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仮面ライダーAP

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番外編 タイプγと始祖の怪人 最終話

 そして――アマゾンの密林に隠された、研究施設では。

「う、ぐぅうっ……!」

 背後から触手による奇襲を受けた清音が、その白い首をきつく締め上げられていた。
 彼女の身体はその力でふわりと浮き上がり、鉄血のクールビューティーも苦悶の表情を浮かべている。

 気配を消して物陰から隙を窺っていた最後のタイプγは、知性の欠片も感じられない鳴き声を発しながら、清音の首を触手で締め続けている。さらに他の触手を伸ばす彼は、その先端部を迷彩服の内側(・・)へと滑り込ませていた。

「……っ!? ん、ふぅうっ……!」

 迷彩服の内側に入り込んだタイプγの触手は、清音の白い柔肌を隅々まで弄ろうとしている。まるで首筋から足の指先に至るまで、余すところなく舐め回すかのように。

(こ、このタイプγは……!)

 知性は失われても、被験者が本来有していた「本能」は健在なのだろう。どうやら素体となった人間は狡猾である上に、かなりの好色漢でもあったようだ。
 肌全体を這い回るような厭らしい触手の動きに、素体の「性格」が表れている。

「ひっ……!?」

 その触手の先端部はむっちりとした白い巨尻と、無防備なうなじを厭らしく撫で回した後。そこから二手に分かれ――豊かな二つの乳房に絡み付き、その()に向かおうとしていた。



「はぁあッ!」

 それ以上、許すわけには行かない。清音はその一心で懐からナイフを引き抜き、迷彩服の外に露出している触手にその刃を突き立てた。

「く、うっ……!」

 鮮血が噴き上がると同時にタイプγが悲鳴を上げ、全ての触手が迷彩服の中から逃げ出して行く。
 迷彩服の内側に残っている粘液の感覚に眉を顰めながらも、触手から解放された清音は息を荒げ、タイプγと対峙していた。迷彩服の下に隠されていたGカップのブラジャーも、白い巨尻に深く食い込んだTバックのパンティも、タイプγの体液でしとどに濡れてしまっている。

「はぁ、はぁっ、んはぁっ……!」

 思わぬ形で訪れた貞操の危機を切り抜け、自動拳銃をホルスターから引き抜く清音。その扇情的な吐息から漂う甘い女の芳香に、タイプγは再び奇声を発していた。
 まさか異形の怪人にまで「女の尊厳」を脅かされるとは思わなかったこともあり、その頬には焦燥の汗が伝っている。だが、今の反撃で得られたものもあった。

(強力な生体装甲を有しているはずのフィロキセラタイプに、私のナイフが通った……! やはり、そういうことでしたか……!)

 2009年に織田大道が変身していたタイプαの時点で、フィロキセラタイプのボディは軽火器を受け付けないほどの防御能力を獲得していた。にも拘らず、その発展系であるはずのタイプγには、生身の人間が振るった刃物が通用したのである。

 それはつまりタイプγが知性面のみならず、生体装甲の防御力までも犠牲にしている「欠陥品」であることを意味していた。その事実に到達した清音は、妖しく蠢く触手を前に挑発的な笑みを溢す。

「……どうやら、『本物』になるには予算が足りなかったようですね?」

 その皮肉を口にしても、タイプγの知性では理解出来ないだろう。だが、それで構わない。

 すでに「準備」は、整っているのだから。

「来なさい――G-verⅥ」

 彼女がそう呟いた瞬間。
 研究室の外壁を突き破り、この血の海に飛び込んで来た彼女のマシンGチェイサーが、その質量にモノを言わせた追突でタイプγを撥ね飛ばしてしまう。

 清音の眼前を横切るように突っ込んで来たその車体は、滑るように主人の傍らへと停車する。車体の後部に搭載されている大型コンテナが開かれ、彼女の「鎧」が出て来たのはその直後だった。

 彼女のGチェイサーには主人の危機に反応し、自動運転で駆け付けて来る機能が設けられているのだ。
 その機能に生命と貞操を救われた清音は、タイプγが追突の衝撃でひっくり返っている間に、コンテナに積まれていた装甲服を手慣れた動きで装着して行く。

 そして、タイプγがようやく起き上がった頃には――すでに、「水見鳥清音」の姿はなく。そこには、「仮面ライダーG-verⅥ」の荘厳な鎧姿が佇んでいた。

 薄暗い研究室内に黄色の双眸が輝き、その光が赤と白を基調とするマッシブな装甲を照らしている。右肩に記載されている「G-6」のナンバーも、その煌めきに照らし出されていた。

 彼女の両腕にある2丁のGX-05「ケルベロスランチャー」は、すでにその砲口をタイプγへと向けている。
 「装着前」である優雅な爆乳美女の姿からは想像も付かない、その荘厳な「装着後」の外観と迫力に、タイプγは弱々しい奇声を漏らしながら逃げ出そうとしていた。

「……知性が無いというのは、実に致命的ですね。相手の力量すら、満足に測れないのですから」

 仮面の下でそう呟く清音の声色には、憐れみの色すら含まれている。
 その直後に――彼女の両手にあるケルベロスランチャーの弾頭と、Gチェイサーの両脇に搭載された8門のミサイルが、同時に撃ち放たれた。

 ――ノバシェードに起きた「異変」の元凶を知った今、もうこの施設に用はない。故にここからは「潜入」ではなく、「戦闘」が主目的となる。

 そうなればもはや、装甲が脆いタイプγに生き延びる道はないのだ。織田大道のタイプαや、明智天峯達のタイプβに匹敵する防御力があれば、G-verⅥの一斉射撃にも耐えられたのだろう。

 だが、斉藤空幻をはじめとするこの施設の研究者達は、その生体装甲の重要性を軽視した。「本物」になりたいからと成果にこだわるあまり、現実を見ていなかった。それがどれほど愚かな選択であったかなど、知る由もなく。

 彼らは最後まで、「本物」になれぬまま終わってしまったのである。無防備な背中に集中砲火を浴びせられ、跡形もなく爆ぜた最後のタイプγのように――。

 ◆

 G-verⅥの猛攻撃によって、タイプγもろとも研究施設は崩壊。清音がそこから脱出した頃には、すでに夜も明けて快晴の空が広がっていた。
 清々しい大自然の空の下で、一つの事件を解決した余韻に浸りたい気持ちはある。だが、今は立ち止まって良い時ではない。

(……「始祖怪人」。まさか、そんな連中が存在していたなんて……)

 旧シェードのNo.0こと羽柴柳司郎と同じく、最初期に開発されたという改造人間の生き残り。その老兵達の暗躍を知った今、足を止めることなど出来るはずもない。

 仮面ライダーAPですら一度は敗北を喫したというNo.0。彼にも匹敵し得る強敵に、果たして自分達は勝てるのか。
 ノバシェードの構成員達のような「失敗作」とは違う、「本物」の改造人間に勝てるのか。



「それでも、私達がやらねばならないのです。今は私達が、『仮面ライダー』なのですから」

 その不安を振り切るように――清音は崩壊した施設跡を一瞥した後。愛車に颯爽と跨って、走り出して行く。

 嵐のように戦って、風のように去る。人類の自由のために戦う、「仮面ライダー」の1人として。

 ◆

 ――俺だ。やはりお前も目覚めていたか。

 ――まさか、仮面ライダーGに倒されたはずの俺達始祖怪人(オリジン)が皆、仮死状態だったとはな。

 ――いや、皆……ではないか。清山も柳司郎も、すでにこの世を去っているのだから。

 ――シェードが滅び、俺達の知る仮面ライダー達も消え去り、全てが終わってしまった今になって……何の意味があると言うのだろうな。

 ――あぁ、分かっている。ノバシェードの連中では、やはりいくら鍛えたところで焼け石に水だ。この時代の仮面ライダー達は装甲服を着ているだけの生身の人間に過ぎんというのに、あの体たらくだからな。

 ――お前に言われるまでもない。俺達始祖怪人の存在意義は、改造人間の威力を世に知らしめることだけだ。清山も柳司郎も、そのために己の命を使い尽くした。俺達もそれに続き、然るべき最期を遂げるまでだ。

 ――この時代の仮面ライダー達に、俺達を止められるとは思えんが……いずれにせよ、それが出来なければ人類は改造人間に平伏するのみとなろう。

 ――最期に試してやろうではないか。令和の世を守る仮面ライダーが、俺達に引導を渡す器となり得るかをな。

 ――場所? あぁ、もう決めてある。

 ――俺達シェードにとって……仮面ライダーにとって、全ての始まりとなった……あの放送局だ。
 
 

 
後書き
 本章もこれにて完結となりました! 最後まで本章を見届けて頂き、誠にありがとうございます!(*´ω`*)



 
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