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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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西ゼムリア通商会議~西ゼムリア通商会議の閉幕、そして――~

~エルベ離宮・紋章の間~



「ゼ、”ゼムリア連合”とは一体どういったものなのでしょうか……?」

「『新たな時代が訪れる事になるゼムリア大陸の恒久的な平和の為』に提唱されたとの事から察するに、”不戦条約”とも何らかの関わりのある国際条約の類でしょうか?」

「ええ。『ゼムリア連合』とは『不戦条約』に続く抑止力を持つ新たな平和条約ですが『不戦条約』とは異なり、”強制力がある条約”です。」

「『ゼムリア連合』の条約内容は二つあり、一つは『国家間で外交問題が発生すれば、必ずその問題を当事者である国家間同士で―――特に武力で解決せず、条約に調印した国家も交えて解決する。』と、一見『不戦条約』とほとんど変わらないように見える国際条約ですが、『ゼムリア連合』の『不戦条約』とは異なる部分とは”条約違反した際に条約違反をした国家に対する罰則が発生する事と武力行使をされていない中立状態の国家にも義務が発生する事”です。」

「条約違反――――――国家間で外交問題が発生した際、片方の国家が武力行使による解決――――――つまり”戦争”という手段を実行した際に”罰則”が発生する上、戦争を仕掛けられていない中立国家にも”義務”が発生するとの事ですが、その”罰則”と”義務”とはどのような内容なのでしょうか?」

アリシア女王の提唱にルーシー秘書官が戸惑っている中質問をしたアルバート大公の質問に対してアリシア女王とクローディア王太女がそれぞれ答えると、ある事が気になったルイーネが真剣な表情で訊ねた。

「”罰則”内容は”武力行使をした側――――――つまり、戦争を仕掛けた側の国家”に対し、全ての国家勢力が”経済封鎖”を行う事です。」

「フフ、なるほど。今回の戦争の際に連合がエレボニアの国力・戦力に間接的にダメージを与えた政略である”大封鎖”を”全ての国家勢力”が行う事で”戦争を仕掛けた側の国に対して経済制裁”を行うという訳ですか。」

クローディア王太女の説明を聞いて罰則の目的を悟ったミルディーヌ公女は静かな笑みを浮かべて推測を口にした。

「そして中立国家の”義務”とは、”武力行使をしている国家が話し合いによる解決に応じるまで、武力行使をされている側の国家への支援を続ける事です。”」

「つまりは”中立国家も傍観者の立場になる事は許されず、戦争を仕掛けられている側に対して支援をする”という事か。」

「”支援”とは仰いましたが、具体的にはどのような”支援”になるのでしょうか?」

アリシア女王の説明を聞いたシルヴァン皇帝は真剣な表情で呟き、レーグニッツ知事は新たな質問をした。



「”物資、医療、軍事等その時のそれぞれの国家の状況に応じた支援”になる為、”どの国家も必ず何らかの支援を行わなければならない義務が発生します。”」

「なるほど。要するに”戦争を仕掛けた側の国家はゼムリア大陸全土の国家を敵に回す――――――つまりはゼムリア大陸という世界を敵に回す”という事になるのですわね。」

「確かに”罰則”もそうですが、”義務”の事を考慮すると、『不戦条約』以上の戦争を阻止する抑止力になりますね……」

「ああ。戦争を仕掛ければ世界各国による経済制裁に加えて戦争を仕掛けられた側の国家には世界各国による様々な支援がある事が予めわかっていたら、戦争を仕掛ける事なんてできないだろうからね。」

続けて説明をしたアリシア女王の話を聞いたセシリアは納得した様子で呟き、驚きの表情で呟いたセドリックの言葉にオリヴァルト皇子は静かな表情で頷いて答えた。

「た、確かに『不戦条約』を遥かに超える抑止力になるとは思いますが………」

「経済制裁はともかく、”戦争勃発時の中立国家の義務”――――――”各国によるあらゆる支援”はさすがに問題があると思われるのですが……”支援をした時点で、中立国家も戦争に関わる事”になってしまうのですから。」

「フン、”世界大戦”と言っても過言ではない今回の戦争を”傍観者の立場を貫いた事で何もせず、世界大戦を乗り越える事ができた”レミフェリアからすれば、”戦争が勃発すれば自動的に自国も関わらなけれならない義務”等願い下げだろうな。」

「まあ、自国が戦争に巻き込まれないように立ち回る事は間違ってはいないが、それも時と場合によると思うがな。」

「しかもアリシア女王陛下は支援の件に関して、”それぞれの国家の状況に応じた支援”と仰ったのですから必ずしも”軍事支援”をする必要はないと理解していながら、それでも反対されたら、それこそレミフェリアは各国から”事なかれ主義で他国の有事には興味がない薄情な国家”に見られてしまう可能性も考えられますわよ?」

一方ルーシー秘書官は複雑そうな表情で答えを濁し、アルバート大公が複雑そうな表情で指摘するとシルヴァン皇帝は鼻を鳴らした後アルバート大公達に視線を向けて嘲笑して指摘し、ヴァイスとルイーネはそれぞれ苦笑しながらレミフェリアのVIP達に忠告した。

「……ッ!」

「むう…………」

シルヴァン皇帝達の指摘に対して反論できないルーシー秘書官は辛そうな表情で唇を噛みしめ、アルバート大公は複雑そうな表情で唸り声を上げた。



「そういえば『ゼムリア連合』の条約内容は二つあるとの事ですが、もう一つの条約内容とはどういったものなのでしょうか?」

「『ゼムリア連合』のもう一つの条約内容とは、”武力行使による国境の変更を決して認めない事”です。」

「なお、”国境の変更には内戦や独立戦争と言った、対象の国家内で勃発した武力行使による国境の変更も含まれる事”になっています。」

「ほう?つまりは『ゼムリア連合』の目的は国家間の戦争を勃発させない為の抑止力だけでなく、それぞれの国家の事情によって起こりうるかもしれない騒乱への抑止力にもなるという事か。」

「フフ、本国側の事情で今後ゼムリア大陸側で戦争を起こす事を望まないメンフィル帝国もそうだけど、新興の国家でありながら他国の領土を併合した事によって将来”独立戦争”が起こりうる可能性も考えられるクロスベル帝国にとってもメリットになる条約ね。」

「今回の戦争で戦力・国力共に著しく衰退したエレボニア帝国にとってもありがたい話だね。」

「はい。あまり考えたくはないですけど、宰相閣下の政策によってエレボニアに併合された小国や自治州が今回のエレボニアの敗戦を好機と判断し、”エレボニアからの独立を目的とした独立戦争”を起こさせない為の抑止力にもなるのですから。」

セシリアの質問に答えたアリシア女王とクローディア王太女の説明を聞いたヴァイスは興味ありげな表情で、ルイーネは静かな笑みを浮かべて呟き、疲れた表情で呟いたオリヴァルト皇子の言葉に同意したレーグニッツ知事は複雑そうな表情である推測をした。



「フッ、今回の会議でリベールは『不戦条約』以上の抑止力がある何らかの平和条約を提唱すると想定していたが、まさかその想定を遥かに上回る抑止力がある条約を提唱するとは、さすがはリベールだ。――――――ちなみに条約内容から察するに、条約に調印すべき国家勢力はこの場にいる国家勢力だけでは足りないのだろう?」

「はい。”ゼムリア連合の調印対象はゼムリア大陸に存在する全ての地域”になりますので、『不戦条約』とは異なり、自治州や都市国家の代表者の方々にも調印して頂きたいと考えております。」

「そして、新たな時代が訪れる事になるゼムリア大陸の恒久的な平和を築く為にも世界大戦の当事者であった我々が最初に調印の意志を世界に示すべきと考えているのですが、いかかでしょうか?」

静かな笑みを浮かべてアリシア女王達への賞賛の言葉を口にしたシルヴァン皇帝はある事をアリシア女王達に訊ね、シルヴァン皇帝の問いかけにクローディア王太女が答えた後アリシア女王は決意の表情を浮かべて答えた後各国のVIP達に問いかけた。するとそれぞれのVIP達はそれぞれの関係者達と小声で短いやり取りをした後答えを出した。

「―――――メンフィルは『ゼムリア連合』の調印に賛成する。」

「同じくクロスベルも『ゼムリア連合』の調印に賛成だ。」

「2度と戦争を起こさない事を望むエレボニアも当然『ゼムリア連合』の調印に賛成します。」

「レミフェリアも『ゼムリア連合』の調印に賛成です。」

「あ…………」

「―――――各国の皆様の英断に心から感謝致します。では早速になって申し訳ないのですが調印式の日程について――――――」

シルヴァン皇帝が賛成の答えを口にすると各国の代表者達――――――ヴァイス、オリヴァルト皇子、アルバート大公はそれぞれ賛成の答えを口にし、シルヴァン皇帝達の答えを聞いたクローディア王太女は呆けた声を出した後明るい表情を浮かべ、アリシア女王は各国のVIP達に感謝の言葉を述べた後シルヴァン皇帝達と『ゼムリア連合』の調印式等の打ち合わせを始めた。



こうして……『西ゼムリア通商会議』によって連合とエレボニアの戦争は和睦という形で決着がついた。そして会議が終わった後、各国のVIP達はそれぞれの祖国へと帰国し、カレイジャスに戻ったオリヴァルト皇子とセドリックは紅き翼の面々を集めてある事を伝えた。



同日、PM8:20――――――



~カレイジャス・ブリーフィングルーム~



「ええっ!?最後の決戦が始まる前に、エイドス様に『ゼムリア連合』の調印式に立ち会ってもらえるように頼みに行くって……一体何の為に殿下達はそのような事を考えたんですか……!?」

オリヴァルト皇子の説明を聞いたエリオットは驚きの表情で声を上げた後疑問を口にした。

「実は会議が終わった直後にアリシア女王陛下から頼まれたんだ。『ゼムリア連合』の抑止力をより強める為にも、異世界とゼムリア大陸が繋がるまではゼムリア大陸にとっては唯一神であったエイドス様にも調印式に立ち会って貰いたいと考えていて、エイドス様に『ゼムリア連合』の調印式に立ち会って貰う要請と説得を私達エレボニアに委ねたいとね。」

「アリシア女王陛下が……」

「確かに異世界と繋がるまではゼムリア大陸にとっては唯一神であった”空の女神”自らが『ゼムリア連合』の調印式に立ち会えば、『ゼムリア連合』の抑止力は更に高まるでしょうね。」

「何故女王陛下はリベール自らが”空の女神”への要請や説得をするのではなく、わざわざエレボニアに依頼されたのですか?」

オリヴァルト皇子の話を聞いたラウラは驚きのあまり呆け、エレインは真剣な表情で推測し、ユーシスは戸惑いの表情で疑問を口にした。

「百日戦役、そして今回の世界大戦を勃発させた”元凶”であるエレボニア自らが『ゼムリア連合』の抑止力を更に高める為の貢献をする事で、百日戦役と今回の世界大戦で堕ちた各国や国民達の皇家・政府への信頼を少しでも回復する事ができると考えられたようです。」

「なるほどね。世界の平和の為の貢献をしたら、各国やエレボニアの民達もアルノール皇家やエレボニア政府を少しは見直すと考えたのね。」

「つまり女王陛下は殿下達―――――エレボニアの為にエイドス様の説得を殿下達に頼んだのか………」

「フフ、改めて殿下共々私達エレボニアの民達は一生リベールに足を向けて寝られなくなったね。」

「うん……そしていつか必ずエレボニアは今までリベールから受けたたくさんの恩をリベールに返さなければならない事もね。」

セドリックの説明を聞いたセリーヌは納得した様子で呟き、ガイウスは呆けた表情で呟き、アンゼリカとトワは静かな笑みを浮かべて呟いた。



「で、ですが……そのエイドス様の説得をエイドス様自身思う所がある私達―――――エレボニアが行う事は相当厳しいと思うのですが……」

「以前メンフィル・クロスベル連合の説得を頼みに行った時も”ハーメルの惨劇”の”償い”もしていないエレボニアの頼みに応じるつもりは一切ないと言っていたからな……」

「ええ……それにエイドス様自身、現代のゼムリア大陸の政治には一切関わらない事を決めているそうだし……」

一方ある懸念を抱いたエマとマキアス、アリサはそれぞれ不安そうな表情で推測を口にした。

「今回の戦争が終わったらエレボニアは”ハーメルの惨劇”を公表した上、賠償金もリベールに支払う事が決まっているんだから、それで”償い”になるんじゃないかな~?」

「確かにそうなんだけど……賠償金の支払いだけで、空の女神が”償い”として認めるかどうかはわからないわ。」

「だが逆に考えれば、エイドス様も気にかけていられる程の”ハーメルの惨劇”の件の”償い”をエイドス様が納得する形で行う事になれば、エイドス様を説得できる”突破口”になる事も考えられる。」

「そうですね……問題はエイドス様がどのような”償い”ならば納得するかですが……」

「ま、何にせよ実際に会って話してみねぇとわからないだろうから、結局は出たとこ勝負だな。」

ミリアムの疑問に対してサラは複雑そうな表情で指摘し、静かな表情で呟いたアルゼイド子爵の意見にミュラーは静かな表情で同意し、クロウは疲れた表情で呟いた。



「それで?肝心の”本物の空の女神”の居場所とかわかってるのかよ?まさかとは思うが、居場所もわからず決めた訳じゃねぇよな?」

「―――――心配無用よ。”空の女神”達の現在の居場所はエステル達と情報を交換した際に教えてもらったわ。」

「エイドスさん達は現在、メンフィル帝国領のユミルに滞在しているそうだよ。」

「よりにもよって今回の戦争の原因が起こった場所であるユミルに滞在しているとはな……」

「い、一体何の為にユミルに滞在しているんだろう……?」

「どうせ”家族旅行”とかじゃないの?リベールで会った時もそうだったし。」

ある事が気になったアッシュの疑問にシェラザードとアネラスが答えるとユーシスは呆れた表情で呟き、戸惑いの表情で疑問を口にしたエリオットの疑問にフィーはジト目で推測を口にした。

「あ、あはは………”家族旅行”ではありませんけど、まさにエイドスさんらしい理由でユミルに滞在しているそうです。」

「霊脈の遮断に一段落ついたから、”慰安旅行”で温泉郷として有名なユミルを訪れて滞在しているんだそうだぜ。」

「い、”慰安旅行”って………」

「フフ、先日の大戦が終わったとはいえまだ連合とエレボニアの戦争が完全に終結していない今の状況で”慰安旅行”をするとは、相当な”器”の持ち主のようですわね、エイドス様は。」

苦笑しながら答えたティータと呆れた表情で答えたアガットの答えを聞いたその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アリサはジト目になり、シャロンは苦笑しながら呟いた。



「え、えっと……ユミルはメンフィル帝国領ですから、訪問する為にはメンフィル帝国からの許可を取る必要がありますけど……」

「ああ。だから明日まずは連合本陣に滞在しているリウイ陛下から許可を取る為にハーケン平原に向かい、許可が取れた後はユミルに向かう。元々ナイトハルト君達に帝都奪還戦の際の”先鋒”の件についての相談もそうだが、投降の件についての詳しい経緯(いきさつ)も聞く為にもハーケン平原の連合本陣を訊ねる必要もあるからね。」

「あ……………」

「そういえば、ナイトハルト教官達から投降の詳しい経緯を聞く事もそうですが、”先鋒”の件の相談もする必要もありますね。」

気まずそうな表情で話を変えたトワの疑問に答えたオリヴァルト皇子の答えを聞いたエリオットは呆けた声を出し、アンゼリカは真剣な表情で呟いた。

「はい。それに大戦後の帝都もそうですが、オズボーン宰相達の状況も知る事ができるかもしれません。」

「ま、何にしても今後の私達の行動は明日だから、皆、明日に備えて今日はゆっくりと休んでくれ。」

アンゼリカの言葉にセドリックが頷いた後、オリヴァルト皇子はアリサ達を見回して今日は休むように伝えた。



~同時刻・エレボニア帝国・バルヘイム宮~



「閣下……今、何と仰いました……?」

「フム、聞こえなかったのならばもう一度命令内容を聞くがいい。――――――”幻想機動要塞”の顕現の準備を始めよ。」

一方その頃、アルベリヒは呆然とした様子でオズボーン宰相に問いかけ、問いかけられたオズボーン宰相はある命令を出した。

「こんな時に性質の悪い戯れは止めて頂きたい!”幻想機動要塞の顕現は黒の史書通りならば、聖女が死してから”にも関わらず、聖女は今もなお健在どころか、どの騎神達も”相克”すらも行っていない状況!挙句の果てには先日の大戦でエレボニア帝国軍が敗戦し、この帝都は忌々しき想定外(イレギュラー)たるメンフィル・クロスベル連合とヴァイスラントに完全に包囲されてしまい、帝都に未だ残っている僅かな戦力だけでは勝ち目がない事は明白な上、その僅かな戦力から大勢の脱走兵が発生し、閣下に忠誠を誓っていた情報局まで閣下を裏切り脱走と共に幽閉していたヴァンダールの当主を奪い、連合に投降したとの事!もはや今のエレボニアに勝ち目はありません!腹立たしい話だが、ここは帝都に残っている戦力を囮にし、囮に連合の相手をさせている間に我らは再起を図る為に身を隠すべきだというのに、我ら地精の祖先が1200年前に築いた”最終相克”の舞台である”幻想機動要塞(トゥアハ=デ=ダナーン)”を顕現させる等理解不能です!しかも忌々しき”灰”の”起動者(ライザー)”達による想定外の襲撃によって予備の拠点が全て破壊された事で”幻想機動要塞”を守護する結界を構成する”塩の杭”の顕現も不可能な上、何らかの要因によってエレボニア帝国全土の霊脈が次々と遮断され続けた事で、”幻想機動要塞”の機能も兵装は愚か、移動すらも不可能ですから顕現したとしてもその場で浮遊する事しかできない状態です!まさか閣下は我ら地精の祖先が1200年前に作り上げた”最終相克”の舞台を無駄にするおつりですか!?」

オズボーン宰相の命令に対してアルベリヒは怒りの表情で反論したが

「無駄にするつもり等毛頭ない。何せ”幻想機動要塞が激動の時代を終わらせる為に私達が足掻き、そして果てる最後の舞台になるのだからな。”」

「な――――――」

不敵な笑みを浮かべて答えたオズボーン宰相の信じられない答えにアルベリヒは絶句し

「連合の力を推し量れなかった事や様々な想定外(イレギュラー)によって私達がここまで追い詰められてしまった事は私にとっても想定外ではあったが……結果的に”私の望み”は叶うのだから、その為にも”幻想機動要塞”の顕現は必要という事だ。」

「か、閣下の”望み”……?それは”大陸統一”のはずでは………――――――!ま、まさか……!?」

オズボーン宰相の話を聞いたアルベリヒは困惑したがすぐにある事に気づくと厳しい表情でオズボーン宰相を睨んだ。

「確かに”エレボニアによる大陸統一は私の望みの一つではあった”が、もはや叶わぬ望みとなった以上、もう一つの”望み”を叶わさせる為にも最後まで付き合ってもらうぞ、アルベリヒ――――――いや、イシュメルガの下僕共?」

「ドライケルス、貴様……ッ!”自分諸共イシュメルガ様と我ら地精を想定外(イレギュラー)共に滅ぼさせる”つもりか!祖国の滅亡を受け入れた挙句、祖国を救い、繁栄に導く真の”神”たるイシュメルガ様を道連れにする等、貴様、それでもエレボニアの皇帝か!?」

オズボーン宰相のやろうとしている”全て”を察したアルベリヒは怒りの表情で声を上げてオズボーン宰相を睨んで指摘した。

「元よりイシュメルガにこの身を捧げた時から、”イシュメルガを滅ぼせるのならばどのような手段でも構わん。”――――――”例えその手段がこの身が滅され、エレボニアが滅亡しようともな。”それこそが”俺”の人生を弄んだ”元凶”にして、”エレボニアの真の災厄”への”意趣返し”だ、」

「オノレオノレオノレ!謀ッタナ、ドライケルスゥゥゥゥ――――――ッ!!」

アルベリヒの指摘に対してオズボーン宰相が答えるとオズボーン宰相の背後に待機している”黒の騎神”イシュメルガが怨嗟の声を上げた。



「貴様……ッ!――――――貴様がそのつもりならば、イシュメルガ様や私達は今ここで手を切らせてもらう!イシュメルガ様や私達を謀った罪……貴様がその身を捧げてでも命を助けた貴様の大切な息子に償ってもらう事に後悔しながら連合に滅されるがいい!」

「フッ、イシュメルガの宿主を私から息子(リィン)に変えるつもりのようだが……確か息子(リィン)想定外(イレギュラー)たる異世界の女神との”契約”を交わした事によって、息子(リィン)の心臓に宿っていた貴様の”呪い”は滅されたのではなかったか、イシュメルガよ?」

「何……ッ!?」

怒りの表情でオズボーン宰相を睨んだ後不敵な笑みを浮かべたアルベリヒだったが全く動じず笑みを浮かべながらイシュメルガに問いかけたオズボーン宰相の問いかけを聞くと信じられない表情を浮かべてイシュメルガへと視線を向け

「オノレ、オノレ、オノレエエエエエエ……ッ!!」

「バ、バカな……ま、まさか本当に異世界の女神如きがイシュメルガ様の呪いを浄化したというのですか……!?」

オズボーン宰相の問いかけに対してアイドスを思い出して怨嗟の声を上げ続けているイシュメルガの様子を見てオズボーン宰相の話は真実である事を悟ったアルベリヒは驚きの表情でイシュメルガを見つめながら声を上げた。

「――――取り乱している所悪いけど、更に最悪な事に”僕達は連合によって言葉通り逃げる事すらもできない状態”だよ。」

するとそこにゲオルグが二人に近づいてアルベリヒに声をかけた。

「ゲオルグ……それは一体どういう事だ!?」

「帝都やその周辺一帯が”精霊の道”も含めて”転位”ができなくなった。恐らく……いや、確実に連合の仕業だ。以前クロスベルに”金”を獲得しようとしていたアランドール少佐達の話によると、連合の関係者達による転位封じの結界によって転位による撤退ができなかったとの事だから、その件を考えると連合は既に大規模な転位封じの結界、もしくは魔導装置で帝都一帯とその周辺の転位を封じたんだろう。」

「何ッ!?――――――バ、バカな………」

苦々しく語ったゲオルグの報告を聞いて驚きの表情で声を上げたアルベリヒは転位の魔術を発動したが、転位の魔術は何度試しても発動しなく、現在は転移すらもできない状態である事に愕然とした表情を浮かべた。

「フフ、まさか”転位”すらも封じるとはさすがは我が計画を尽く打ち破った連合―――――いや、メンフィルと”六銃士”と言うべきか。”私と俺の最後の舞台”、否が応でも最後まで付き合ってもらうぞ、地精、そしてイシュメルガよ。」

「ググググググググ…………ッ!」

「まさかこんな事になるなんて………ハハ、これじゃあ僕は一体何の為に………」

「オノレオノレオノレ――――――ッ!」

不敵な笑みを浮かべながら語ったオズボーン宰相の言葉に対してアルベリヒは怒りの表情を浮かべて唸り声を上げ、ゲオルグはこれから起こる自分達の未来を想像して呆然とした後寂しげな笑みを浮かべ、イシュメルガは追い詰められた自分達の状況に焦りと怒りを込めた怨嗟の声を上げ続けた。

(フフッ、これで”舞台”は整うだろう。”俺の真の望み”を叶える為にも、仲間達や想定外(イレギュラー)と共に俺を殺しに来るがいい、息子(リィン)よ―――――!)

そしてオズボーン宰相は満足げな笑みを浮かべながら窓へと視線を向けて決して和解する事はない大切な息子であるリィンを思い浮かべた。



ゼムリア歴1206年、12月――――――



~???~



「おおおおおおおぉぉぉぉぉ……ッ!」

「オオオオオオオォォォォォ……ッ!」

イシュメルガ達が自分達が追い詰められた状況である事を悟って焦りを感じているその頃、”ディル=リフィーナと繋がったゼムリア大陸とは異なるゼムリア大陸から遠く離れた星”で”鬼化し、暴走状態のリィンらしき青年”と”イシュメルガらしき意志”が”呪いの力に蝕まれたヴァリマールらしき騎神”の操縦席の中で”食らい合い”を繰り返し続けていた。



オノレオノレオノレ――――――ッ!



「……ッ!?今ノハ……我…………?」

するとその時、”何らかの因果”によって自分と全く同じ力を感じたイシュメルガらしき意志は食らい合いを中断した。

「チャンスだぜ、リィン!よくわからないが相手は何かに気を取られているぞ!」

「いっけー、リィン――――――ッ!!」

「おおおおおおおぉぉぉぉぉ……ッ!」

するとその様子に気づいたクロウらしき青年の姿をした霊体とミリアムらしき少女の姿をした霊体がリィンらしき青年に声をかけ、声をかけられたリィンらしき青年はイシュメルガらしき意志を食らおうとし

「ヌウッ!?オオオオオオオォォォォォ……ッ!」

リィンらしき青年の攻勢に気づいたイシュメルガらしき意志は再びリィンらしき青年との食らい合いを再開した。



~???~



「まさか………こんな事が起こるなんて………だけど、”本来よりも1年半も早く奥義伝承を終えた上アイドスと契約しているリィンがいる因果”だったら”今繋がってしまった因果のリィン達を救う”事ができるかも……!」

更に同じ頃、謎の空間で”銀髪のキーアらしき少女”は追い詰められた状況のオズボーン宰相達の様子と食らい合いを繰り返し続けているリィンらしき青年達の様子の映像を見比べて驚きの表情を浮かべた後決意の表情を浮かべた。





『西ゼムリア通商会議』が閉幕すると各国のVIP達はそれぞれの祖国へと帰国し、シルヴァン皇帝の護衛である灰獅子隊もレボリューションに帰還したが、大戦で捕虜になったエレボニアの軍人達の処遇や戦後の話し合いの為にセシリアとミュゼがグランセルに一泊することになったので、レボリューションもグランセルに停泊する事になった。



そしてその日の深夜、西ゼムリア通商会議が終わった後すぐに伝えられたエステルからの伝言――――――カシウス中将からリィンに話がある為、もし時間があれば指定の時間にグランセル城の前にエリゼと共に来て欲しいという内容を聞いたリィンは伝言内容に従って指定の時間にエリゼを伴ってグランセル城前へと向かった――――――







 
 

 
後書き
これでようやく西ゼムリア通商会議篇は終了です。既にお気づきと思いますが、今回の話で後日譚である創篇のフラグも発生しましたwそして次回はどんな話になるのか察している人達もいるかとww 
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