千人切りと一人だけ
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第二章
「結婚する前からね」
「そうなの」
「ただ主人と毎晩ね。高校生の時から交際して」
「それでなの」
「肌を重ねない日はないわ」
「私もだけれど」
異性とは、というのだ。
「相手の人は」
「違うの」
「千人よ」
関係を持った人の数はというのだ。
「そしてかなりの数ね」
「楽しんできたのね」
「そうよ、けれ貴女は」
「一人でね」
それでというのだ。
「ずっとよ」
「そうなのね、どうやら千人でも一人でもね」
「そうした経験を重ねるとね」
「違って来るのね、わかったわ」
千晶はカウンターから話した。
「そのことがね、けれどね」
「けれど?」
「私がしてきたことは後悔していないわ」
「そうなのね」
「そうしたいと思って」
そしてというのだ。
「してきたし」
「だからなのね」
「これからもそうしていくわ」
「沢山の人となのね」
「楽しんでいくわ」
ここでコーヒーを注文した、そしてだった。
そのコーヒーを一口飲んでだ、さらに話した。
「千人の次はね」
「二千人かしら」
「そうしたいわ、けれど貴女は」
「これからも主人一筋よ」
店長はにこりと艶やかに笑って答えた。
「私はね」
「そうしてなのね」
「これからもね」
「艶やかになっていくのね」
「そうしていくわ」
「同じね」
千晶は自然にこの言葉を出した。
「全く違う様で」
「私達はそうね」
「そうね、お互いそうしていきましょう」
「それぞれね」
「ええ、それにしてもいいコーヒーね」
千晶は今度はコーヒーの感想を述べた。
「本当に」
「そう言ってくれるの」
「だからまた来ていいかしら」
「何時でもね」
「ではね」
「ええ、またこうしたお話をしましょう」
「そうしましょう」
二人で笑顔で話した、千晶も店長もそうしていった。ここで店長は宮城穂香と名乗った。
二人は交流をはじめたが二人共日増しに艶やかになっていった、男狂いと言われる千晶も夫一筋の店長もだった。二人を知る者はそれがどうしてかも知っていて思った。方法は違えど二人の歩んでいる道は同じであると。
千人切りと一人だけ 完
2022・10・23
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