昔のカット
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第二章
「本当にな」
「お父さんとお母さんもそう思うからよ」
「あのカットにはしないんだな」
「そうよ」
実際にというのだ。
「別に狩りもしないしね」
「うちはな」
「あんたはラーメン屋で」
息子の仕事の話もした。
「お父さんもよ」
「肉体労働でな」
「そうしたことはしないからよ」
だからだというのだ。
「必要もないし」
「このままか」
「そうよ、夏は短くしてもね」
それでもというのだ。
「ふわりはこのままよ」
「そうなんだな」
「ふわりはどう思うかしら」
母は笑ってふわり自身に声をかけた。
「毛はこのままでいい?そのカットで」
「ワン」
そう言われるとだ、ふわりは。
一旦動きを止めて座って母に顔を向けてだ、一言鳴いて応えた。母はそのふわりの仕草を返事と受け取って息子に話した。
「ふわりもね」
「それでいい感じだな」
「そうよね」
「じゃあな」
「これからもね」
「ふわりの毛はこのままか」
「そうしましょう、一番可愛いし」
このままの状態がというのだ。
「それにふわりもそれでいいみたいだし」
「それじゃあな」
「ずっとよ」
まさにというのだ。
「毛のことはね」
「このままか」
「ええ、あんたもいいっていうしね」
「そうだよ」
洋介は率直に答えた。
「俺だって今のふわりのカットがいいよ」
「そうでしょ、だからね」
「皆それでいいからか」
「このままだな」
「そうしていくわ」
「ワンワン」
ふわりはここでそれでいいからという風に鳴いた、しかも二人に顔を向けて。それで二人も笑顔でそれならとなったのだった。
昔のカット 完
2022・11・24
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