」
「けれどそのお店の店員の一人が言ったんだ」
「何て?」
「俺が権力に反対するならいいってな」
「ああ、それ聞いたことあるわ」
 咲はまた嫌そうに述べた。 
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