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怒りの裁き

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第三章

「ですから」
「皆鋸引きにしたか」
「如何に権門の家といえどです」
「元服前の子供でもか」
「外道な振る舞いは許しませぬ、若しそれを許せば」
 その時はというのだ。
「天下に法はありませぬ」
「意味がなくなるな」
「はい、ですから」
 それ故にというのだ。
「あの者達を皆です」
「あの様にしたか」
「他にも訳があります」
 板倉は家康にさらに話した。
「実は」
「それは何じゃ」
「あの者達は自分達より弱い者達虐げておりました」
「それも撮塔を組んでであるな」
「悪事を為すにも一人でせず」
 そうしてというのだ。
「その数や家の権門を頼んでです」
「弱き者達を虐げておったな」
「もの乞いの様な何も出来ぬ者をいたぶりいじめ殺しました」
「実に卑しい行いであるな」
「その卑しさも許せず」
 その為にというのだ。
「あの様にしました」
「皆市中引き回しのうえ鋸引きか」
「晒し首にしました」
「侍への処罰ではないな」
「民でも厳罰中の厳罰ですな」
「最も重いな」
「それだけの罪だと思ったので」 
 それ故にというのだ。
「それがしもです」
「そうしたな」
「それがしは間違っていたでしょうか」
「よい」 
 家康は板倉に微笑んで答えた。
「よい裁きであった」
「そう言って頂きますか」
「あの者達の家の者達は怒っておる者も多いが」
 それでもいうのだ。
「ああした腐れ者達はな」
「それがしの様な裁きがですか」
「妥当じゃ、怒っている者にはわしが言って聞かせる」
 家康自らというのだ。
「そうする」
「そうして頂けますか」
「だからこれからもしかとな」
 板倉に確かな声と顔で話した。
「沙汰を出してもらいたい」
「それでは」
 板倉は家康の言葉に深々と頭を下げた、下手人の親達は家康が約束通り諭して穏やかにさせた。そして板倉はそれからも政に励んだ。後に名奉行として知られる彼の一幕である。


怒りの裁き   完


                  2022・3・18 
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