展覧会の絵
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第十二話 ジェーン=グレンの処刑その七
「だからそれはしないわ」
「賢明な判断だね。それならね」
「ええ。本当に後は任せて」
雪子の言葉には有無を言わせないものがあった。
「さもないとお薬が手に入らないからね」
「藤会と違ってお薬の種類は少ないよ」
「覚醒剤とあとはコカインとかそんなの?」
「二種類位しかないよ」
「まあ覚醒剤が手に入るのならいいわ」
「雪子は覚醒剤が好きだね」
「あれが一番合うのよ」
濁った、明らかに普通の世界にはいない輩の目で述べたのだった。
「私にとってはね」
「僕はモルヒネかな。けれどね」
「お兄ちゃん覚醒剤も好きよね」
「好きだよ」
実際にそうだと答える一郎だった。
「あれもね」
「じゃあ覚醒剤でいいわね」
「叔父様も好きだしね」
「それにね。あれを打つとね」
どうかとだ。雪子は今度は悪魔の、邪悪さに満ちた笑みで言った。
「セックスとか。全然違うじゃない」
「あの娘に打ってもそうだね」
「薬を使ったセックスを知ればもう離れられないわ」
「魔法の薬だね。本当に」
「そうよ。ところでね」
ここでだ。雪子は話題を変えてきた。
「叔父様も兄さんも今楽しんでるけれど」
「あの娘達かな」
「ええ。そろそろ飽きてきてない?」
悪魔の笑みはそのままだった。
「どうかしら。そこんところ」
「言われてみればそうかな」
一郎は理知的な笑みで答える。しかしそれも仮面だ。
「どうもね。最近ね」
「だったら。そろそろかしら」
「壊すのかな」
「ええ、もうDVDはあるし」
「僕が遊んでいるあの娘のものはあるね」
「あの娘は彼のところにそのDVDを送るわ」
悪魔の笑みに。邪悪な企みが宿っていた。
「それでね。もう一人の方は」
「DVDは撮ってるよね」
「撮ってるけれど同じことをするのはどうかしら」
「それでは面白くないっていうんだね」
「ええ。また別の方法をね」
それを考えているというのだ。今の雪子は。
悪魔の、他ならぬその本性をさらけ出した笑みでだ。言っていくのだった。
「考えてるわ」
「具体的にはどうするのかな」
「そうね。見せるのはいいけれど」
「問題はその見せ方っていうんだね」
「じかに見せるとかどうかしら」
「いいと思うよ」
一郎の顔には悪魔は見えなかった。だが、だった。
その目の奥にそれを見せてだ。そうして自分の妹であり愛人である彼女に答えたのである。
「それもね。面白いね」
「そうね。それじゃあね」
「そちらも仕掛けるんだね」
「あっちの方は彼氏の方は好みじゃないから」
「彼には何もしないんだ」
「いえ、成り行き次第ね」
悪魔の笑みのままで答える雪子だった。
「それはね」
「やれやれ。雪子は相変わらず好きだね」
「普通にしても面白くないじゃない」
悪魔の邪悪さがさらに出ていた。
「幼馴染みとか親友とか純愛とかね」
「そういうものはなんだ」
「反吐が出るのよ」
憎悪や嫉妬、人の持つ醜い感情もそこに出ていた。
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