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展覧会の絵

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第十一話 ノヴォデヴィチ女子修道院のソフィアその三

 テレビでも朝から取り上げられていた。十字と神父はそのニュースを朝食を摂りつつ見ていた。そのうえで神父は自分の向かいに座る十字にこう言った。
「御疲れ様でした」
「二十人だったかな」
「それだけの悪の裁きを代行されたのですね」
「そうしたよ」
 十字は淡々とだ。神父に答えた。
「そうしました」
「そうですね。そうされましたね」
「全員その悪行に相応しい報いを与えたよ」
「それは何よりです。それでなのですが」
「勿論ただ裁きを代行しただけではないよ」
「麻薬密売や様々な悪事の証拠も」
「警察に送ったよ」
 そうしたというのだ。
「匿名でね」
「では。藤会はこれで終わりですね」
「完全にね。悪の源が一つ消えたよ」
 そうなったとだ。十字は述べた。
「けれどね」
「それでもですね」
「もう一つの悪はね」
「まだこれからですね」
「そう、これからだよ」
 まだだ。手をつけていないというのだ。
「もう少し先だね」
「では今のところはやはり」
「うん、幹は倒したから枝を一本一本ね」
「そうしていかれますね」
「それぞれの枝の距離も考えて」
 そのうえでだというのだ。
「消していこう」
「既にそれぞれの枝の場所や構成員については調べてあります」
「有り難う。それではね」
「御役に立てて下さい」
「そうさせてもらうよ。是非共ね」
「では今宵も」
「今日は塾があるけれど」
 だがそれでもだというのだ。
「塾の帰りにね」
「働かれますか」
「そうするよ。そして一つの悪の木を全て消し去ってから」
「そしてそのうえで」
「あの悪を消し去るよ」
 そうするというのだった。それが十字の考えだった。
「もっとも。どうも今消していっている悪の方が大掛かりだね」
「マフィアだからですね」
「うん。マフィアはやはり大きいね」
 組織として大きい、しかしだというのだった。
「けれどこれまでああした組織は幾つも消し去ってきているから」
「慣れておられますね」
「以前に経験しているかどうかは重要な要素だよ」
 それは十字とて同じだった。人は経験から学ぶ生物だからである。それ故にだ。十字もまた経験を大事なものとしてだ。今神父に話すのだった。
「ただ。その経験に溺れることや慢心してはならない」
「それが失敗になるからですね」
「その通り。そうなる位なら経験しない方がいい」
「経験に馴れないことですね」
「慣れると馴れるは違うよ」
 日本語としての発音は同じだ。しかしだというのだ。
「そこにある意味はね」
「また別のものだからこそ」
「僕は馴れない」
 十字は一言で述べた。
「絶対にね」
「経験を積まれるだけですね」
「そうだよ。そしてその経験を活かす」
「枢機卿のお務めにも」
「ではね」
 それではというのだ。 
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