ハンドル持たせるな
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第二章
いつもの彼女らしく穏やかな物腰で頷いた、それでだった。
息子夫婦で交代して運転しながら東京まで帰った、そして自宅に帰ってだった。
夫は妻にだ、深刻な顔で話した。
「実はお袋ハンドル握ると人が変わるんだ」
「えっ、そうなの」
「そうなんだ、本当に人が変わって」
妻に自宅の中で困った顔になって話した。
「物凄いんだ」
「そんなになの」
「いつも百二十キロは出して」
まずは速度の話をした。
「カーブとかブレーキも物凄くて」
「運転が乱暴なの」
「人相も口調も変わってなんだよ」
そうしてというのだ。
「物凄いから」
「それでなの」
「うん、それでなんだ」
「あなたもお義父さんもなのね」
「お袋には運転させないんだ」
そうしているというのだ。
「本当に別人になるから」
「そうした人いるって聞いたけれど」
「お袋がだよ」
「まさになのね」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
「今回も運転させなかったし」
「これからもなの?」
「いいかい?絶対にだよ」
「お義母さんにはなのね」
「運転はしてもらわない」
「絶対にだよ」
「そこまで言うならね」
妻も頷いた、こうしてだった。
彼女も義母には運転させない様にした、だがある日彼女は気になって夫にこんなことを言った。
「その目で見たいけれど」
「後悔するよ」
「そこまで凄いのね」
「うん、だから最初から見ないことだよ」
夫はこう返した、それで彼女は結局義母が運転出来る間は彼女も運転はしてもらわない様にした。そうして最初から難儀は避けたのだった。
ハンドル持たせるな 完
2022・10・22
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