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展覧会の絵

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第十三話 ベアトリーチェ=チェンチその八

「だからね」
「ううん、そういうことなんだ」
「学校の先生は。日本の場合は特にね」
「酷いっていうんだね」
「僕の見たところね。かなりね」
「そうなんだ。日教組もやっぱり酷いんだ」
「その力が強い学校は大変だろうね」
 言葉は予想の形だが実は確信していた。確かに日教組は悪質な組織である。
「この学園には日教組の力が弱いことは幸いだよ」
「まあ。うちの学園はね」
「八条グループは財閥系だったね」
「うん、明治維新の頃から続くね」
 三井や三菱と並ぶ大財閥だったのだ。それが今では世界的な企業グループになっているのだ。
「そうした企業グループだよ」
「だよね。確かね」
「昔から教育にも力を入れていてね」
「この八条学園もあるんだね」
「そうだよ。だからなんだ」
「企業にとって労働組合の存在は内部チェックという意味で必要だけれど」
 十字は淡々と述べる。これは確かなことだった。どの様な組織にも内部チェックというものは必要だ。そして被雇用者側を守る立場からも労働組合は必要なのだ。
 だがそれでもだとだ。十字は述べた。
「その組合にもよるよ」
「組合だといいってことにはならないんだね」
「そう、ならないよ」
 まさにそうだとだ。十字は和典にこのことも話した。
「悪質な労働組合もあるよ」
「日教組もそうなんだね」
「特に悪質だね」 
 十字は日教組を極めて悪質な労働組合だと断定した。
「日本にはそうした労働組合が多いみたいだけれどね」
「教科書じゃ労働組合は正義みたいに書いてあるけれど」
「組合によるよ」
 労働組合が全て正義ではないというのだ。決して。
「それはね、神に仕える立場の人間が常に正義かというとそうではないのと同じだよ」
「ああ、バチカンって昔は」
「今でもいるよ。酷い聖職者はね」
「だよね。バチカンの腐敗って酷いよね」
「けれど神はそうしたものも御覧になられていて」
 聖職者達も見ているというのだ。その至高の存在は。
「そして裁きを下されるよ」
「えっ、裁きって」
「文字通り裁きだよ。神のね」
「じゃあ処刑とかも?」
「処刑は神の為されることではないよ」
 十字は処刑についてはだ。神が為すことではないと述べた。
 では誰がそれを為すのか。彼はそのことも言った。
「それは神に任された者が行うんだ」
「神様に」
「そう、神にね」
 そしてだ。それが誰かというと。
「教会にはそうした人間もいるんだ」
「内部をチェックする人がいるんだ」
「内部だけじゃないけれどね」
 外についてもだというのだ。
「神の裁きの代行自体が務めだから」
「それだったらその絵の少女の父親もかな」
 ふとだ。和典は十字との話からだ。絵のことを思い出しながら述べた。
「そうなるのかな」
「そう。彼についてもね」
「やっぱり処刑される運命だったんだ」
「本来はね」
 そうなったとだ。十字はこうも述べた。
「その筈だったけれど」
「この娘が殺してしまったんだね」
「家族や使用人達と共にね」
「だから処刑されたんだね」
 和典はこのことをこのうえなく悲しい顔で言った。
「そうなったんだね」
「そう。その通りだよ」
「処刑がもう少し早かったら?」
「彼女は死ぬことはなかったよ」
 絵を見てだ。十字は述べた。
「彼女を救えなかった。死刑執行人は」
「で、別の死刑執行人がこの娘を殺してしまったんだ」
「親殺しはどうしても無視できなかったからね」
 どの様な事情があってもだった。こうした考えはどの世界でも長い間厳然と決められていた。そこに柔軟性ができたのは近代になってからだ。 
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