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熱があるなら帰れ

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第一章

       熱があるなら帰れ
 連絡を受けてだ、八条インテリジェンスシステム愛知支社営業課長大島公毅は電話をかけてきた部下の清水宗明に言った。黒髪をオールバックにしていて長方形の顔と細く小さい目と薄い引き締まった唇と薄い眉を持ち背は一七三程で痩せている、肌は結構黒い。
「休むんだ」
「ですが今は」
「いいから休むんだ」
 打ち切る様な声で告げた。
「それなら」
「いいですか」
「もう一度聞く、体温は測ったな」
「三十八度五分です」
「完全に風邪だな」
 大島はその体温を聞いて断言した。
「今日は病院に行ってだ」
「そうしてですか」
「お薬を貰って絶対安静でだ」
「寝ていることですか」
「ご家族はいるな」
 彼が実家暮らしであることからの問いだ。
「そうだな」
「はい、親父はもう出勤しましたが」
 清水はそれでもと答えた、癖のあるあちこちはねた黒髪を短くしていてホームベースを細くした様な顔できりっとした顔立ちである、背は一七〇位で痩せている。今は明らかに風邪でノックアウトされた感じだ。
「お袋がいます」
「じゃあ暖かいものでも作ってもらってな」
「あったまってですか」
「一日寝ているんだ」
 そうすべきというのだ。
「いいな」
「ですが今課忙しいですが」
「気にするな」
 これまた打ち切る様な返事だった。
「そうした時はだ」
「休むことですか」
「元気になったらまた働いてくれ」
 是非にと言うのだった。
「いいな」
「じゃあ今は」
「絶対安静だ、いいな」
「わかりました」
 清水もそれならと頷いた、こうしてだった。 
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